アサド大統領と、ジュムフリエト紙ウトゥク・チャクルオゼル・アンカラ支局長
インタビュー1:撃墜事件はおこるべきではなかった
インタビュー2:エルドアンは神の啓示でも得たのか?
インタビュー3:すべて、想定外
インタビュー4:トルコも痛い目にあう
インタビュー5:「アラブの春」は世俗政権を脅かす
シリアのアサド大統領は、Cumhuriyet紙アンカラ支局長のウトゥク・チャクルオゼルのインタビューに応じた
シリアのバッシャール・アサド大統領は、武器を搭載していないトルコのRF4偵察機を、シリア空域で、対空高射砲により撃墜したと述べた。墜落するまでは、飛行機がどこの国のものかわからなかったとするアサド大統領は、「この飛行機は、イスラエル機がこれまで3回つかった飛行路を使っていた。レーダーではわからず、また情報も送られてこなかったため、シリア軍が撃ち落とした。トルコ機であることを、あとから知った。100%、「撃ち落とさなければよかった」と思う」と述べた。
トルコ機が、トルコのいうように、国際空域で落とされたのなら「謝罪もやぶさかではない」と述べるアサド大統領は、「トルコ政府が、2国の軍の間の関係を遮断していなかったら、この問題を軍事当局同士で話し合い、これほど大きな問題にすることはなかったろう。しかし、ここ数か月は、緊急時に電話をかけるトルコ側司令官の電話番号さえ、こちらの手にはない」と述べた。
■両国民は、戦争を望まない
―ニ国間には、深刻な緊張があります。これが、実際の交戦、戦争に転じることはありえますか?
―この地域では、すべての地図が塗り替えられるような変化がおこっている。100年前にオスマン帝国が滅びたときに似ている。そのプロセスののち、アラブ人とトルコ人の間に何が達成されたのかを知っている。アフメト・ネヴジェト・セゼル大統領が最初にシリアを訪問した際、100年前の事件の傷が癒されることを共通の目的にした。つまり、問題のあった時期の経験から、我々は多くのこと学んだのだ。教訓をえた。いま、ふたたび、あなた方(トルコ)も、我々(シリア)も、損失を被る時期に再び戻るのだろうか?
シリアで、事態の悪化した15か月の間、多くの分野で、改善を試みてきた。第一に、問題の解決し、テロリストたちと戦うこと。第二に、トルコと築いてきた、そして頂点に達していた関係を守ること。しかし、残念ながら、このプロセスでトルコ政府のやったことは、すべて、この構造を破壊する方向のものだった。そして、築いてきたすべてを壊してしまった。しかし、私の考えでは、両国関係の基礎は2国の国民の間に残っている。
あなたの質問への答えについていうと、以上の基礎にたち、二国の双方が被害をこうむることになる、実戦に進むことは許さない。なぜなら、シリアもトルコも被害をうけるからだ。戦争に傾いているのはトルコ政府だけであり、トルコ国民が戦争は望んでいないと信じている。
■「国際空域で撃ったのなら、謝っていた」
―トルコ軍機の撃墜命令は、あなたか、政府かがでしたのですか?どうやって撃墜したのですか?
―質問は、理性的なものでなくてはならない。2つの選択肢がある。1つは、彼らがいうように、我々がわざと落とした、というもの。2つ目は、シリア空域外にあるものを、謝って撃ち落とした、というもの。もし、彼らがいうように、シリアの空域の外にあるものを誤って落としたのなら、問題にはならならい。それをはっきり言い、トルコに対して公式に謝罪しただろう。トルコ国民もわかってくれただろう。
そうではなく、意図的に狙ったのなら、ここでは次のことが問われなくてはならない。シリアがトルコの飛行機を落として、何の利益があるのか?我々は、トルコやトルコ軍機を敵だとするなら、もっとはっきりいっていた。(シリアの方に)きたので撃った、と。しかし、そのような敵対は考えていない。トルコの人々が10年間にわたって示してくれた友好的な態度を、他の誰からも示されたことはなかった。いま、なぜ、彼らの敵意をかうようなことをするだろうか?
