「アラブの春」諸国の補助金削減問題
2012年10月30日付 al-Hayat 紙

■「アラブの春」諸国の政府は補助金削減と世論の怒りの板挟み

2012年10月30日『アル=ハヤート』

【カーミル・アブドゥッラー・アル=ハラミー(クウェートのエネルギー専門家)】

「アラブの春」諸国の政府は、経済的に国内の状況整理という課題に直面し始めた。そのより重要な動機は、いかにして燃料に対する財政的補助を削減したり、廃止したりするかについての思想上の争いである。補助金は、石油価格の高騰に伴い膨大で、増加傾向にある財政赤字の原因となっている。その上、あらゆる資源に対する日常的な需要も増大しており、その代表は電力である。この問題の唯一の解決策は、財政的補助の削減と、燃料と電力の価格を引き上げるという勇気ある決断である。

これは大きな経済問題であり、手元にある全ての報道・文化上の手段、全面的な透明性を用いて対抗することが必須である。これは、全てのアラブ諸国に当てはまる。アラブの産油国は、金銭的に余裕がある場合を除いてこの問題に直面しており、産油国での補助金の額は年間400億ドルを超えている。しかし、産油国にとってこの問題はエジプト、ヨルダンやその他の諸国の状況ほど深刻ではない。例えばヨルダンの前内閣は、燃料価格を10%引き上げようと試みたが、世論の怒りの結果決定を撤回した。ヨルダンの前内閣は、発表から48時間以内に決定を撤回し、燃料価格引き上げ決定は適切だったのだが後日総辞職した。

筆者は補助全廃を呼びかけているのではなく、その制限を呼びかけているのである。財政的補助の継続は、浪費が続くことにつながっている。公金の垂れ流しを止めるための具体的な制度がない状態では、補助金の削減と資源価格の値上げが不可避である。アラブ諸国での燃料と電力への補助金は、年間2000億ドルを超えている。補助金の額は、エジプトでは200億ドル、UAEでは180億ドル、クウェートでは120億ドルに達している。これらの金額は、全て石油価格が年間8%~10%値上がりするのに伴い、増加することが予想される。

燃料と電力の年間消費量の増大が抑制されないので、アラブ諸国は膨大な金額を負担することになるだろう。このことは、厳しい条件付の外国からの援助への依存と、アラブ世界の経済運営に対する日常的な干渉、そして言うまでもなく永続的な財政赤字を引き起こすだろう。我々は、補助金削減が最終的には貧困層や中間層の利益になり、富裕層の方がより損失を被るという説を信じないかもしれない。この説の根拠は、富裕層はより多くの車両、家屋、さらには空調を持っていて、彼らの燃料や電力消費量が多く、彼らこそがより高額な料金を支払うということだ。

各国の国営石油・電力会社には、大衆を啓発し、消費抑制を訴える役割と、様々な報道機関を通じて問題が実際的・現実的なものだと啓発する役割がある。そして、補助金を削減し、政府による生活支援全般を段階的に廃止すること抜きでは、我々はその他の諸国と競争することも発展することもできないだろうと啓発する役割がある。同時に、我々はアラブの産油国に対し補助金を削減するよう問題提起しなくてはならない。すなわち、これらの諸国は資源需要を満たすために日量1000万(バレル?)以上を消費するようになっているのである。そして、新規に製油所を建設することは平均消費量を減らすことではなく、その逆に作用するのである。補助金改革計画を成功させるには、最終的には「家計」に損失を与えざるを得ない。我々の国内での石油消費が増える度に、我々はその石油を1バーレルあたり100ドルで販売する機会を失い、その代わりに1バーレルあたり10ドル未満の価格で浪費することになるのだ。我々にとって、補助金を抑制・適正化し、クーポン制で運営する方が好ましいのではないか?「アラブの春」の使命を完遂するため、我々には経済を復興する必要がある。また、「アラブの春」諸国を経済復興の先頭にする必要がある。これら諸国の経済は、資源への補助金制度を改革し、その支出を減らさない限り発展しないだろう。経済改革こそが真の課題であり、我慢、継続、完全なる自覚、類い希な勇気があらゆる水準で必要である。我々アラブ諸国における現物補助の規模と資源浪費の姿は、我々全員が将来の世代の輝く未来について考えたなら、「恥ずべき」ことである。

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介
されています。)

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( 翻訳者:高岡豊 )
( 記事ID:28077 )