左から順に、ハーヴァリー・メッリー銀行頭取、アフマディー・メッリー銀行取締役、ザッラービーイェ・サーマーン銀行頭取、ジャフロミー・サーデラート銀行頭取
我が国の経済史上最大の横領事件をめぐって、新たな事実が明るみに出ているが、そのようななか、昨日イラン銀行界で「辞任と解任の津波」が発生、横領事件に巻き込まれた7行のうち3行を襲った。
本紙記者の報告によると、昨日政府系及び民間銀行3行で、少なくとも幹部4名があるいは辞任し、あるいは解任された(あるいは解任の危機に直面していると言った方がいいかもしれない)。
これら幹部4名のうち、2名はメッリー銀行、1名はサーデラート銀行、もう1名はサーマーン銀行に所属している。
他方、本日から明日にかけて、横領事件に巻き込まれた他の銀行関係者にも解任の波が押し寄せる可能性があり、この「津波」は早晩、中央銀行や経済省に波及することも予想されている。
■ 政府、重い腰を上げる
ここ数週間、政府は相対的に言って沈黙と受け身の姿勢を守ってきたが、昨日ついに、「政府代表委員会」なる委員会を立ち上げることを突如発表し、それを受け同委員会は銀行横領事件で責任を負うべき人物の特定・公表作業を開始した。
なお、同員会の委員として、内務相や経済相、中央銀行総裁の名が発表されたが、これら3名のうち2名〔=経済相と中央銀行総裁〕は現在国内におらず、ワシントンでのIMF及び世界銀行の会議に参加した後、本日帰国する予定となっている。
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■ 辞任と解任
昨日の辞任騒動の第一幕は、メッリー銀行頭取を務めるマフムード・レザー・ハーヴァリー氏の辞任から始まった。
メッリー銀行は今回の横領事件の発生に直接関わっておらず、監督の不備と軽視、及び現行規則の不遵守から、〔他の銀行で〕横領された巨額の資金の大半が同行を通して国外に流出することを許してしまったという責任を負っているにすぎないように思われる。にもかかわらず、横領に巻き込まれた主要な銀行、すなわちサーデラート銀行の側から何らかのアクションが発表される前に、メッリー銀行頭取は身を引くことを発表したのである。
報道によると、横領された金額約2兆8600億トマーン〔約2000億円〕のうち、2兆トマーン〔約1400億円〕がメッリー銀行を通じて国外に流出したとされる。この金額は、イラン最大の銀行〔=メッリー銀行〕の資本金と資産を合わせた金額に等しい。
しかしながら、やはりメッリー銀行は横領事件の主因とは言えない。それゆえ、同行の頭取辞任は、「責任を取ること」そして「不正や法令軽視があった時は〔責任者が〕辞任すること」という文化を〔イランに〕根付かせるための重要な措置だったように思われる。
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また、「政府代表委員会」の発表によれば、セイエド・シャムソッディーン・ホセイニー経済相はメッリー銀行頭取の辞任を受け入れると同時に、同行の取締役を務めるファルザード・アフマディー氏の解任に踏み切ったという。
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■ ジャフロミー・サーデラート銀行頭取は辞任ではなく解任
昨日の夕刻、メッリー銀行頭取の辞任が発表された後になっても、サーデラート銀行の
モハンマド・ジャフロミー頭取は横領事件に対する自らの責任を認めようとせず、沈黙を保っていたが、しかし同氏もついに解任されることとなった。
経済省が発表したところでは、政府代表委員会はモハンマド・ジャフロミー氏をサーデラート銀行頭取の職から解く決定を下したという。政府代表委員会から発表された正式の声明によれば、調査の末、サーデラート銀行支店の業務、特に不正な信用状の開設に対する同行の監督責任は否定できず、それゆえ同行頭取の解任が決定されたとのことだ。
声明は次のように続いている。「当委員会は〔不正な〕信用状を開設した主体として、サーデラート銀行に主な責任があると認定し、信用状の開設に必要な監督を怠ったことから、サーデラート銀行の頭取の適格性には疑問符が付き、結果同氏の解任が決まった」。
とはいえ、サーデラート銀行頭取の解任は正式のものではない。というのも、同行は表面上、民間銀行であり、そのため同行の頭取解任は中央銀行総裁の権限だからである。同総裁は、ドイツを経由してワシントンから、本日帰国するものと思われる。
サーデラート銀行は株主の構成からみる限り、実際には国有銀行であり、民間銀行というのは表面上のことにすぎない。というのも、現在、同行の株式の89%のうち、20%は政府が保有、29%は民間に譲渡する予定であるものの、今のところ政府が保有、40%は「公正の株」で、これは株主を代表して政府に預託されており、〔実質的には〕政府の保有である。それゆえ、同行の頭取を政府が解任する可能性も存在する。
※訳注:「公正の株」とは、アフマディーネジャード政権が低所得者層に分配している、民営化した一部の国営企業の株のこと。
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「辞任・解任の津波」は、この事件に関与した民間銀行の幹部にも及んでいる。政府代表委員会が起こした最初のアクションは、サーマーン銀行頭取の解任の発表だ。とはいえ、同行は民間銀行であることから、同頭取の解任には、マフムード・バフマニー中央銀行総裁がイランに帰国し、同氏が正式に決定することが必要だ。
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サーマーン銀行の現頭取はヴァリー・ザッラービーイェ氏で、彼は電子工学の技師で、ロンドン〔大学〕から財政学で修士号を取得している。同氏はサーマーン銀行の前身である「経済サーマーン・クレジット機構」の創業者の一人で、かつては同行の副頭取・頭取代行を務めていた。
また報道によれば、パールスィヤーン銀行もこの横領事件に巻き込まれた銀行の一つで、今後同行を含むその他の銀行にも、〔幹部人事の〕変革の波が押し寄せる可能性があるという。
■ 経済相、問責の可能性も
こうしたなか、国会は経済相の問責に向けた動きを加速させており、近く国会運営委員会への問責案の提出が行われるとの見方が強まっている。
このことに関し、経済相問責案の起案者の一人は、本案に賛同している議員の数がすでに20名に達していることを明かし、「国有企業の不正な譲渡」と「巨額横領」の二つの事案が問責案の中心となっていると述べた。
キャラジ選出のアズィーズ・アクバリヤーン議員はファールス通信とのインタビューの中で、〔‥‥〕「3兆トマーン横領事件以外にも、議員たちが問題にしているものがある。なかでも、国有企業が、越権的な当局者の勧告・命令によって、法的手続きを逸脱して、様々な人物に譲渡された問題を指摘することができる」と語っている。
※訳注:「越権的な当局者」とは、マシャーイー大統領事務所長のことで、同氏が「フーゼスターン鉄鋼」の株を3兆トマーン横領事件の主犯格の人物に譲渡するよう、経済相らに圧力をかけたと言われている問題を指す。
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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:24108 )