Semih İdizコラム もはや単純な「シリア問題」ではない
2012年02月20日付 Milliyet 紙

現在、中東地域に関してトルコが抱える最大の問題はバッシャール・アサド大統領だ。アサド大統領ができるだけ早期に退陣すればトルコは非常に好都合なのだが、逆にアサド氏が大統領にとどまるほどトルコにとってシリア問題は大きく厄介なものとなり、政府の望まない展開に陥ってしまうだろう。
今日の中東は宗教宗派の対立だけでなく、地域の諸国、世界の大国が対立する、混乱した地域である。よくいわれるのは、中東地域が自身の状況のままにしておいてもらえたならば繁栄できただろうに、アメリカとイスラエルの介入によって地獄と化してしまった、という「迷信」だ。
しかし、それはどうだとしても、この地域独自の動態が生み出した問題も無視してはならない。
豊かな石油資源があるにもかかわらず中東を後進地域たらしめ、そして外からの介入を許してしまっている基本的な要因もまた、中東地域の宗教、宗派そして政治権力の衝突なのである。
与党公正発展党が一時、中東地域に働きかけた前向きな計画の観点からみてみると、現状がトルコの望まない方向へいかに進展してしまっているかがより良くわかるだろう。
現在、それぞれレベルや目論見はことなるが、自分たちの生存をかけてここで戦っていると考えている国々、あるいは体制が存在する。

■最大の戦略的目的とは

この「生存競争」とは、競争を行う者がルールを無視し、あらゆる行動を起こしうるものといえる。このことは、核兵器を切望し、テロリズムを政治目的で利用する組織へ支援を行うイランが、国連加盟国であるイスラエルを「地図から消すために戦っている」と発言することからも明らかである。
その一方で、イランは現在、アメリカとイスラエルに対する緊張を高め、シリアにおいて失いかけている戦略的土台を立て直そうと努めている。アラブのメディアからの情報をみる限り、また、多くの地域専門家たちによれば、シリアを失うことはイランのイスラム法支配体制にとって「最大の戦略的打撃」となる。
イスラエルもまた、当然ながら、防衛策をとりつつ、自国に対してこのような考えを持つイランに対しいつでも軍事作戦に出られる準備があることを隠さない。専門家は、イランの核兵器保有を妨害することは、イスラエルにとって「生存競争」における「最大の戦略的目的」であると強調している。
興味深いのは、自国も核保有国であるイスラエルがこの問題に関しては、サウジアラビアやカタールといったスンニ派と同じ立ち位置にあるということだ。公式見解でも明らかにされているように、シーア派を保護するイランが核の力を保持しないことは、これら(スンニ派の)政治体制にとって非常に重要性を持つのである。
他方、前述の各国政府に加え湾岸の他のスンニ派各国はここ10年でアメリカとの安全保障協力関係をひそかに深めている。
トルコが2003年に米軍の領内通過を認めなかったことや、現在もまた「ミサイルをイランに対して使わせない」と発言していることは、湾岸諸国とアメリカの間における対イランの協力関係をより深化させることとなっている。

■ロシアの重要性

今日、トルコとの関係がいかに良好だとはいえ、アメリカ政府が、対イランのいかなる軍事行動においても、トルコ政府より湾岸諸国に信頼を寄せることは確かである。
そして、もうひとつ、ロシアという要素も忘れてはならない。ロシア政府は、国連安全保障委員会や国連総会において、シリア問題で孤立しているにもかかわらず、アサド大統領を支援し続けることを明言している。これも当然ながら、中東地域におけるアメリカとの権力争いの枠組みの中で行われている。

一方で、中国のシリアへの支援についても忘れてはならない。ただし、中東地域の石油を必要とする中国は、ここ数日で行われたいくつかの会見では、こうした状況が変化するかもしれないということを示している。そのため、(シリアや中東諸国をめぐる世界の)この均衡のなかで中国の置かれた状況は若干異なるものである。

■異なる方向へ行っている

これらすべてを総合すると、トルコがシリア情勢でなぜ流れに逆らうように進もうとしているかのように見えるかがより一層理解できるだろう。結局、状況はトルコがコントロールできる範囲外で進展し、そして超大国の介入により、想定外な方向へ展開しているのだ。
我々に直接的な影響を与えるこの進展を理解しようするなら、上述の事項を常に念頭におくことが重要だ。ゆえに、問題はもはや単純な「シリア問題」ではないのだ。

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( 翻訳者:金井佐和子 )
( 記事ID:25618 )