あるいは、第二の仮説として、我々がトルコ軍に対する軍事作戦として、これを落としたというこがありえるだろうか?それもありえない。なぜならトルコ軍は、この危機の間中、シリアに対して何もしていない。
真実は次のとおりだ。この飛行機は、ごく小型の高射砲によって落とされた。この武器は、決して2.5キロより遠くを狙うことはできない。ふつうは飛行機を落とせない。条件はひとつだ。飛行機が、非常に低空を飛んでいれば、だ。トルコ軍機は非常に低空を飛行しており、海岸に近づいたところで撃ち落とされたのだ。
平和時に友好国からきたのなら、撃墜する必要はない。特にトルコから来たのなら、落とすはずもない。しかし、ここには誰もがしっている現実がある。我々は戦闘状態にある。このため、どこのものかわからない飛行機は敵機となる。この状況下では、中央政府の決定はない。なぜなら飛行機は低空飛行をしていたので、当該地域でも、中央政府でも、レーダーで確認できなかった。
■「我々が通知し、連絡した」
我々が飛行機を撃墜したという知らせを受けると同時に、トルコ側が飛行機が行方不明になったと発表した。トルコがこの発表をしたのち、つまり、トルコ機が行方不明になったのがわかったのち、我々も「これはトルコ機だ」と発表した。この間、トルコ高官のうち、こちらに連絡してきたものはいない。こちらから連絡をしたのだ。トルコ政府の決定のせいで、ここのところ、トルコ軍とも連絡はとれていない。このため、トルコ外務省に連絡した。何時間もしてから、こちらに返事をしてきた。救援・捜査ボートを送ったといっていた。もう一回いっておくが、シリアが飛行機を撃墜したときには、それがどこのものか、まったく情報はなかった。
■「イスラエルの使ったルートからきた」
ここには、あまり知られていない、重要な点がある。それは、次のことだ。トルコ機の来た飛行ルートは、イスラエル機が以前に3回、シリア領内に侵入しようとしたときに使ったルートだ。このため、この方向からきた飛行機は、シリア軍からみれば、イスラエル機と理解される。このため、敵機とみなされ、緊急の対応がとられた。
―飛行機が何の警告もなしに砲撃されたことは、国際法に合致すると思われますか?
―中央のレーダーに映っていたなら、警告もされただろう。しかし、高射砲の前に座る軍人の前にはリーダーはなかった。決まりとして、それを妨げる指示がないなら、彼は目の前の飛行機を撃ち落とす。なぜなら、見たのと撃ったの行動の間には、ほんの4,5分の間しかない。砲撃の権限は現場にある。
―しかし、撃たれたのは武器をつんでいない偵察機でした。なのに、なぜ?
―こうした状況で、軍の規則は、飛行機のモデル、任務、武器の有無で規制はされない。高射砲の前の軍人が、飛行機になにが積まれているか、ミサイルがあるのかないのか、偵察なのかどうか、わかるわけはない。わかることは唯一、その飛行機がシリア空域に入り、自分の方にむかって近づいていることだ。そのため、対応した。もし、トルコ軍とシリア軍が交渉できていたら、トルコはシリアに対しこの飛行機のことを事前に知らせ、こちらにそれに応じた対応をしていただろう。トルコ側が説明しなくてはいけない大事なことは、あの飛行機があそこで何をしていたのか、だ。しかし、我々はそれを問うつもりはなく、この問題をもう終わったことを考えたい。
―しかし、空域に入ってきたものをレーダーが見えないということがありえるのでしょうか?
―高度が高かったときには、シリア空域の外だった可能性はある。しかし、シリア空域に入ったところから、見えなくなった。いま話しているのは、陸から20キロというところの話だ。これは飛行機なら1,2分だ。そのあとは見えない。なぜなら、とても低空でとんでいたからだ。実際、2007年にイスラエルが侵入し、建物を爆破、そして同じルートからでていったとき、レーダーではその飛行機はとらえられなかった。もう一つ付け加えるなら、あの地域には、シリア空域外に達するようなミサイルシステムもない。それゆえ、この件についてトルコ側がいっていることは事実と反する。
―トルコはシリア側の無線、およびレーダーにうつっているものについての会話(の記録)がある、といっており、他国からも情報提供を求めていますが?
