パレスチナ大統領、国連への正式加盟を申請し総会で演説
2011年09月24日付 al-Hayat 紙

■アッバース大統領、圧力に抗し、パレスチナ国家の春を始動

2011年9月24日『アル=ハヤート』

【ニューヨーク:ラーギダ・ダルガーム】

パレスチナのマフムード・アッバース大統領は圧力に抗し、国連総会の壇上からパレスチナ国家の春を始動させた。この演説でアッバース大統領は、1967年ラインを国境とするパレスチナ国家の国連への正式加盟を潘基文事務総長に申請したことを確認した。米国がアッバース大統領に「直接交渉」への復帰を急いで求め、イスラエルがこの申請に対する「遺憾の意」を表明した一方、外交筋によれば中東和平4者委員会(国連・EU・米・露)は、イスラエルとパレスチナが和平交渉に復帰することを望むとする声明への合意に達したという。他方でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は国連総会での演説でユダヤ人国家として[イスラエルを]認めるよう述べつつ、和平は国連決議によって実現するものではないと指摘して、イスラエルは平和を欲していると繰り返した。

アッバース大統領はこの国連総会演説で、演説前に「パレスチナ国大統領およびパレスチナ解放機構執行委員長として、1967年6月4日時点での停戦ラインを国境とし、聖なるエルサレムを首都とするパレスチナの国連への正式加盟の申請を潘基文国連事務総長殿に提出した。事務総長殿には早急に我々の申請を安全保障理事会に提起するよう求め、安保理理事国には我々の正式加盟を採択するよう求める。また、パレスチナ国家をいまだ承認していない国々には、承認を宣言するよう呼びかける」と語った。

国連においても稀なこの歴史的瞬間に、アッバース大統領が申請書類の控えを振りかざすと、各国代表は立ちあがって熱烈な拍手を送った。アッバース大統領は次のように発言した。「世界の国々がこの我々の行動を支持したことは、正義と自由と公正と法と国際的合法性の勝利を意味し、和平の選択を大いに支え、交渉が成功するチャンスを強めるものだ」「パレスチナ国家樹立とその国連への正式加盟をあなた方が助け、支持することは、聖地における平和構築への最大の貢献となる。長く時間を置かないでほしい」。

「私は神の啓示の地、預言者ムハンマドが天に昇った地にしてキリスト生誕の地である聖地パレスチナから、祖国およびディアスポラのパレスチナ人たちの名において、こう語るためにここに来た。『故国喪失の絶え間ない苦しみを63年も味わったのだからもう十分だ。パレスチナ人が自由と独立を勝ち取る時が来た。祖国とディアスポラの数百万人ものパレスチナ難民の苦しみと試練が終わる時が来た。彼らの離散が終わり、権利を手にする時が来たのだ。彼らの中には世界各地に一度ならず亡命を強いられた者がいる』と」。

「アラブ民衆がアラブの春と呼ばれる民主化への願いを表明している今、パレスチナの春、独立の時もまた告げられたのだ」「わが民は他の人間同様、普通の暮らしを享受する権利を行使したいと願っており、我らが偉大な詩人マフムード・ダルウィーシュの次の言葉を信じている。『ここに立ち、ここに座り、ここに残り、ここに留まる。我らの目標は一つ、一つ、一つ。生きて、生き続けること』」。

そして「我々の戦いと権利を支持し、1988年のパレスチナ独立宣言を承認してくれたあらゆる国々、ここ数年のうちにそれぞれの首都におけるパレスチナ代表を承認したり、代表レベルを引き上げたりしてくれた国々」をアッバース大統領は評価し、数日前に「パレスチナ国家は数年前に成立しているべきだった」と発言した国連事務総長を称えた。

アッバース大統領は「パレスチナ人とその諸機関には、独立パレスチナ国家を即時に樹立する完璧な用意がある」と明言し、次のように述べた。「過去数年の間に試みられ、その失敗が証明された方法によって、和平交渉の行き詰まりに対処することはもはや出来ない。危機は見過ごせないほど深く、暴発を遅らせる方法を探るには危険で深刻すぎる」「全てがうまくいっているかのように通常の業務に戻ることは不可能だし、現実的でないし、受け入れられるものでもない。明確な基準が無く、信頼性を欠き、決められたタイムスケジュールも無い交渉に向かうことは無益だ。占領軍が撤退するどころか占領を深化させ、国境線改変の新たな根拠になるような人口学上の変化を我が国に引き起こそうとし続けている時に、交渉には意味がない。」

