Fikret Bilaコラム:北イラクと北シリアをめぐる軋轢
2012年08月25日付 Milliyet 紙
アフメト・ダヴトオール外務大臣は、ここのところシリアとイランとの緊張状態と、PKK(クルディスタン労働者党)およびPYD(民主統一党。シリア国内におけるPKK関連組織)の攻撃に関連して、最も批判を浴びている人のうちのひとりとなった。
ダヴトオール外相は、全ての批判について、新聞とテレビを通じて応えた。今進められている政策が正しいこと、変わらないこと、そして「アラブの春」の始まりからシリアの内戦までひとつひとつを正しく見通してきたことを強調した。
ダヴトオール外相は質問に答える中で、トルコがシリアでの出来事に関して懸念している点は、シリアで様々なグループが現れ、「ここは自分たちの土地だ」と言って、実効支配地域を作ろうとしていることだと述べた。
■PKK/PYD支配地域
ダヴトオール外相は、「北シリア」という概念を使うことをよしとはしていない。シリアには、「北イラク」のような地域は構成されないだろうと考えている。シリア北部では、まとまった形でクルド人は暮らしておらず、国境沿い一帯にはトルクメン人やアラブ人がマジョリティである地域があることを、地図を示して強調している。
「北シリア」の概念を受け入れないとしても、トルコの懸念材料は、この地域でPKK/PYDが力を持ち、実効支配を築くことであると言っており、トルコ政府はこれに対し傍観者とはならないと強調する。
当紙の記者であるデルヤ・サザクが、ダヴトオール外相のキルギス訪問後に投げかけた質問に、外相は次のように答えた。
「シリアで内戦が続く中で、ある者が現れある地域を『ここは自分たちのものだ』と言った。例えば、クルド人がこれを発言したとしよう。ヌサイリー(アラウィー)派がラタキアで、スンニー派が、トルクメン人がそれぞれ違う地域で宣言したとしましょう。これは、シリアの分裂を意味します」
ダヴトオール外相は、デルヤ・サザク記者に、「事実上のPKK/PYD政権」ができた場合は傍観者とならないこと、北イラク訪問の際にこのことをバルザーニー大統領に伝えたと言っている。
ここからわかることは、ダヴトオール外相はバルザーニー大統領へ、「もしPKK/PYDがシリア北部で実効支配を行うようになった場合、トルコは黙っていない」というメッセージを伝えたようだ。言い換えれば、「トルコは介入する」という警告を行った模様である。
バルザーニー大統領が北シリアで、またPYDも含む各クルド人グループのトップをアルビルに集め、「シリア・クルド国民評議会」を設立し、PYDに他のグループの総数に匹敵するような議席数が与えられた暁には・・・。
■第一の矛盾
第一の矛盾は、トルコ政府が、バルザーニー大統領がPKK/PYDの北シリア支配を阻止すると期待していることである。
それとは反対に、バルザーニー大統領は、北シリアに形成されようとしているPKK/PYD体制を自身の支配下に置こうとしている。クルド人グループをアルビルに集め、評議会をつくっている。そしてこれらを支援している。
北シリアで中央政府から独立したクルド人支配地域が出来ることは、バルザーニー大統領のもくろみに合致している。
■第二の矛盾
PKK/PYDの北シリア支配に対し、黙ってはいないと言うトルコ政府だが、「では北イラクの現状は?」となる。
シリア側の国境沿いにPKK/PYDが支配権を確立し、トルコへの難民をシリア政府軍が攻撃し、それぞれの民族や宗派が自治区を宣言した場合、トルコはシリアに介入すると言っているが、「北イラク国境沿いのPKK支配についてはどうするのか?」となる。
バルザーニー大統領は北イラクに拠点を構えるPKKに対して何かしただろうか、(それなのに)北シリアで何かしてくれると期待しているというのか?こういう疑問が思い浮かぶはずだ。
トルコ政府がシリア北部で起こってほしくないと思っている全ての状況は、北イラクでは当たり前のこととして存在している。トルコ政府は北イラクへの介入を考えていないのなら、シリアへはなぜ介入しようと考えているのか?この疑問は、この矛盾を指摘しているではないか。
■アメリカという要因
この矛盾はアメリカという要因のみによって説明可能だ。
北イラクへのトルコの介入にストップをかけているのがアメリカと、それに寄り添うバルザーニー大統領であることは明らかである。
PKKはほぼ毎日、北イラクのキャンプからやってきて、トルコでテロの脅威をふりまいている。警察詰所を攻撃し、道を封じ、人々を誘拐している。(ハッキャーリ県)シェムディンリ市はこのキャンプのすぐ近くにある。治安部隊は何週間もの間シェムディンリでPKKと衝突している。テロ組織は同じ警察詰所を48時間の内に三度、迫撃砲や重火器で攻撃している。北イラクとの国境地帯はこういった状況にある・・・。
しかしアメリカは、トルコ軍は北イラクとの国境地帯にひかれた防衛線内に留まるよう強く主張する。
シリアで、「君たちは勇敢だ」といってトルコの背中を押しているのは、これもまたアメリカだ・・・。
ワシントンのシンクタンクでさえも、ガーズィアンテプとマラシュでの爆破テロと、その後トルコがシリアに介入するといった状況を見越す「シナリオ」が想定されている
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( 翻訳者:津久井優 )
( 記事ID:27452 )