社説:シリア情勢についてのトルコ高官の発言
2012年02月09日付 al-Quds al-Arabi 紙
■トルコ高官の突然の声明
2012年02月09日『クドゥス・アラビー』
トルコは地理的に隣接し、多くの共通する歴史的な時代があるため、非アラブのイスラーム諸国の中で隣国であるシリアの事件についてより知見がある、時にはシリアの危機に関与していると考えられている。そのため、目下、我々はトルコをこの国(シリア)の危機に関連した殆どの活動や事柄の軸であるとみなしている。
トルコのシリア問題に関わる政策は曖昧なもののように思われる。曖昧なという言い回し以上に突っ込んで、混迷しているという者もいる。ある時は、シリアの体制へのトルコの公式な圧力が、バッシャール・アル=アサド大統領はゴラン高原を解放する代わりに自らの人民を殺戮する臆病者だと非難するくらいにまで高まることがある。ラジャブ・タイイプ・エルドアン首相の発言がその例である。またある時は、[トルコの政策は]「理性的」で静かで、危機に対する政治的[解決の]出口を探す必要性に言及することに特徴付けられることもある。
昨日[8日]トルコのサリーム・アイヌルEU大使は、バッシャール・アル=アサド大統領がシリアの中流階級から依然として支持されていると語った。また、同大使は、反体制派はばらばらで、シリアがさらされているのは、地域の情勢を炎上させる内戦地獄へと落ち込む危険という問題であるとも述べた。同大使は、ロイター通信とのインタビューで、トルコはEUや米国がアル=アサド大統領に権力を手放させるために課している制裁の失敗を懸念している、アル=アサド大統領は、イランとロシアから絶え間ない支援を受けているからである、とも語った。
このトルコ大使の発言が重要なのは、この発言がトルコのアフマド・ダウトオール外相のアメリカ訪問と時期を同じくしてなされたことにある。同外相は、ワシントンへの出発前に、トルコは現下の危機を話し合うために、シリアの友を含めた国際会議の開催を希望すると語った。シリアの中流階級は体制崩壊から生じうる事柄を恐れて、アル=アサド大統領を支援していると言われている。そのような言説は、シリアの反対制派の中にだけでなく、欧米各国政府の間にも多くの疑問を惹起すると予想される。欧米諸国はトルコに対し、シリアへのいかなる軍事的または非軍事的介入においてもその陣頭に立つよう望んでいる。
シリアの反体制派は、アル=アサド大統領への支持があるなどという話では決して喜ばないだろう。たとえ、その支持が人民の限られた部分からの支持だとしてでもある。とりわけ、ヒムスやその他の都市でシリア兵による銃撃で1日に住人数十人が殺害されるというニュースが続いているような時期なので尚更である。また、シリアの反体制派やそれを代表する発言者たちは、領内での内戦勃発や分裂の可能性への警告を低く評価しようと常々望んでいる。
トルコ外交団の中で高い地位を得ているEUのトルコ大使は、「トルコは、シリア国民会議に対するいかなる軍事支援も行なわないだろう。」と強調した。シリア国民会議は反体制派、或いは反体制派の多くを代表するもので、エルドアン政権の後援によってイスタンブルで設立された。おそらく、その発言の原因は、シリアの蜂起の軍事化や、シリアの自由軍と正規軍との間の衝突領域が拡大し、さらにトルコ領域内に拡大するかもしれないことに対するトルコの恐れに帰される。また、ロシアの支援をうけたシリア政権が、トルコ政府やそのクルド人政策に敵対するクルディスタン労働者党(PKK)の軍事部門に対する支援することによって報復することを恐れてもいるのだろう。
一部の者は、トルコ大使の発言はシリアの危機に対して、アメリカやヨーロッパが軍事介入の準備強化していることを隠す単なる煙幕弾であるとの見解を否定しない。その軍事介入においては、トルコの役割は不可欠なものでないとしても大きな役割になる。
シリアの危機はここ数日、重大局面に突入している。そこでは全ての可能性の扉が開かれている。
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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:25501 )