レバノンへのシリア人避難民、8500人に達するか?
2011年06月18日付 Al-Nahar 紙

■レバノンへのシリア人避難民、8500人に達するか?
■人権団体:レバノン政府には彼らを保護する義務がある

2011年6月18日『アル=ナハール』

【ピエール・アターラー】

トルコへ避難したシリア人の数が話題に上っているのに反し、レバノンへ避難したシリア人については話題が乏しくなり、ほとんど語られなくなっている。しかし、決してレバノンへのシリア人の「退避」が止まったわけではない。3月8日勢力(※アマル運動、ヒズブッラー)が政権を担ったのに伴い、新たな法務相、内相、国防相は、何かと扱いの難しいこの厄介な課題に対処していかなければならないだろう。

この問題を注視しているいくつかの人権団体によれば、レバノンに「亡命」もしくは「避難」したシリア人は、8500人近くにのぼるという。シリア人たちは、レバノンのさまざまな地域に向かい、特にレバノン北部、中でもトリポリ、アッカールには最大の人数が到着し、親戚や友人の家に身を寄せているという。この人数については、人権団体は8000人近いと推定する。彼らの大半は、身の安全を求めて移動してきたのであり、事態の沈静化や正常化を待っている。その一方で、ベイルートには500人近くのシリア人がいると推測され、その一部(ほとんどは左派活動家や文化人)は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に赴き、難民認定を求めたという。これは今般の事態における活動を理由とした逮捕や追跡を恐れてのことである。

この問題に関心を寄せる活動家らの説明によれば、レバノン・シリア間の正式な国境検問所を通って入国したシリア市民に関しては問題はないが、レバノンに政治亡命を求めるシリア市民の扱いに関しては、レバノンにとってこれまでになかったような法的問題が発生するという。また、シリア避難民の中には、レバノンで法的保護を受けられるだろうと未だに信じている者もいるという。というのも、ベイルートはかつて祖国の政治体制による抑圧や迫害を逃れてきた者や「法治国家」レバノンの庇護の下の身の安全を求める者にとって、避難所となった時代があったからである。しかし、こうした全てのことは昔の話であり、単なる思い出となった。少し前に、幾人かのシリアの反体制派が逮捕されるか、あるいは強制失踪の対象となりシリア当局へ引き渡されたことは、記憶に新しい。

■レバノン当局の責任

活動家らは、レバノン新政府及びUNHCRには、事態が安定した後の帰国を円滑なものとするために、亡命希望者だけでなく退避民への医療支援や法的保護を保障する責任があるとしている。またレバノン政府には「拷問禁止条約」第6条を遵守する義務があると指摘し、「レバノン政府が今までのところ、多くの事例において同条約の内容を遵守していないばかりか、レバノンの治安機関は亡命者をシリアに強制送還している」と強調した。さらに、人権活動家の見方によれば、レバノンが国際社会や国連との間で批准した国際条約や国際人道法の規定は、「シリア・レバノン間の条約や両国間の相互治安協定よりも高位の法である」という。これによりレバノン当局は、亡命希望者を保護して将来的に尋問を行うことを回避する必要があり、また国際社会が「人道に反する罪」とみなしている強制送還を行う者を告訴することが求められているという。

さらに活動家らの指摘によれば、トルコへのシリア人避難民とレバノンへのシリア人避難民を比較した場合、トルコはEUへの加盟を希望していることから、避難所を求めてやってくる者たちに対して国境を封鎖することはあり得ないという。それどころかトルコでは、治安機関が避難民を厳しく監視する際においても、欧州の基準が遵守されているという。一方で、レバノンの状況は悲劇的である。これは中央政府が脆弱であること、武装民兵及び各政党の治安機関が各地に展開していること等が原因であり、レバノンのシリア人亡命者約14人が行方不明となっている。

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