Fikret Bila コラム:自治への「慣らし期間」
2011年07月23日付 Milliyet 紙

民主社会会議(DTK)が宣言した自治に対し、アンカラからは強く、広範な反応はなかった。これはおそらくある戦略によるものであった。つまり、アンカラは穏やかな反応をとることで、人々にその宣言を深刻に受け止めないようにというメッセージを与えようとしたと考えうる。

自治宣言に対しタイイプ・エルドアン首相は、新聞記者らの度重なる質問に答え、「彼らが勝手に騒いでいること」という反応を示した。アブドゥッラー・オジャランは「宣言が重要なのではなく、実現させることが重要なのである」と述べ、自治の要求を実際の行動の中に盛り込むよう、指示を出した。
現在、PKK(クルディスタン労働者党、非合法組織)、および政治分野において共同歩調をとっているBDP(平和民主党)、KCK(クルディスタン社会連合トルコ議会)やDTK(民主社会会議)のような組織は、今後自治の動きを実際の行動の中で強め、制度化するために働きかけるだろうと推測することは難くない。
3つの組織とオジャラン氏にはイムラル島で練り上げ、強行しようとしている計画があることが知られている。この3つの組織がオジャランから距離を置いた政策、あるいは計画を進めていないのはこのためなのだ。イムラル島からもたらされる計画を、トルコの議論すべき重要問題とし、それを実行しようとしている。

■自治への「慣らし期間」

自治宣言もこの枠内で考えるべきである。新憲法制定への取り組みが始まる前に自治宣言がなされたことは、世論に対して心の準備と、自治という概念に慣れさせることが目的だ。実際の状況が法制度に盛り込まれていくための努力は次の段階である。PKKサイドの各方面のスポークスマンたちは「自治」という言葉を口にしなくなるだろう、そして各自治体で行われるあらゆる試みを、このステータス(自治)実現のためのものとして、実行するであろうことに疑いはない。「否定とせん滅」というテーゼに基づく、クルド人アイデンティティの認知、クルド語の自由な使用、クルドの新聞・出版、クルド語保持、クルド語教育の要請のような取り組みが、今回も「自治」のために毎日なされるだろう。つまり国内外の分野において、社会的政治的支援を受けて(これらの取り組みは)強化されていく。南東アナトリアの地方自治体の機能と役割をみてみると、もともと自治が多くの分野で実際に行われているのがわかる。こうしたことがらが多肢にわたりながら広まって行き、現状(自治)認知が主張されていくだろう。

■「北イラク」の段階

DTKが宣言した自治が憲法に盛り込まれていないことを指摘する必要はない。しかし、現状がさらに進んでいくことは「北イラクのステータス」に向かうための最初の一歩としてみなされうる。この段階はオジャランのいうテーゼ、すなわち4カ国にクルド人が自分たちで管理する自治的/自由な地域を創設すること、この4つの地域が4カ国の代表からなる最高議会によって統治されること、そして最終的には統一されるというテーゼと一致している。

■オジャランによるコントロール

トルコがこうしたプロセスの真っただ中にいるなか、国はイムラルでオジャランを通してPKKをコントロールしようと行動していることは公然の秘密である。 オジャランがイムラルに投獄されて以来今日まで、国が(オジャランと)行った面会の目的は、オジャランを上手く利用しながら、PKKの影響力を削ぎ、PKKに山を下りさせ、テロを終結させるためPKKを抑え込んでおくことであると言うことができる。今日の状況を見ると、国はこの目的を達成したとは言い難い。
一連のプロセスの中で、オジャランは弁護士を通じてテロ組織を、そして政治分野では親PKK組織をコントロールしている。つまり、練り上げた計画を遂行している。組織的な形で政治を行っていたのだ。国の指導者らが週に一回議会で会派会合を行っているように、彼は、週に一度弁護士らと面会することで、まさに政治のど真ん中にいたのだ。 オジャランのテーゼという観点から見てみると、BDPやKCK、DTKは、カンディルや都市部を利用するという点で、深刻な障害に直面したとは言えない。

■アンカラの戦術

PKKはテロを、その他の組織は政治を続けている。PKKサイドの狙いと手段ははっきりとした形で目にすることができる。しかし、アンカラの戦術はどのようなものであるのか、この質問への明確な回答は示されていない アンカラは、「迷走」ともいえるほど態度を変えてきた。選挙前に醸し出された雰囲気は、新憲法により問題が解決されることになるといったものであった。現状において、アンカラが今後どのようなアプローチをとるかということへの手がかりは、新憲法への取り組みによって明らかになると理解されている。
イムラル島、カンディル、BDP,DTKサイドの主張に対し、アンカラが「解決策」として何を考えているのかは、「新憲法委員会」の中で明らかになるであろう。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:細谷和代 )
( 記事ID:23386 )