少数民族の財産返還へ
2011年08月28日付 Radikal 紙
セラーメト・ハン(左)とゲディクパシャ・アルメニア教会(右)
セラーメト・ハン(左)とゲディクパシャ・アルメニア教会(右)

食料農業畜産省(省庁再編に伴い農業村務省に代わって新設された)に関する法令で、少数民族宗教関係財団に関する調整がなされることがわかった。これにより過去に接収された財産は、財団に返還される。

食料農業畜産省の組織法令で、「少数民族宗教関係財団」に関する驚きの調整がなされた。官報で昨日公布された法令で、宗教財団の不動産の返還に関する重要な調整が行われた。宗教財団への財産返還の範囲は、2008年に公布された法により拡大された。第三者に売却された宗教財団の不動産も、相当する金額が所有者に与えられる。

■ 範囲拡大

相当する金額は財務省が確定する。確定された金額は、国庫かワクフ総局によって支払われる。法令の第17条により、5737号財団法に臨時条項が追加された。宗教財団の1936年文書に明記され、かつ“所有者”が権限を持つ建物が空の状態の不動産、共和国時代に少数民族の財産に関する初めての調整が行われた1936年文書に記載され、かつ国有化や売却のような理由以外で国庫、ワクフ総局、地方自治体や県特別行政体の名で登録されている不動産、公的機関の名で登録されている墓地とチェシュメ(水汲み場)は、申請すれば宗教財団の名で登録される。教団の不動産に関する調整は2008年に行われた。しかしこの調整は制限があった。1936年文書では、土地台帳に登録されている不動産と、宗教財団に寄付されたにも関わらずその所有権を得られなかったため国庫に移されたものも範囲に含まれた。昨日公布された法令では、「国有化、売却、決済以外の理由」で国庫、ワクフ総局、地方自治体と県特別行政体の名で登録されている不動産と墓地、チェシュメも範囲に含まれた。この件では議会の賛成が必要で、12ヶ月以内であれば申請することができる。

■ チュルメン氏「十分ではない」

2008年に行われた調整では、第三者への譲渡に関する調整は全くなされなかった。このことで欧州人権裁判所(AİHM)に対して多くの訴訟が行われたことが明らかにされているが、官報で昨日公布された法令でこの要求に対応したことになった。つまり宗教財団の不動産から第三者に譲渡されたものに関しての解決策が見出された。第三者に譲渡された不動産は取り戻せないが、相当する金額が支払われるのだ。しかしこの取り決めも第三者からの返還を含んでいないため十分ではないとう。共和人民党員のルザー・チュルメン氏は、そもそも根本的な問題は1936年宣言によるものだとし、不動産がこの宣言だけによって制限されるのは欧州人権裁判所によって十分だと見なされていないと話した。チュルメン氏は、1936年文書作成時に皆が財産の有無について聞かれ、それが書かれ、その後で「あなたたちは不動産を得ることはできない」と言われたことを説明し、そもそもこの問題を解決する必要があることを強調した。チュルメン氏は今回行われた調整も不十分であるとし、「これは限界のある解決策である」と述べた。

■ ハテミ氏「何年も待っていた」

法律家のケズバン・ハテミ氏は、今回の決定が何年も教団が待っていた調整であったとし、「なければならない決定であった」との見解を示した。法令に、公的機関・組織の手にある財産も含められたこと、また第三者に、相当する金額を支払うことが定められたことについて述べたハテミ氏は、「国は今まで接収していたが、何も支払っていなかった。今回の決定は、権利の侵害に対する新たな取り決めである。欧州人権裁判所の決定は必要なくなった」と話した。

■ 敷地、家、工場、ナイトクラブ・・・

アルメニア人、ギリシャ人、アッシリア人の財団に与えられる一部の財産は以下の通りである。
・ ギュルベンクヤン・セラーメト・ハン
・ ゲディクパシャ・アルメニア・プロテスタント学校
・ ゲディクパシャ・アルメニア・プロテスタント教会に属する、家、会館、遊戯場、アパートメント
・ イェディクレ・スルプ・プルグチ・アルメニア病院に属する、家6軒、店、様々な建物
・ イェニキョイ・パナイア教会:サルイェルにある家2軒と敷地1つ、墓地1つ、エジャディにある石造家屋1軒
・ スルプ・ハルトユーン財団に属する不動産
・ バルクル・ギリシャ人病院財団に属する、家157軒、アパートメント21棟、建物3棟、シトロン工場1棟、墓地3つ、釘工場1棟、カジノ2軒、ナイトクラブ1軒
・ イェニキョイ・アヤ・ニコラ教会財団:泉2つ、果樹園1つ、アパートメント1棟、イスティンイェ・ネスリシャフ・スルタンにある敷地1つ
・ 接収された私有不動産(ザリフィ家):ビュユクアダ・アヤ・ニコラ通りにある敷地3つと建物1棟、ベイオール・マンスル通りにある敷地4つ

■ ギリシャ人減少、財産は誰の利益になる?

ゲディクパシャ・アルメニア教会と不動産委員会会長のハルト・シャンル氏

「本当のことはと言うと、これらの財産はアルメニア教団に属する不動産である。私たちの手から奪われた財産のために、特に公正発展党(AKP)政権が敏感になって行動し、一部を返還し始めたが、まだ不十分である。私は政権の取り組みに絶えず感謝しているが、特に非ムスリムに返還される必要がある280近い財産があるのに、今まで12しか返還されていない。しかし現在、アルメニア教団としてより大きな問題がある。教育、パトリックハーネの法人化の承認のような非常に重要な問題がある。これらすべてを、政権の支援で一つ一つ乗り越えられることを信じている。これからの時代、トルコにおける少数民族の問題が、世界と欧州が話題にする問題ではなくなることを望む。」

アポイェヴマティニ新聞社のミハイル・ヴァスィリヤディス社長

「私たちの根本的な問題は人口である。数的にギリシャ人コミュニティの人口は非常に少ない。首相はみんな3人の子どもを生むように言っているが、ギリシャ人コミュニティの平均年齢は高く、人数を増やす機会もない。教団財産の返還はすばらしい一歩だが、一握りしか残っていないギリシャ人コミュニティへの利益にはならず、個人の利益になる。ギリシャ人コミュニティは選挙を行っているが、これを審査できる運営委員会さえ作ることができていない。ギリシャ人コミュニティの宗教財団に関する状況はこれに似ている。ある男はがんと風邪を患っている。私たちは風邪を治療しているが、がんは放置している。」

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:菱山湧人 )
( 記事ID:23782 )