Ali Bulaçコラム:新クルド問題
2011年06月20日付 Zaman 紙

クルド問題はずいぶん前から「新」段階に入っている。これを「新クルド問題」ということができるだろう。

「新」であるものを「旧」と区別するのは、問題に対する社会的な支援基盤の変化と、言葉や政治的用語ではっきり表明された新たな要求である。

新憲法策定の興奮が巻き起こっているが、一般的にトルコ社会の中にある憲法をつくる力は、「新クルド問題」の行方を決定できるだけの力をもっているようにみられる。

もし、社会的な交渉と妥協に基づく新しい市民的な憲法の作成が成功すれば、この問題は解決される。しかし、各グループが最大主義の主張をかかげて交渉のテーブルに座れば、プロセスはとん挫する。いうまでもなく、これらの諸要求、希望やその目的が、誠意をもって明確に表明されるのには意味がある。なぜなら、交渉の間、各グループはそれぞれをより良く理解、認識、共感し、合意にいたるよう努力するからだ。 

クルド問題は憲法論議の重要議題項目のひとつである。それと同様に重要なのが、宗教を真剣に受け入れた人びとの宗教的アイデンティティと生活が、社会的、公共的なものとしてどのように表明され、自由に生きることができるのかということである。議論のプロセスにおいて、誰が発言するのか、発言者の有する代表の合法性とその能力がいかなるものであるかも重要である。クルド問題については、次のような観点が問題となろう。

1)トルコの7500万人全体が、皆を疲弊させる「クルド問題」の存在を認めている。

2)トルコ民族主義者といまだに官僚的な中央支配の中核にいる小集団を除いて、トルコ社会の大多数は、クルド人が「市民あるいは民族」として一定程度の基本権利と自由を有しており、20世紀にはクルド人が強制的な同化の対象にされたこと、彼らの権利と自由が、確かな法的枠組みの中に組み込まれた場合、問題は大部分で解決されうると考えている。

3)クルド人のほぼ全員は、少なくとも次の3つの要求への対応が、問題を解決するということに関しては合意している。3つとは「エスニックアイデンティティの表明を阻害する法律上の障害を取り除くこと、母語による教育、地域における社会経済的な豊かさの向上」である。

4)しかし、現在、この問題の、「ポジティブな政治」の面を代表しているBDP(平和民主党)と「ネガティブな政治」を続けるPKK(クルディスタン労働者党)には、これらを超えた要求があるとみられている。これは最近、明確に叫ばれはじまて「民主的自治区」プロジェクトの認知と承認である。新憲法の準備において、件のプロジェクトへの基礎作りを意図した以下の二つの要求が持ちだされてくれば、議論のプロセスを難しくするどころか、完全に頓挫させる可能性ももっている。

a)トルコ共和国の支配的なアイデンティティを、「トルコ人エスニックグループ」と「クルド人エスニックグループ」として再定義すること。この要求は、共和国の主役をトルコ人とクルド人という二つにするものである。

これは、私たちの目前に二つの議論を提示する。ひとつは、エスニックとしてはトルコ人でないチェルケズ人、グルジア人、ボスニア人、アラブ人、アルバニア人などの民族は、相変わらずトルコ人として定義され続ける、という点。
ふたつ目は、エスニックに基づく現在のトルコ共和国において、今日まで起きた諸問題の原因はトルコ人国家というエスニックアイデンティティであるにもかかわらず、これにクルド人エスニックアイデンティティが加えられるという点である。

簡潔にいえば、クルド民族主義者は自身のエスニックアイデンティティを特別なものとして認定し法制化し、クルド人の多数暮らす地域での自治区の承認のための「例外的行政と法整備」を望んでいるのである。ここで二つの疑問が現れる。二つのエスニックアイデンティティからなる「二つの設立者の統治」自体が新たに紛争を生むことにならないか?東部と南東部でクルド人の他にアラブ人、トルコ人、アッシリア人も暮らしている。一体、彼らは何を思うのか?

b)新しい世代のBDPの人々はその言葉と表現において、以前とは異なる根本的んな変化をみせている。クルド人を、「市民 halk あるいは民族 kavim」ではなく、「ひとつの国民 bir ulus」として定義し、「一つの政府の下での二つの国民」理論を主張しているのである。もはや、クルド民族主義者は、この問題を、否定と同化の放棄、一つの民族/民衆としてのクルド人が普遍的で当然の権利と自由を獲得するという問題としてはとらえていない。クルド人は「国民化」プロセスに入ったと主張し、クルド国家の力が、行政から法、社会生活上の施策から経済資源の分配にいたる、あらゆる分野に及ぶこと、そして、一般的システムはこの範囲で調整されるべきだと求めている。 

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( 翻訳者:岸田圭司 )
( 記事ID:22980 )