法律専門家の大半は「バシュブー元参謀総長は憲法裁判所弾劾法廷で裁かれるべきだ」と述べているが、憲法の「軍事司法権」に関する第145条は、軍人は「職務上の犯罪」については軍事裁判所において裁かれると規定している。軍事裁判所は今日まで「(今回の事件は)職務上の犯罪であり、インターネット覚書事件(注)の裁判は我々の職務範囲に入る」という主張は行っておらず、一般裁判所との見解の不一致に陥ることを避けてきた。これにより、一般裁判所が判決を下し、決定を最高裁判所に託す可能性が生まれている。
[訳者註:2007年4月大統領選に絡み、軍参謀総長がインターネットを通じ警告を発したとされる事件]
イルケル・バシュブー元参謀総長・陸軍大将がどこで裁かれるかは、少なくとも逮捕と同じほど議論の対象だった。法律専門家の大半は憲法第148条によってバシュブー元参謀総長が憲法裁判所弾劾法廷で裁かれるだろうと主張しているが、他の法律専門家グループは対象となっている罪が「職務上の犯罪」でないこと、そしてそのためにバシュブー元参謀総長は通常裁判所で裁かれなければならないと主張している。この点で、バシュブー元参謀総長に対する罪の告発に関し、(それが)「職務上の犯罪」であるかどうかという議論が持ち上がっている。昨日、本紙は重要な地位にいる法律専門家の政治家に(今回の事件は)「職務上の犯罪」であるかどうかを尋ねてみた。彼は今日までそれほど議論されなかった重大な事実を指摘した。以下がその内容である。
■バシュブー自身が望んだ規定が、今、彼自身に関し議論されている
(一昨年の)憲法改正時、参謀総長と軍総司令官はどのように裁かれるかということに関し法律上の穴があることが問題になり、憲法第148条に「参謀総長、陸・海・空軍総司令官また軍警察総司令官は職務に関する犯罪によっては憲法裁判所弾劾法廷で裁かれる」という段落が加えられた。アンカラ政界の舞台裏では、この条項を入れることを求めたのは参謀総長自らだと噂されたものだった。そして、この法律は、今回初めて、当時参謀総長の椅子に座っており、一昨日逮捕されたバシュブー元参謀総長のために議論されることになった。
参謀総長と軍総司令官がどのように裁かれるかという条項は憲法に追加されたが、「憲法裁判所弾劾法廷で裁かれる条件」である「職務上の犯罪」の定義が難点として残った。このため法律専門家の幾人かは、対象となっている犯罪が職務中に起こったという事実から話を進め、バシュブー元参謀総長は元参謀総長として憲法第148条に基づいて憲法裁判所弾劾法廷で裁かれなければならないと主張している。この見解に反対する者たちは「クーデターは職務上の犯罪ではない」とだけ言っている。
論争を避けるために説明を行いたがらないあるベテラン法律専門家の政治家は、「(今回の事件は)職務上の犯罪である」と述べる法律専門家は憲法における他の重要な条項を忘れているという。それは第145条のことである。この条項は「軍事司法権」という概念を定義しており、「軍事裁判は、軍人によって行われた軍事犯罪と、軍人が(他の)軍人に対し、もしくは徴兵制度とその任務に関して犯した犯罪についての裁判を行うことを任務としている。国家安全保障や憲法の規定、その法規の施行に対する犯罪に関連した裁判はどんな場合にせよ一般法廷で行われる」という項目を含んでいる。
つまり、この第145条では、まず対象となるクーデター犯罪は一般法廷で裁かれることが明らかな形で述べられている。さらに軍人は「職務上の犯罪」によっては軍事裁判所で裁かれることが前提とされてはいるが、軍事裁判所は今日まで「この裁判は職務上の犯罪に関係しており、我々の職務範囲に入る」とは述べておらず、軍事-一般裁判所間での見解の不一致は生れていない。そうであるならば、イスタンブルにある特別裁判所が自らの主導によって「自分たちの権限外だ」との決定をしない限り、彼らの前には判決を下すうえで、どんな障害も現れないだろう。
イスタンブルで判決を下された後、ボールが最高裁判所の範囲に移り、最高裁判所が「(バシュブー元参謀総長は)憲法裁判所弾劾法廷で裁かれるべきである」という決定を下すならば、バシュブー元参謀総長の裁判書類は(他の裁判案件から)分割され、新たに(憲法裁判所弾劾法廷で)裁判が行われる決定をすることも可能である。
この記事の原文はこちら
( 翻訳者:安井 悠 )
( 記事ID:25149 )