社説:アラビア湾におけるアメリカ軍の影響力強化
2011年10月30日付 al-Quds al-Arabi 紙


■社説:アラビア湾におけるアメリカ軍の影響力強化

2011年10月30日『クドゥス・アラビー』

バラク・オバマ米大統領の今年末までのイラクからの全ての米軍撤退という決断は突然なされた。オバマ政権は複数の常設基地にいる2万人の兵士はイラクに残ると計画していた。イラクにおける体制の転換はアメリカに一兆ドル以上のコストと、4000人の死亡者、3万人を超す負傷者という犠牲を強いた。
このような措置を敢えてしたことについて明らかにされている理由は、ヌーリー・アル=マーリキー政権との間で、戦闘行為に関与する場合にあらゆる法的訴追免除の保障に関する交渉に失敗したからである。しかし、本当の理由は、アメリカ政権がイランとの支配権抗争に敗北したことを認め、またイランが勝利を収め、新生イラクにおいてより大きな影響力、浸透力となったと言う結論に達したことに集約される。
アメリカ政権は、イラクの代わりを探し始めた。カタールの空軍基地(アル=ウィディド)、さらには米軍第五艦隊の複数の部隊をさらに受け入れるバハレーンの海軍基地に加えて,米イラク駐留軍に複数の陸軍基地を提供するよう、目下、クウェートやUAEと交渉を行っている。
ニューヨークタイムズ紙によると、イラク撤退後のアラビア湾岸地域に軍事的存在感を増そうとするアメリカの計画は数カ月来の集中的な議論のタネだったという。イラクからの完全撤退発表後は当然急を要すると受けとられた。イラク政府との一部の[米軍]残留についてのアメリカの交渉は文字通り真剣ではなかったということは確かである。
アラビア湾岸地域へのアメリカ軍の集中は、根拠がないわけではない。石油供給の確保や、世界的に周知の戦略的アメリカ政策要素としての石油生産ラインの支配という背景がある。
アラブ湾岸地域には、世界の石油埋蔵量の3分の2があり、1日約2000億バレル産出しており、そのほとんどはホルムズ海峡を通る。
増加するアメリカのイランに対する扇動活動や、地域におけるイランの核の脅威の増加や、地域の平和や安定を考慮に入れると、この地域の米軍の動向を理解することができる。
二週間前、アメリカ政府はイランがアーディル・アル=ジュバイル・サウジアラビア大使をワシントンで暗殺しようとした計画と、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでのイスラエルとサウジアラビアの大使館爆破計画を突如暴露した。イランは計画の全てを否定したわけではなく、(イランが)アメリカの一部の報道の信憑性に疑いを抱いた。
欧米の軍事専門家はアラブ湾岸諸国におけるイランに対する増大する核や伝統的軍事力に対する恐怖を煽ろうとする米国の願望について率直に語っている。その目的は湾岸諸国をイランに対峙させ、これらの恐怖を鎮めるための様々な勢力の安全保障同盟に組み入れることにある。

イラクから撤退する米軍が、アラビア湾岸の6か国に属する複数の軍事基地に留まり続けようとする目的は、イランの核や経済施設の破壊するための対イラン戦争の準備であり、導入として、当該地域のイランとの複数の同盟、とりわけシリアとレバノンのヒズブッラーとガザ地区のイスラーム抵抗運動「ハマース」との同盟を壊そうとすることだというのはもっともらしい。
湾岸諸国はこれらの推測に対し沈黙を守っている。しかし、注目すべきはサウジアラビア当局がアメリカによる上述のイランの暗殺計画暴露を深刻に受け止めたということである。それは、サウジアラビアのイランに対する集中したメディアキャンペーンをみても明らかで、それはおしなべて湾岸諸国、具体的にはサウジアラビアに対するイランの攻撃的な意図に焦点を合わせている。
我々が最も恐れているのは、アメリカ政府が投資や預金として少なくとも概算で2兆ドル以上の湾岸の蓄積した巨額な石油収入を吸い上げるプロセスで、(これは)、武器販売を促進する戦争を引き起こし、現在西側諸国に広がる経済不況により苦境に陥っている西側の軍事産業を蘇らせるものである。

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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:24409 )