社説:ロシアとシリアにおける道義的責任
2012年03月19日付 al-Quds al-Arabi 紙
■社説:ロシアとシリアにおける道義的責任
2012年03月19日『クドゥス・アラビー』
アラブや世界のメディアは、日々の報道で、シリアで1年以上続く血みどろの状況の進展に関し、殺戮や暴力に焦点をあてている。これらの暴力は、そのほとんどが公式の軍や治安部隊によるものであることから、[その報道の有り様は、]当然、予測されることである。それらの攻撃で数千人の死者と負傷者と難民が発生している。彼らは、とりわけ、国際社会や人道機関による、できる限り早い支援を必要としている。
ここにおいて、ロシア当局によるダマスカスにいる同盟者への国際先十字委員会による日々の停戦宣言の要請を遅滞なく即時に同意するようにとの呼びかけは、たとえその呼びかけが遅ればせなものでも、非常に重要な一歩である。同委員会の要請は、移送や治療がなされるべき、けが人や市民のもとへと行く許可を求めてのことである。
国際的な支援が全く存在しない状況下で、また、病院は混雑しているという状況ではあるが、国際赤十字委員会の要員は全てのけが人や包囲された人たちの下に行き、そして全ての刑務所と収監施設に入らなくてはならない。これは、負傷者らの命を救い、けがを治療するという任務を果たすためである。しかし、けが人の多くは、彼らとその家族が体制派のアッ=シャッビーハ(訳注:アル=アサド政権支持派の暴力集団。)によって報復の殺害行為の危険にさらされている。この件については、複数の報道が伝えたている。
ロシア当局は、常に、シリア政権側に立ってきた。政権に軍事的、安全保障的支援を提供し、安保理でのシリアに対する厳しい非難や経済制裁を妨害してきた。このことから、ロシアは、この停戦宣言や、ヒムスやイドリブのような日々爆撃にさらされている、悲惨な地域に支援を届けたり、けが人の救済を許可するような事柄を受け入れたりするよう、シリアに対し、真剣に圧力をかけることのできる唯一の国である。
我々は、一方の側からだけの停戦を求めているわけではない。我々は、この紛争に関わる全ての当事者、つまりシリア自由軍にも停戦を求めている。シリア自由軍は、自身を対決の現場の勢力として押し入ってきたのであるが、我々は武装・訓練・軍事的能力において彼らと体制側の軍や治安部隊との間に大きな差があることを認めている。
公式の刑務所に収監されている囚人の訪問も、必須の問題である。非公式な数字によると、刑務所には数万人がいるとされる。刑務所訪問は、彼らの収監状況、待遇、彼らが拷問にさらされていないことを確認することを知るために必須である。彼らも人間であり、またシリア人でもあるのだ。彼らの多くは、罪を犯していない無実であるかもしれない。どれほどの不正義がシリアの収監施設や刑務所にあるのだろうか。
ここ数日急浮上した、国連またはアラブ連盟によるコフィー・アナン代表団による政治的解決策に関する話があるとしたら、それは、人道的停戦宣言や、あらゆる出所からの殺戮と暴力の停止に代表されるようなアプローチが成功するための第一歩である。人道的停戦や殺戮の停止は、国際的な代表団が求めている対話のための適切な雰囲気のために最低限必要である。
シリア政権は、自身の立場に対する頑迷さが、間違いなく、完全に真逆の結果をもたらすことに気付かなければならない。それは、政権の利益にも、シリア人民の利益にもならない。シリア人民は、安全と安定というあらゆる幻想を提示されていることが想像される。しかし、血みどろの爆発は、ダマスカスの中心部に到達した。同様に、武装集団は、大使館や省庁、軍事・治安機関の本部がある故に、より安全な地区だったアル=マッザ地区にまで到達した。
我々は、ロシアのこの動きが、速効的な実りをもたらすことを願っている。また、ロシアの動きが、けが人や包囲されている人々を救い、必要な医療・人道的装備品を、それらを必要とする全ての人に届けるために、全当事者から協力を得られるよう願っている。というのも、このような非人道的な状況が、包囲され、砲撃される中で、無実の市民に対し続いているということは、許されざる重罪であるからである。
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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:25855 )