シリアが撃墜したトルコ軍機でミサイルの痕跡が発見されなかったために、政府は言い方を変える兆候を示している。
トルコはシリアによるトルコ軍機撃墜問題において最初に発表した「公海上において撃墜された」というシナリオを書き換えている。国防大臣イスメト・ユルマズや、参謀本部スポークスマン・バキ・カヴン准将のような国家諜報機関担当者も軍機がミサイルによって撃墜された明白な証拠をつかめていないと述べた。シリア軍がロシアから提供されたミサイル・システムを改造して「温度センサー」や「レーダー」の他に「追跡メカニズム」(レーザーのような)を開発しなかったのならば、残る可能性はひとつだ。それは軍機がシリア空域上で対空砲によって撃ち落されたということだ。政府は欧米の評論家が強調するように「トルコ軍機撃墜事件は、どこで撃墜されたのかということに関わらず重要な国際法の違反である」という見方を前面に出そうとしている。
参謀司令本部はトルコ軍機が撃墜された日、空軍司令本部の司令官と共にタイイプ・エルドアン首相へ、そしてまた翌日にも首相と共に野党党首へ提出した報告で、軍機が13マイル沖合の公空域内で撃墜されたとした。レーダー記録に基づくこの情報はTRT(国営放送)を通じてトルコ全土へ、外務大臣アフメト・ダウトオールの「トルコ軍機はシリアから13マイル沖合の公空域内で撃墜された」という言葉により伝えられた。対空砲の射程距離が13マイルもないという理由により、トルコの主張は「軍機はミサイルによって撃墜された」という形になった。
■ミサイルの痕跡はない
トルコは一方で、飛行機が公空域内で撃墜されたと証明しようとする一方、もう一方では軍機の残骸を探し出し撃墜の形を特定しようと努めていた。しかしながらアメリカとイギリスのような同盟国はトルコの「所持するデータの共有を」という申し出を受け付けなかった。一方、ある米政府関係者はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し軍機がシリア空域内で撃墜されたと述べた。ロシア外相セルゲイ・ラヴロフも客観的なデータがあることを明かしつつ、この説が正しいとほのめかした。軍機がミサイルによって撃墜されたことを示すレーダーもしくは無線記録が入手できていないトルコは海底調査船ノートリウス号が撮影した軍機の破片においてもミサイルの痕跡を示す発見は無かった。初めに国防相が、後に参謀本部が「ミサイルの痕跡はない」と表明した。「レーダー誘導型ミサイルであればGESが発見したはずだ」という主張にもとづき、その動向が注目された国家諜報機構も現在に至るまでミサイルの痕跡を発見できていない。
■現実路線へ
欧米の外交官らは軍機がシリアで撃墜されたとしても国際交戦規定の違反になることを指摘し、「トルコが、軍機がどこで撃墜されたことに何故こだわったのか理解できなかった」と述べる一方、政府も「シリアは非武装で身元が明らかな軍機を警告なしに撃墜した。これは国際法規的の違反である」という見方を前面に出し始めた。我々が面会したAKPの関係者は、参謀本部と空軍総司令部は手元にある証拠を自分たちにも示しており、行われた分析は、元々その時点で入手できた情報をもとになされたものであったと強調している。軍機の破片が発見されるにつれ、どのように落ちたが判明するは明白だ。このためにダウトオール外相が最初の日に表明した「公空域内で撃墜された」という見方は「シリアが国際法規定を違反した」というアプローチに変更されつつある。
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( 翻訳者:堀谷加佳留 )
( 記事ID:26982 )