バッグに眼鏡、靴、アクセサリー、スカーフ、その上ポケットに差したペン…。今からたった10年前までは1つか2つのブランドしか選べなかった保守的な女性たちが、今では巨大なファッション産業の注目の的となっている…。
多くの企業に生産過程を再検討させ、デザインの特別チームをつくらせた保守派の経済力は、巨大なファッション産業を生み出しただけではない。ホテル、レストラン、カフェの一方で、もはや世界ナンバーワンの女性ファッション誌Vogueとも肩を並べるファッション雑誌がトルコで創刊された。保守的な女性たちに向けたファッションとライフスタイル情報誌「アーラー(Âlâ)」は、7月に創刊した。現在市場ではこの雑誌の第3号が出回っている。ターゲット層には「保守派のVogue」と呼ばれるアーラー誌は、世界で一切返品の無い唯一の雑誌としても第1号となった。宣伝はせず口コミで評判が広まったこの雑誌は、創刊号が1万部刷られ、第3号は2万部刷られた。来月は4万部刷られる。雑誌の売り上げはトルコの保守的な女性の力と発展の最も具体的な例として、諸大学で調査研究されるだろう。
アーラー誌の編集責任者は、メフメト・ヴォルカン・アタイ氏だ。この雑誌は11人のファッションチームにより作られている。月刊誌アーラーは保守的ファッションの詳細をメインに、ヘルスケアから健康、インテリアまで、幅広い内容を扱っている。街角スナップやインタビュー、招待情報などもあるため、アレムのような富裕層向け雑誌そこのけである。
長年コマーシャル業界で働いていたアタイ氏がこの道に進んだのは、イギリスのムスリムのライフスタイル情報誌であるエレム誌の編集者サラフ・ジョセフ氏と知り合ったことがきっかけである。アタイ氏は、ある写真を通じて始まったジョセフ氏との交流により、トルコに、そしてそれどころか世界にも保守層向けのファッション・ライフスタイル情報誌がない事に気づいた。ジョセフ氏のエレム・マガジンも、中に1,2ページのファッション情報を含むが、主に文化的雑誌だった。
アーラー雑を出す前に1万5千人のベールをかぶった女性たちに会ったと言うアタイ氏は、次のように話した。「我々が発刊に向けておこなった事前調査の結果は、以下のようだった。『なぜ私たちを無視しているの?』長い間このような雑誌が待たれていた。この分野でここ10年間巨大なファッション産業が生まれたが、この産業とそのターゲットの橋渡しとなるような雑誌がない事が分かった。なぜならばこの分野の企業は、他のファッション雑誌では掲載の機会を見つけられないでいたからである。しかし保守的な女性は力をつけてきており、無視され得ないということを我々は示した。」
■ヨーロッパにも進出した
アタイ氏は、多くの注文に応じて毎号印刷部数を増やしており、アーラー誌はヨーロッパからも多くの注文を受けているため、早急にヨーロッパに進出しなければならなくなったと語った。ドイツ、オランダ、デンマーク、フランスの保守的な女性たちにも届いたアーラー誌は、ヨーロッパの読者獲得においても前進し、アラブ諸国からも大きな関心が寄せられているという。9月にはトルコの女性ファッション誌部門で1位に上りつめたそうだ。D&R(書店) の売り上げではVogueを越え、「D&Rの売り上げを基準に考えると、全ての雑誌の中で2位に位置している。1位は『科学と子ども』だ」と語る。アタイ氏は、返品は一切来ておらず、これが大学の研究者たちの注目さえ集めていると言う。アーラー誌が社会的な「事件」として、ファーティフ大学とボアズィチ大学において研究課題となっているという。一方、Vogue誌関係者は、アーラー誌を詳しくはチェックしておらず、このため特に意見はないとし、「これに関してはノーコメントとしたい」と述べた。
■アーラー誌
創刊:2011年7月
ターゲット:18~35歳の保守的な女性たち
宣伝活動:現在まで宣伝活動は一切行っていない。口コミで広まった。
社会的反響:フェイスブックではフォロワーが7万5千人以上に達した。アーラーのページは3千500人が常にコメントをし、積極的にフォローしている。
ターゲット女性の好むブランド:H&M、ケンゾー、ザラ、マーヴィ、マンゴ、ツイスト、ゲス、アルマーニ、リバー・アイランド、ルイ・ヴィトン、 バーバリー、クリスチャン・ルブタン、エルメス、ティファニー、グッチ、アレキサンダー・マックイーン、ドルチェ・ガッバーナ、フルラ、パトリシア・ペ ペ、セントロ、ブルガリ、サルバトーレ・フェラガモ、シャネル、アスプレイ・ロンドン、クリスティアン・ラクロア...
