セリム1世が「余の墓に掛けよ」と命じた上衣、4年間倉庫に眠る
2012年02月09日付 Zaman 紙


オスマン朝第9代スルタン、セリム1世の遺言が守られていない。セリム1世が「余が眠る墓の上に掛けよ」と遺言した上衣(カフタン)は、補修の後、2008年に墓廟・博物館総管理局(Türbeler ve Müzeler Genel Müdürlüğü)の倉庫に運ばれた。なぜ、いまだに元の場所に戻されていないのかはわかっていない。

スルタン・セリム1世が「余が眠る墓の上に掛けよ」という遺言を述べたカフタンが、ここ4年間倉庫に置かれたままになっている。このカフタンは以前、スルタンの墓の上に展示されていたが、2006年に修復のため責任者の手で外された。修復後、2008年に墓廟・博物館総管理局の倉庫に運ばれた。このカフタンはそれ以来、倉庫に置かれたままになっている。カフタンが、この長い期間、なぜ元の場所に戻されていないのかもはっきりとはわかっていない。担当者らは、カフタンをよりよく保存できるようにするため、ガラス製ケースの中に収めることを計画中だ。墓廟管理の職員は、このガラスケースには6万トルコリラかかるという。その支払いは文化観光省の予算から出るはずであったが、支払いが遅れているため、このカフタンが元の場所に戻される見通しは立っていない。さらに、カフタンを完全な形で次世代に引き継いでいくためには、霊廟内の湿度の調節も必要である。盗難の可能性があることも責任者を悩ませるもう一つの点である。

イスタンブル霊廟・博物館部局長のハイルッラー・ジェンギズ氏は、スルタン・セリム1世のものであったこのカフタンは、2006年に補修された後、倉庫に運ばれたと話している。このカフタンは6万トルコリラが支払われなかったため元に戻されていないのだという見方に対し、同氏は「お金の問題ではありません。現在、このガラスケースをつくろうと少なくても3名のボランティアが働いています」と答えた。

スルタン・セリム1世のものであったこのカフタンに関しては、一つのエピソードがある。このエピソードは、オスマン朝スルタンが学者たちをいかに重んじていたかを示すものである。スルタン・セリム1世がエジプト遠征から戻ったとき、イブン・ケマルという学者が乗る馬の足元から泥が跳ね、スルタン・セリム1世のカフタンにかかってしまった。イブニ・ケマルは恥じ入ったが、スルタン・セリム1世は次のように言ったという。「ご心配には及びません。学者が乗る馬からならば、その足元から跳ねた泥は私にとって装飾であり、名誉なものです。この泥のついたカフタンを、私が死んだ後、私の眠る墓の上に掛けるよう遺言いたしましょう。」

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( 翻訳者:森 天真 )
( 記事ID:25597 )