早朝に始まり、新しい服、生贄の儀式、ごちそうが並ぶ大きな犠牲祭のテーブル、親族の訪問、これらはトルコの犠牲祭で必ず見られる光景である。では、他の国々ではどうなのだろう?
今日から始まる犠牲祭は、世界のあらゆる場所にいる何百万人のムスリムによって祝われている。まず思い浮かぶ儀式である生贄の屠りは勿論だが、国によって異なる風習もある。ある国では、客人の椅子の下に貨幣が置かれたり、またある国では地区の各広場に設置されたブランコに揺られることで、宗教上の罪が清められると信じられている。他の国では犠牲祭はどのように祝われているのか知りたいと思う。(そこで)ムスリム達が大多数を占める8つの国の犠牲祭において、その国の人々がどう過ごすかを少し見てみよう。
■ モロッコ
犠牲祭を「大祭」と呼称するモロッコ国民は、その準備を祭りの3日前から始める。生贄の2つの角の間にヘンナを付けて染めることを、モロッコ人は「吉兆」になると信じている。農家はバイラムの1週間前から生贄となる羊を売り出す。政府は、国民が犠牲祭を安心して過ごせるよう1週間前に給与を支払う。各銀行も犠牲祭のための特別ローンを実施する。モロッコ経済の中心の街カサブランカの各通りでは、祭りの前には大変な混み具合となる。
■ アルジェリア
犠牲祭の朝は、主要モスクにおいて集団で犠牲祭の礼拝を行った後、イマームが人々への手本となるために生贄を屠る。国民は、初日は薪と炭を買うための日とし、2日目は断食をして過ごす。3日目犠牲祭の礼拝の後、生贄を屠殺する。国民は生贄が屠殺された後、ごちそうが並ぶ大きな食卓をこしらえ、「メルフフ」と言われるサルマ(肉をぶどうの葉で巻いて調理したもの)に似た料理を食べる。タマンラセット地域では、女性達がユフカを伸ばして作った料理を食べる風習がある。
■ トルクメニスタン
大規模な犠牲祭の礼拝を行った後、生贄(を屠殺する)儀式を執り行う。犠牲祭は、トルクメニスタンでは2日間にわたって行われ、各自治体はコンサートを開催する。興味を引く風習は、全ての地区に大きなブランコを設置することである。トルクメニスタンの人たちは、ブランコに乗ることが宗教的な罪を清めることであると信じている。
■ カフカース諸国
カフカース諸国は、90年代までソビエト連邦下にあった。全ての宗教儀式が禁止であったソビエト体制において、カフカースのムスリム達は犠牲祭を祝ってこなかった。1995年に再び設置された生贄(家畜を売る)市場は、祭りの諸儀式をカフカース各国で再び蘇らせた。カフカースでは他の地域と異なることとして、生贄が屠殺される前に、屠殺の場にいる全員がお清めをする必要がある。生贄の祈りも、屠殺する者と食べる者のためにそれぞれ別々に祈りが唱えられる。親族の訪問に際しては、その地方の服装を来て訪ねている。
■ マレーシア
仏教徒とムスリムが一緒に生活しているため、この国では幾つかの祭りの儀式もこのことの影響を受けている。クアラルンプールでの大規模な犠牲祭の礼拝が行われる一方で、各通りは花が用意されて飾られる。マレーシアでは、気候的に羊が飼育されないため、牛、主に雌牛や子牛が生贄に用いられる。
■ バングラデシュ
バングラデシュ人にとっては、犠牲祭における家族訪問が大変重要である。このことは、道路事情が十分ではないこの国において、興味深い光景を見せてくれる。毎年の犠牲祭では、何千何万という人間が鉄道線路を歩いて、家族のいる街へたどり着こうとする。フェリーに乗れないバングラデシュ人達は、小型ボートや手こぎ船によって、何時間も続く危険な旅を続けていく。
■ フィリピン
フィリピンでは、犠牲祭の儀式を実行できるほどの財力のあるムスリム達は(これはムスリム人口の20%にあたる)、この国では羊が飼育されていないため、ほぼ山羊や子牛を生贄に用いる。犠牲祭はただ1日だけ祝われる。ムスリムがほとんどである地方において公休日となる一方で、大都市では(他の宗教の信者数が多いため)これは不可能である。生贄を屠殺する家族は、切り取った肉を連れ合いや友人に配らない。犠牲祭の昼にはごちそうがならぶ大きなテーブルが用意される。食事の始まりをみんなで唱える。生贄の肉を食する人たちは、もし希望するなら、テーブルに置かれた料理を家に持ち帰ることが出来る。犠牲祭の宴を供する家主は、用意したテーブルの椅子のクッションの下に一定額のお金を置く。お金は椅子に座った者のものとなる。
■ パキスタン
生贄の屠殺は市中にて行われる。屠殺場に行くよりも、皆が自身で生贄を屠殺している。生贄の肉の他、頭部、脚、そして臓物をも集めるパキスタン人達は、犠牲獣のこの部位を火で炙り、食する。
■ サウジアラビア
砂漠性気候であるサウジアラビアでは、羊が飼育されていないため、大体の地域で飼っている駱駝を生贄に用いる。過去には、何十万というムスリムが屠殺した生贄の肉は、それを必要とする者達に届けられないまま、暑さによってダメになってしまっていた。生贄は肉が臭わないように埋められ、腐らせていた。問題はすでに冷凍技術によって解決している。
■ 犠牲祭休日が最も短い国はレバノン
犠牲祭は42カ国で公休日とされている。公休日の日数は2~16日の間である。トルコでは今年6日間が公休日となる一方、サウジアラビアは16日間を公休日とし、犠牲祭で最長の公休日のある国となった。今年のバイラムでは2日間のみを休日としたレバノンは、犠牲祭の公休日が最も短い国となった。イラクのクルド地域では公休日が7日間であることが発表される一方、エジプトでは今年3日間が休日となる予定である。ヨルダン川西岸地区にあるパレスチナ自治政府は、犠牲祭の休日は6日間と発表されたが、ガザ地区では5日間としている。サウジアラビア、イラクのクルド地域、チュニジアの各国は犠牲祭の初日を10月26日として定める一方で、パレスチナ自治政府、スーダン、エジプト、トルコは犠牲祭の初日を10月25日としている。
■ 犠牲祭の礼拝はどこでする?
当たり前のことだが、犠牲祭の礼拝は犠牲祭の最も重要な儀式の1つである。イスラム諸国において、老いも若きもほとんどの男性は犠牲祭の初日の朝、犠牲祭の礼拝のためにモスクへ行く。トルコにおいてこの儀式は、礼拝者がモスクから通りへとあふれ出る原因となっているのだが、犠牲祭を祝う他の国々は、犠牲祭の礼拝(の混雑解消に)別の解決策を生み出している。例えばイエメン、バングラデシュ、エジプトの様な国々では、犠牲祭の礼拝を広い野外広場で行っており、フィリピンは、犠牲祭の礼拝をスタジアムで行っているという。
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( 翻訳者:濱田裕樹 )
( 記事ID:28042 )