アサド大統領インタビュー(2)―エルドアンは神の啓示でも得たのか?
2012年07月04日付 Cumhuriyet 紙

インタビュー1:撃墜事件はおこるべきではなかった
インタビュー2:エルドアンは神の啓示でも得たのか?
インタビュー3:すべて、想定外
インタビュー4:トルコも痛い目にあう
インタビュー5:「アラブの春」は世俗政権を脅かす

シリアのアサド大統領は、エルドアン首相との関係がどのように悪化したのかを、本紙に語った。

シリアのアサド大統領とのインタビューでは、トルコ軍機撃墜問題に続き、近年までその緊密さで知られていたエルドアン首相に関することが、第二のテーマとなった。「アラブの春」がシリアに波及して以来、エルドアン首相は、シリアのリーダーに距離をおき、彼に対し厳しい批判を向けている。アサド大統領は、本紙に二人の関係がいかに破綻したのかを語った。

―あなたとエルドアン首相は、家族ぐるみで休暇を一緒に過ごすほど親密でした。どうして、こういう状況になったのですか?
―これを理解するのに、問われるべき質問は、「誰がかわったのか。私か、彼か」だ。この地域においておこった変化をみて、あなたにはご理解いただけるだろう。たとえば、ざっと周辺の隣国をみてみてほしい。イランとも、イラクとも、レバノンとも、このプロセスでその関係に変化はない。しかし、逆から見て、トルコとイラン、イラク、レバノン、ヨルダンとの関係の推移をみれば、はっきりわかるでしょう。これらの諸国と、トルコ政府との関係は悪化している。つまり変わったのはエルドアンだ。

■内政干渉だ

何があったか、というなら、エルドアンは我々との関係において、友好や兄弟関係をこえ、真の意味での内政に干渉しはじめた。しかし、シリアは主権を持つ国だ。自分に誇りをもっている国家だ。いかなる形にせよ、外部が我々ことに干渉することは許さない。当初は、内政干渉の志向だけだったが、そのことは、やがて、トルコをシリアのすべての流血テロの味方にしてしてしまった。シリアの人々を殺すテロリストたちに、トルコ側からあらゆる種類の物質的支援が行われた。そののち、トルコにとってもシリアにとっても危険な賭けが行われ、関係は、異なる方向へ向かいはじめた。これらは、両国の政治関係でおきたことだ。

■あらゆる種類の敬意の境界をふむにじった

もちろん、我々の間におきたことの中には、エルドアン首相の個人的な性格が影響した面もある。彼は、演説で、節度も敬意もなく、その先に踏み込んだ。二人の政治家、二人の人間の間にあるべき境界を、はるかに超えたと言わざるをえない。

■2004年には、「改革」には言及しなかった

―エルドアン首相は、最近の発表で、アサド大統領は約束を破ったといいました。彼は何を望み、あなたは何を約束したのですか?
―この言葉だけでも、内政干渉の十分な証拠だ。もしエルドアン首相が、シリアの内政の一部でないなら、私が彼に何かを約束するようなことがあり得るだろうか。彼は、いろいろ質問はしていた。アドバイスもしていた。私も、出来事に関し、自分の考えを伝えていた。いろいろ話しをしていた。我々に、改革のアドバイスをした。しかし、そもそも、彼と話したことを、国民にも伝えていた。その方向で、改革をすすめていた。シリアで事件のおきた3月15日から6日後には、改革の方向で、我々は一歩を踏み出した。いま、エルドアンのところにいって聞くなら、また「改革」というだろう。しかし、もし彼が正直な人間なら、今日いうことを、なぜ2004年にあった時にいうべきだったろう。いま、これだけ改革、改革といっている。しかし、2004年にはなぜ、改革といわなかったのか。ここには、ダブルスタンダード、表と裏の顔がある。

■啓示でも、えたのか

何より、シリアの国民に対し無神経だった。こういう感情がどうして急に大きくなったのか。後になって神の啓示がくだったとでもいうのか。シリア国民を私よりより愛しているとでもいうのか。ここには表と裏の顔がある。エルドアンは、他人のことに首をつっこむ代わりに、自国の内政に目を向けるべきだ。シリアのことはほっておいてもらいたい。「隣国とプロブレム・ゼロ」政策のあとに、何が残っているものがあるなら、それをやり続ければいい。