主なスポンサー:カイラ、ウゴザ、デリモド、セマーゼン・ブティック、エヴィタレ
内容:結婚式関連情報、有名ファッション評論家とのインタビュー、おしゃれな着こなしのヒント、街角スナップ、雑誌編集者によるコーディネート、健康情報、働く女性とその服装...
■Vogueにあるものはアーラーにもある
Vogue誌では毎月トルコの女性経営者数人を取り上げ、彼女たちのファッションが読者に紹介されている。アーラー誌にもこれに似たページがある。最新号でとりあげられたのはバンク・アスィアの女性経営者だった。
2つの雑誌の共通点のうちの一つが国外に住む女性写真家を取り上げている事である。
アーラー誌はニューヨークに住むイスラム教徒の写真家ニコール・クイーン氏を、Vogue誌は最新号で国外に住むエダ・アクソイ氏を取り上げた。
■アーラー誌をどう思うか?
スタイリスト、エスラ・カヴルマジュ氏―「女性は美しくありたいもの」
問題はベールを被っているか被っていないかではない。女性はいつでも美しくありたいもの。もはや人々の日常において良い服を着ることや良く見られることはあまり特別なことではなくなってきた。
ファッションデザイナー、エリフ・カヴァクチュ氏―「今や自分たちの雑誌がある」
ベールをかぶった女性たちはいつでも流行のファッションを追っていたし、追い続けている。ベールをかぶった女性たちは自分たちのことを扱わない雑誌を読むのではなく、今や自らのライフスタイルに合った雑誌を読む機会を得たのだ。
ファッションデザイナー、ラビア・ヤルチュン氏―「都市の女性向け」
女性はアーラー誌のおかげで自ずと何かをつかんでいます。これは重要な前進です。女性はもはや都市にいることに気付いており、もっと現代風になりたいのです。
作家スィベル・エラスラン氏―「ベールはファッションではない」
サイン会の日、アーラー誌を買いに5人の若い女の子が来ました。最後に残った雑誌を私も読んでみました。しかしファッション雑誌のあるべき姿ではありませんでした。ベールがファッションになってしまっては、もう本来の意味はないのです。
■Vogue
創刊:17カ国に発行されている。発行国中、唯一のイスラム教徒の国はトルコ。トルコでは2010年3月創刊。
ターゲット:18~30歳の若くてクールで、社交的でアクティブな生活を送る、ブランドとファッションを常にチェックする人たち。
宣伝活動:トルコでの創刊では、「そしてVogueが流行を生んだ」という宣伝文句で異例の宣伝を行った。
社会的反響:フェイスブックのページは70674人が「いいね」を押し、フォローしている。
主なスポンサー:シャネル、ラルフ・ローレン、エスティー・ローダー、ルイ・ヴィトン、ドルチェ・ガッバーナ、ボッテガ・ヴェネタ、ディオール、エトロ、 トッズ、グッチ、エンペリオ・アルマーニ、ミウミウ、ハーヴィー・ニコルス、バーバリー、ホティチ、バティク、ADL、イペキヨル、ロマン。
ターゲット女性のブランド:ジバンシー、ルイ・ヴィトン、アレクサンダー・ワン、ヴェルサーチ、イペキヨル、Max&Co、シャネル、マックスマーラ、クリスチャン・ルブタン、ミウミウ、バーバリー、フルラ、ディオール、カルバン、DKNY、エトロ
内容:国外で撮影されたファッションスナップ、コーディネート、女性経営者たちの好み
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( 翻訳者:南澤沙織 )
( 記事ID:24208 )