シーラーズ州南西部のファラーシュバンド県デフラム郡デジュガーフ村に、「おやじさん」の名で呼ばれる男性がいる。彼は入浴を嫌い、「体を洗ったりしたら病気になる」と言い張っているという。
IRNA(イラン国営通信)によると、洞穴に暮らす原始人のような顔をした「おやじさん」は、かなりのご高齢とみえ、人々は彼の年齢を100歳近いと考えている。体の色は灰色がかり、分厚い垢が重たそうに体の表面を覆っている。
数年前、村の若者たちが「おやじさん」を川へ連れて行き、彼の体に水をかけようと考えた。そこで「おやじさん」が眠っている間に、軽トラックの荷台に乗せ、川で水浴びさせようとしたのだが、川についたとき、すでに「おやじさん」はトラックの荷台にはいなかった。というのも、彼は到着する前にその身をトラックから投げ出して、体が水に触れないようにしたからだ。「おやじさん」はその場で次のように言ったという。「体を洗ったりしたら、病気になっちゃうじゃないか」。
「おやじさん」は新鮮な食べ物を食べることも、衛生的な水を飲むことも断っている。実際、力ずくできれいな水を飲まそうものなら、拒否反応を示して激しい不快感を表すのだ。
最高においしい料理も、彼の説によれば、死んで腐った動物で、その動物が「ハラール・ミート」(イスラーム法上許された肉)なのか「ハラーム・ミート」(禁じられた肉)なのかは関係がないのだそうだ。
このご老人は若いころに経験した「感情に関わる問題」のために、人々や社会を避けて、隠遁生活を送ることを選んだ。長年にわたり庵を結ぶこともなく、暑い日も寒い日も吹きさらしの中で暮らしている。
デジュガーフ村の若者たちの中には「おやじさん」のために、死んだ鶏や猫、キツネ、ハリネズミ、さらには蛇を持ってくるものもいる。彼はこれらの動物を自分の周りの穴に埋め、数日後それらの穴に火をつけて生焼にし、むさぼり食べる。そして食後、様々な虫が泳ぎ回っている、錆びたブリキ缶に入った腐った水を飲んで、食事を終えるのだという。彼の愛用のコップは、油用の4.5キロ缶で、それを使って毎日5リットル近い水を飲む。
彼の生活用品のなかには、軽トラのシャフトとして使われていた重さ17キロの「杖」が含まれている。また、この驚くべき男性の「湯飲み」として使われているのは、捨てられたヘルメットである。古びた食用油缶には、村の子どもたちが「アーフターベ」を使って、彼のために水を注いでくれる。
〔※訳注:「アーフターベ」とは、トイレに設置された一種の「じょうろ」で、大便後にお尻を水で洗浄する時に使われる〕
ファラーシュバンド県はシーラーズから164キロ南西に下ったところにある。
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( 翻訳者:松村すみれ )
( 記事ID:23825 )