「これは真実の瞬間であり、わが民は世界から答えを聞くのを待っている。世界はイスラエルに、世界最後の占領を継続することを認めるのか? イスラエルが法や裁定を超越した国家であり続けることを認めるのか? 国連安保理決議や国連総会決議、国際司法裁判所や世界の圧倒的多数の国々の立場を拒否し続けることを、イスラエルに認めるのか?」「我々の地域における危機の本質は極めて単純明快だ。それは、我々を欲張りだと考える者がいる一方で、実際には樹立を急ぐべき足りない国家があるということなのだ」

またアッバース大統領は和平交渉の目標について、次のように説明した。「パレスチナ人の目標は、国際的正統性のある決議に則って、東エルサレムを首都とする独立パレスチナ国家を、1967年の6月戦争でイスラエルが占領した東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区全体とガザ地区に樹立するという、揺るぎない国家的権利の実現であり、また国連決議第194号に則って公正で合意を得られるパレスチナ難民問題の解決へと到達することである。これはアラブ和平イニシアチブでも述べられている目標だ」。「パレスチナ解放機構およびパレスチナ人民は暴力放棄とあらゆる形態のテロ、特に国家テロの拒絶と非難を堅持し、パレスチナ解放機構とイスラエルの間で調印されたあらゆる合意を堅持する」「また国際的正統性のある決議に則って、紛争の恒久的解決に至るために交渉という選択肢を堅持し、信頼できる基準と国際的正統性、入植活動の全面停止に基づいて交渉のテーブルに即座に戻る用意がパレスチナ解放機構にはあることを、ここに宣言する」「我が民はイスラエルの占領と入植活動、人種に基づく分離と人種差別的な分離壁の建設に対する、平和的で大衆的な抵抗を継続する。イスラエルや世界各国の平和連帯活動家の協力を得つつ、国際人権法や国際憲章に合致する抵抗を通じてパレスチナ人民は、夢と勇気と希望、それに銃弾や装甲車やガス弾やブルドーザーの前に立ち塞がる叫び声の他には何も持たざる民衆パワーの、人々に感銘とインスピレーションを与える勇敢なモデルを手に入れるのだ」。
(中略)

パレスチナの正式加盟申請への反応として、スーザン・ライス米国連大使は、「今日の演説を受けて我々は皆、国家樹立への唯一の道は直接交渉であり、近道はないと認めるべきだ」と述べた。

イスラエルではギディ・シャムリン首相府報道官が「この動きを遺憾に思う」「真の和平へ達する唯一の道は交渉であり、一方的な動きではないと信じる」と述べた。またリーベルマン外相はアッバース大統領の演説を「非常に険しい扇動」だと評し、このような口調はパレスチナ自治政府大統領から聞いたことがないと述べた。イスラエルTVの10チャンネルに向けて外相は、アッバースは「不当で厳しい非難をイスラエルに向けた」と語り、その例としてイスラームの聖地での地下発掘作業に対する非難を挙げたり、「パレスチナ人殺人犯を政治囚だとみなし」「ヤーセル・アラファートを持ちだして、演説中で3度も彼の名前に言及した」などと語った。そして、アッバースはアラブ諸国やヨーロッパ諸国には言及したが、米国については意図的に言及しなかったと指摘し、交渉に関してアッバースが言ったことは「言葉のあや」に過ぎず、本音は交渉に反対ということであり、事実上、イスラエルに危害を加え続けると約束したと述べた。

一方、ハマースはアッバースの演説について「感情的で、パレスチナの苦しみを詳細に語る事には成功したが、対処法を明確に示すことには失敗した。国連への加盟申請と占領者との交渉を結びつけたことで、中身が空っぽな措置にしてしまった」と評した。

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( 翻訳者:山本薫 )
( 記事ID:24069 )