―たしかにトルコは、周辺国にレーダーおよび無線記録の提供をよびかけた。いいだろう。みなが手元にあるものを公表すればいい。しかし、だれもそんなものを持っていない。どうしてもシリアを追及したい人々には次の問いに答えてもらいたい。トルコ軍機を撃ち落として、シリアに何の得があるのか?我々はいまも、善意で次のように考えている。この飛行機が、意図的に送り込まれたとは考えたくもない。偵察のためではなく、パイロットのミスで入ってきたと思いたい。そしてシリアとしては、これを、たまたま起こってしまった事件と考え、この問題を大きくしないことが必要だと考えている。
■「兄弟が死んだようだ」
―この事件は起こらなければよかった、ということでしょうか?
―もちろんそうだ。敵機でもない限り、こんなことは起こってほしくない。とくに、トルコ機に対しては、100%、「ああ、こんなことはなかったらよかったのに」と思う。こういう状況下で、こういう飛行機が飛んでくれば、自然に敵機だと思われる。軍事を少しでも知っている人ならわかるだろう。戦争状態にある国は、世界中のどこでも、同じ行動をとる。
これは、決して政治的な決定ではない。しかし、残念ながらエルドアン政権は、この事件を使って目先の計算をしようとしている。15か月来、シリア政治について、エルドアン政権はトルコ国民の支援をえられなかった。今、この事件を利用して、政府間の対立を国民間の対立に変えようとしている。これはとても危険なことだ。
―飛行機には宇宙飛行士候補の優秀なパイロットが乗っていた。そうとは知らずに落としたといわれるなら、その遺族に何かおっしゃることはありませんか?
―エルドアンの政策は、シリア国民に涙と血と荒廃以外のなにももたらしていない。しかし、我々はトルコ国民にとって、最善の方向で物事を考えるように努めている。疑いのない事実は、トルコ国民が我々の兄弟だということだ。それゆえ、あなた方の1市民の死は、我々の兄弟の死を意味する。ご家族には心からの哀悼の意を表したい。一人のパイロットの父親の、「我が子が死んだ。しかし、私は戦争は望まない」という言葉に心を打たれた。私も同じ気持ちだ。この名誉ある振る舞いを前に、敬意をこめ頭を下げる。
■連絡する相手がいない
―パイロットの家族やトルコ国民に対し、謝罪することは考えておられますか?
―この二人のパイロットは軍機に乗っていた。シリアとトルコの軍事組織の間に接触があったら、彼らは直接話すこともできただそう。しかし、2つの軍の間の接触は、トルコ側により禁じられた状況だ。
―この事件の最中にそうなったのですか?
―違う。しばらく前からのことだ。トルコの参謀本部長が交代して以来、トルコ政府は、トルコ軍と我々との関係を断ち切らせている。しかし、本来、隣国との間には、常にこの手のことは起こりうる。それゆえ、軍の間には、対話が必要だ。しかし、残念ながら、現在、シリア側にはこうした緊急事態のときに電話をかけることができる、トルコ側指揮官のひとつの電話番号もない。緊急事態に際し協議しようにも、だれにも接触できない。実際、今回も、トルコの軍の事務次官とコンタクトしようとした。しかし、彼は、上からの指示に従い、「外務省とコンタクトを」といってきた。この件については、次のことも言っておこう。我々は事件の当初に、「こちらに来てくれ。委員会を作ろう」と呼びかけた。もしこれにトルコ側が答えていたら、こんな問題にはならなかっただろう。しかし、奇妙なことに、「こちらに来てくれ。ラズキイェ、すなわち飛行機の墜落した場所で会議を開こう」というと、トルコ政府は、それをアンカラでやろうと主張した。で、実現しなかった。その委員会ができていたら、この問題はこれほど大きくならなかっただろう。
■国境への軍を集結させない
―トルコは、軍の交戦規定を変えました。シリアを敵国とみなしています。ミサイルの向きがシリアに向けられました。これに対し、何をなさいますか?
―トルコとの関係において、2度にわたり非常に困難な時期があった。1度目は、50年代の中ごろ。バグダート条約機構の時代に、トルコはシリア国境に軍を集結させ、地雷を敷設した。2度目は、オジャラン危機の時代だ。2回とも、我々はトルコを敵とは考えなかった。シリアは軍を集結させず、応戦もしなかった。今回も、エルドアン政権が何をしても、これまでもトルコ国境に軍を送ることはしなかったし、今後もしない。トルコ国民は我々の友人であり、私たちのことをわかってくれる。トルコ政府がシリアに対し敵対しようと、そんなことは関係ない。もし、トルコ国民までが敵愾心を持ち始めたなら、その時は、はじめて問題があるということになる。
■シリアで私を撃つことはできない
―新しい交戦規定によると、トルコは、国境に近づく軍事的要素を攻撃する、とされています。こうした動きへの対応はどのようなものになりますか?
