■「アラブの春」は地域の失業問題を解決しなかった
2012年6月1日 金曜日 『アル=ハヤート』
【ラバト:ムハンマド・アッ=シャルキー】
ジュネーブの「国際労働機関(ILO)]の調査は、中東と北アフリカのアラブの若者たちが労働と雇用の分野で「アラブの春」の諸革命の結果からさほど受益していないことを示した。若者たちが2010年末にチュニジアで革命が勃発した際、社会的な動向の担い手だったにもかかわらずである。チュニジアに続き、諸革命はエジプト、リビア、シリア、その他の地域の諸国へと拡大した。経済の後退と資金の不足は、労働市場に悪影響を与えた。そして、若者、特に大卒者の失業者数は増加した。
この調査は、今年(2012年)の世界の労働市場の悪化を扱ったもので、北アフリカの若者の失業率が5%増加して27%になったことを示した。この率は、世界の平均的失業率と推定される12.7%を上回っている。失業率は、アルジェリアでは21.5%、エジプトとチュニジアでは約30%、モロッコでは17%であるが、これはあらゆる年齢、社会・文化・教育水準(に属する者を)含んだ失業率である。本年、世界では若者の失業者が約7500万人増加した。特に、西ヨーロッパ、南米、北アフリカ、中部・東ヨーロッパで若者の失業者が増加した。
同調査は、中東地域の若者10名につき4名が2011年に貧弱な職に従事したと指摘した。このような職では、貧困を防止するのに充分な所得は得られない。一方、若者の40%が、必要な出費を賄うことができない低賃金労働をしている。これにより、若者は家族との同居を余儀なくされている。
地域の諸政府が支出の38%を人件費に支出しているにもかかわらず、若者の失業問題は解消されていない。若者たちは、生産性や国際競争力の低い経済の中で人数が大幅に増加している。中東、北アフリカでは公共部門が雇用の29%を占めて折り、その比率はエジプトでは40%、アルジェリアでは20%、モロッコでは11%となる。
農業部門は昨年(2011年)雇用の33%を占め、サービス部門の50%と並んで地域における最大の労働分野の一つである。しかしながら、これらの諸分野では貧困から脱するために充分な賃金が支払われていない。そして、これによって特に干ばつ期や不作の期間に不正規な活動、生産性の低い副業、都市への移住が促進されている。
公共部門で雇用吸収力が低下している中、民間部門は新規求職者を吸収できないでいる。その原因は、新規雇用の動機付けの欠如、法律の不備、社会的な保護や労働者の権利保護についての国際条約の適用不足により大卒者が民間部門で働きたがらないことなどである。
今般の調査は、中東は人口規模に比べて最低限の労働規模にも達していないことを明らかにした。すなわち、人口あたりの集合者の比率は中東では43.6%なのに対し、世界平均は60.3%である。「アラブの春」以来経済が後退に苦しんでいる地域では、若者の状況は一層悪い模様である。
政府の弱体
地域の諸国の経済の弱体は、失業率上昇の直接的な原因とみなされる。これに加えて、政府の弱体と拙劣な資源配分、市場の需要と教育との不一致が失業率上昇の原因と考えられている。今般の調査は、アラブ地域の生産性は過去20年で22%増加したが、同じ期間に東アジア地域の生産性は356%増加している。そして、この差は今後数年間で拡大すると思われるが、それにより新規雇用創出の機会・賃金の上昇・貧困対策の機会が制約され、(中東諸国の)若年社会において大きな課題となる。中東諸国では、16歳未満の子どもが人口の45%に達している。
中東地域はGDPの11%を保健と年金に支出し、これは世界的に高い比率にもかかわらず、人口の広範な階層が基本的な保健や社会保障サービスから受益していない。すなわち、これら諸国は保健向けにGDPの2.5%しか支出しておらず、この比率は世界最低水準なのである。
高い人口増加率と地方部から都市部への移住は、一連の諸政府の社会的負担の増大の原因となっている。これら諸政府は、新規雇用機会の充足、年金基金の赤字対策、社会的防護をに取り組まなくてはならない。
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( 翻訳者:高岡豊 )
( 記事ID:26579 )