■自分なりの予定表をもっていた

―「改革」という一般的な表現をされましたが、エルドアン首相が特に求めたことはあったのですか?
―彼とその側近の頭にある計画は、より大きい計画だ。シリアだけを対象するものではない。しかし、私の位置づけも含む計画だ。彼には、彼の予定表がある。テロリストがシリアで自由になり、彼らが圧迫されないこと、逮捕されないこと、彼らから我々が自分を守らないことを望んでいた。これにしたがっていれば、彼は満足しただろう。

■優先順位は、ムスリム同胞団

―「彼ら」とはだれのことですか?イフヴァン(ムスリム同胞団)の活動ですか?
―イフヴァンは、その一部にすぎない。最初にあったときから、シリアのムスリム同胞団の活動にとても興奮していた。彼らに強い関心をもち、トルコ・シリア関係の発展には、彼らの問題(の解決)に示したような強い優先順位を与えなかった。ムスリム同胞団を助け彼らを守るという動機は、エルドアンのとったシリア政策の目的であり、基盤だった。もちろん、我々はこの点で、エルドアンにも、他の誰にも勝手なことはさせない。

■2国間の橋は失われた

―エルドアンとのつながりを断ったのですか?
―そうだ、ほとんどそういえる。なぜなら、この地域で、もはや信頼を失った。これは個人の問題ではない。単にシリアだけでなく、全てのアラブの民衆の目にもそう映っている。

―あなたの考えでは、トルコとシリアの間に危機からの出口はあると思いますか?
―まず、トルコ政府が誤りを正さなくてはいけない。小さな事件を、大きな問題を作り出すために使ってはならない。個人的な計算や目的のかわりに、両国民の利益を考えなくてはいけない。
トルコ国民とシリア国民の見識は、この問題を克服できる。真に問題の出口を探すというなら、エルドアンがしなくてはいけないことは、戦争に反対する名誉ある態度を示した亡くなったパイロットの父親の言葉を聞くことだ。

■本性をあらわした

―あなたの言うとおりだとしますと、エルドアンが変わったということになります。変わったのは本当のところ、何だと思いますか?
―本当のことをいえば、変わったのはエルドアンというよりも、諸条件だ。そしてこの新しい条件が、エルドアンの本性を表にだした。次の例で説明しよう。イスラエルがガザを攻撃した際のエルドアンの態度を、みなが知っている。しかし、同じような攻撃を、2006年にイスラエルがレバノンに対して行ったとき、エルドアンは同じトーンでは反発を示さなかった。実際には、ガザでもレバノンでも、人々は敵であるイスラエルに対し戦っていた。イスラエルは、両方で、ほぼ同数の約1600人を殺した。なぜ、攻撃されたのがハマスだとなるとガザを守り、騒ぎたてるのだ。問題がヒズブッラーのいるレバノンだとなると、黙っているのか?

■宗派主義的動機で行動している

―それはなぜだと思いますか?
―宗派主義的動機で行動しているからだ。このした態度は、常に心の裏にあるものを映し出している。なぜなら、ハマスとヒズブッラーの間には、宗派上の差異がある。たとえば、ダブルスタンダードなやり方でシリア国民のために泣いてみせるが、なぜ、湾岸諸国で殺されている人々のために泣かないのか。あの国々の民主主義の問題になぜ、介入しないのか?

―どの国のことをおっしゃっているのですか?
―カタールを含む、湾岸の一部の国といっていいだろう。

■イスラエルと対立する一方で、イスラエルを守っている

―マーヴィ・マルマラ号の事件では、大声で騒ぎたてること以外には、トルコはなぜその先に一歩をふみださなかったのか。イスラエルをこれだけ責め立てる一方で、なぜ、イスラエルを守るミサイル防衛網を、国内に配備することを許したのか。(ミサイル防衛システムの)レーダーを、アメリカが、自国に対する脅威のために、そこに配備したとでも思っているのですか?これほど遠くから、どの国がアメリカに対しリスクとなりえるというのか。もちろん、これは口実だ。答えは、イスラエルを守るためだ。こうした出来事は、エルドアンの真の顔を浮かび上がらせた。エルドアンが変わったのではない、地域の人々のエルドアンへの見方が変わったのだ。エルドアンと、彼への信頼は、もはやアラブ世界では、むき出しの状態で議論の的だ。

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:26937 )