―どんな国も、自国が侵害されない限り、他国の軍へ、その国の中から攻撃はできない。
■もし、したら?
シリア国内で、我々に向けて行われる軍事作戦は、シリアに対する攻撃とみなす。そうなったときに考ええればいいことです。しかし、そうなることなど、全く望んでいない。
アサド大統領との面会の前日に、国連シリア問題特別使節のコフィー・アンナンを議長に、ジュネーブで行われた会合では、はじめて国連常任安全保障理事国の5国が、シリアに「暫定政権」を設立させる件で、一定の合意に達した。アサド大統領との会見で、アサド大統領に対し、この会議とそこでの決定について聞くことができた。答えは次の通りだ。
―ジュネーブでコフィー・アンアン氏の主導で行われた会議で、「シリアに暫定政権」の決定がだされました。この合意をどう思いますか?
―現時点では、アンナン氏とも、ロシアとも話し合っていない。ロシアのラヴロフ外相とアンナン氏との会談では、非常に明確な表現がされている。第一は、すべての決めるのは、シリア国民であること。第二は、すべての暴力の停止が条件であることだ。
武装したグループの非武装化が求められている。この展開のなかには、血塗られた思惑がある。アンナン氏も、国外の一部の勢力も問題だと言っている。我々が、ずっと言ってきたことはこれと同じことだ。国の外で言われたこと、決められたことは、我々には何の関係もない。我々はシリア国民の声をきくだけだ。
―ジュネーブ合意には、認められない要素がありますか?
―シリアの主権が守られる枠組みのもとでなら、なんでも話しあう。しかし、シリアの主権への侵害はだれであれ許さない。国内問題への干渉は許さない。シリア国民が決めるというする部分には満足している。私がいってきたことも、そもそもそれだ。
―あなたは、レヴロフ・ロシア外相の発表には満足されていますが、クリントン長官は「アサドは去るべし」といっています。どちらの発言に耳を傾けますか?
―私は、一般的にいって、アメリカ政府の発言はまったく本気にはしない。なぜならアメリカは当初より、シリアの敵だ。すべての発言、行動から明らかだ。彼らはテロリストらの側についている。
―ジュネーブ合意には、あなたの退陣を思わせる条項はありますか?
―あの文章のなかで、私に関係するのは次の1文だけだ。それは「シリアの将来はシリアの国民が決める。」その文章さえあれば、我々には十分だ。外からの干渉をあなたは望むのでしょうか?あるいは、シリア国民の主権を尊重するのですか?文章には、外からの干渉は書かれていない。シリア国民の決定を尊重すると強調されている。それで、私には十分だ。
―暫定政権に、「アサド」が含まれるか、含まれないかが議論されています。この議論をどう思いますか?
―外国諸国による、あるいは、地域での言われ方は私には関係ない。アサド派とか、アサド抜きとか。外から無理強いされたものは、決して受け入れない。すべてを決めるのは、国内のダイナミズムだ。もし私が、個人的に自分の座の安泰を考えるなら、アメリカのいうように、その指示通りにやっただろう。石油の利益やドルの亡者になり、自分の原則やシリアの国益を捨てていただろう。さらには、国内にミサイル網の配備だって許していただろう。
■シリアを救うことができるなら、1日たりとも、その座に固執しない
―辞任するとしたら、どういう条件が必要ですか?「この調停プロセスがうまくいくためなら、必要なら自身が辞めることも辞さない。私がその座にいなくてもいい」と、おっしゃることができますか?
―もちろんだ。私がとどまることで、あるいは、辞めることで、国民と国を救うことができるなら、何の固執をしよう。一日だってとどまらない。逆が真なら、つまり国民が私を望まないなら、その時は、そもそも選挙を控えている。国民は、望むなら、私を追い出すことができるのだ。
―死ぬまで、その座にとどまるのですか?
―この地位は、私の関心ではない。私の生き方とは、何かをすること、生み出すことだ。個人的には、ある部屋にいて、周りの人の気分を害するなら、すぐに部屋からでていくような人間だ。この国で、何百万の人が私を望まないなら、もちろん、退く。嫌がられてとどまることなど、ありえない。
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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳者 )
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