観光にアラブの春
2012年08月19日付 Zaman 紙


外貨をもたらすことで経済の推進力となっている観光業界が、近年重要な変化を遂げている。

欧州やロシア、アメリカ合衆国からの観光客の数が停滞している一方、アラブの春によって常に話題となっている中東や北アフリカの諸国から訪れる観光客の数は、ここ10年で実に爆発的な増加を見せている。2001年には68万7千人のアラブ諸国からの観光客を迎えたトルコは、昨年は400万人を越えるアラブの観光客を受け入れた。このように、一部の国々から訪れる人々の数は23倍の増加を示している。この状況は、観光業が海・太陽・砂浜という3つの言葉に象徴される夏に依存していたのを、大幅に減少させた。アラブの観光客らの内70%が、すでに夏以外の季節にトルコを訪れている。このような変化は、観光業者や小売業者を最も歓喜させている。

ホテルからショッピングモール、そして宝石店から寝具屋に至るまで、多くの業界が冬でも観光客から利益を得ている。トルコ観光ホテル業者・企業経営者・投資家連合(TUROB)のティムル・バユンドゥル理事長は、「アラブの観光客をよく理解する必要があります。アラブの人々は海や砂浜、そして太陽は好きではありません」と話す。これに対し気候や自然、そして川などが非常に魅力的な黒海地方の持つ、アラブの人々向けの観光地としての潜在的な可能性をよく評価すべきである。なぜなら、トルコにはマレーシアやギリシャ、そして欧州の国々といったライバルがいる。アラブ諸国から最も多くの観光客をよびこむ観光代理店の一つ、ヘレン観光のオーナーの一人アリ・エシキさんは、以前はアラブの人々はトルコを夏の国と考えていたが、現在では冬でも訪れることのできる国だと知るようになったと話す。エシキさんによると、アラブ向けの観光は2か月が勝負でしたが、今や8か月になりました。こうして季節にはこだわらなくなり始めています。

ネスリーン・M・アルジャビルさんはサウジアラビアからやって来た。トルコは2度目の訪問というアルジャビルさんには、娘と弟が同伴している。アルジャビルさん一家がトルコを訪れるのは、娘たちがトルコのドラマに興味を持ったことが影響したという。イスタンブルの各地を観光するアルジャビルさんのトルコ旅行は、11日間の予定だ。サアド・アブドゥラズィズさんは、サウジアラビアの建築家だ。妻や3人の子どもたちとともに休暇に訪れたという。アブドゥラズィズさんがトルコを選んだ理由には、気候や文化がヨーロッパ的でもありイスラム的でもある特徴を備えていることや、買い物の価格が適正であることが影響したとのこと。16日間滞在する予定のアブドゥラズィズさん一家は、次の休暇もトルコで過ごしたいと考えている。エジプト出身のDr.ニヴィエン・ラシドさんは、子どもたちの強い希望を受けて休暇のためにトルコを選んだという。ラシドさんは、22年前に妻とハネムーンを過ごすために初めてトルコを訪れた。以前に欧州諸国を訪れたことのあるラシドさんの子どもたち、ハディージャちゃんとアブドゥルラフマンくん、マリアムちゃん、そしてジハドくんの4人は、いろいろな旅行先を探しているときにトルコが頭に浮かんだという。ラシドさんは、「もちろんトルコのドラマの影響もあるでしょう」と話す。ラシドさんによると、トルコを訪れるアラブの若者たちの多くが、トルコのドラマの影響で来ているという。

アラブ諸国から最も多くの観光客をもたらす旅行代理店の一つ、メルジャン観光のジュネイト・メンギュ社長は、10年間毎年トルコを訪れるアラブ人たちがいると述べ、以下のように話す。「アラブの観光客は夏にトルコを訪れ、トルコを気に入ります。そして1月に再び訪れるのです」。さらに、トルコのドラマもアラブ人たちの意思決定に影響を及ぼしているという。「銀(Gümüş)」や「アスィ(Asi)」「狼の谷(Kurtlar Vadisi)」といったドラマを視聴するアラブ人たちは、これらのドラマが撮影された場所を見るためにやって来る。さらにはアラブ人たちがカスルン・ヌールとして知る、ドラマ「銀」の撮影地アブト・エフェンディ海岸は、観光ルートの一つに加えられたほどである。

■「訪れた人々はみな、家の価格を尋ねる」

アラブの観光客をトルコに向けることは、国の経済に重要な貢献をしている。欧州の人々に比べ3倍も多く買い物をするアラブ人たちは、多くの業界に重要な貢献をしている。これらの内の一つが不動産だ。アラブ人たちはイスタンブルのような都市に感動し、ここで暮らしたいと考える。トルコで家を所有したいと考えるアラブの観光客たちの数は、極めて多い。ツアーガイドたちは、訪れた人々がみな家の価格を尋ねると話す。このような人々の中には、ロンドンなどの都市からイスタンブルへオフィスを移転する人さえいたという。また他にも、家を購入し登記を待つ人たちもいるとのこと。ヴィアポート・ハウズィズアンドスイーツ住宅供給プロジェクトの顧客の多くは、アラブ人たちで占められている。このプロジェクトで住居を購入する人々は、登記のために順番を待っている。互恵協約における最新の改正が行われた後には、隣人たるアラブ人の数が重大な割合で増加することが期待される。

トルコへの関心が非常に高まるにつれ、アラビア語を話すツアーガイドが不足しだしている。トルコで教育を受ける北アフリカや中東出身の学生たち、あるいは南東アナトリアの国境線沿いの県に住むアラビア語のわかる人々が、繁忙期にはガイドとして活躍している。一部の事業者らは、ハタイやマルディンといったアラビア語のわかる人々が多く住む都市から季節労働者を雇い、人材不足を補う努力がなされている。イスタンブルにあるヴィアポートショッピングモールのように多くのアラブ人観光客が集まる場所では、期間限定としてアラビア語のわかるガイドたちが雇われている。チュラーン・パレス(ホテル)のように常にアラブ人の客らが集まる所では、常時アラビア語のわかるスタッフが勤務している。

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介
されています。)

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( 翻訳者:指宿美穂 )
( 記事ID:27400 )