エヴリヤチェレビーにみる、オスマン時代の魚食文化
2012年11月13日付 Radikal 紙


「旅行記」に名を連ねる2,246種の食材のうち140は魚介類である。つまり、定説とは逆に、オスマン時代にもムスリムは魚を食べていたのだ…。

バビル協会は先週とても有意義 なイベントを開催した。マリアンナ・イェラシモス氏による「エヴリヤ・チェレビーと魚食文化」は絶対に見逃せないものだった。17世紀のオスマン帝国時代の食文化を紹介し、魚の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。マリアンナ氏の『500年のオスマン料理』 (ボユト社)と『エヴリヤ・チェレビー旅行記における食文化』(キタプ社)はご存じのことでしょう。トルコ語の料理本のなかでも重要な二冊である。よって、これからその要約を述べたい。では、はじめよう。

エヴリヤ・チェレビーの旅行記には2,246種類の食品名が記されている。 一番多いのは果物、次にお菓子やデザート、そのあと飲み物が続く。18世紀以降には、お菓子やデザートの種類が一番おおくなり、その後はその状態が続いていった。(オスマン朝の人々は、国の停滞期にも、甘いものを食べ、愉快な会話をしていたらしい。)リストに記されている魚介類は140種類だ。海水魚と淡水魚が93種類、貝とイカ・タコ類は16種類、その他(キャビア、加工品など)は31種類である。イスタンブルで魚屋には11,800人がいると書かれているが、実際イスタンブルの人口は70万~100万人であるためこの記述は誤りであるとマリアンナ氏は指摘する。しかし、チェレビーは魚介類の豊富さを強調するためにこのような「効果的な誇張」を施したのかもしれず、マリアンナ氏が紹介した他の例からも、旅行記はこのような用法で書かれているのが通例だったことがわかる。

街には漁場が300箇所あり、計700人が働いていたとされている。また、ベイコズのメカジキ漁場は年に700万アクチェの売上があり、最高級法官の年収が90万アクチェであったことを考えるとこれがかなり高い数値であることが分かる。旅行記に出てくる魚の名前の多くはよく知られたものだ。価格台帳に値段が書かれている魚にはカツオ、サバ、アジが多くあり、これらは安く、下層階級にも親しまれていたことがわかる。しかし、それ以外の魚は決して安くない。

例えば1640年のイスタンブルでは、羊肉1キロとウナギ1キロは同じ値段であったらしい。また、塩漬け、干物、燻製などは勝手に作ることはできなかった。まず市民の腹を新鮮な魚で満たし、そのあとに余った魚を加工するのが通例だったようだ。
つまりは、言われているのとは反対に、「オスマン時代にもムスリムは魚を食べていた、しかしそれは、魚が豊富で安い時にかぎられる。年間を通して、あらゆる種類の魚を定期的に消費していたのは上流階級の人々であった。これは今日でも同じである。

淡水魚にも多く言及されている。しかしイスタンブルの魚市場で一番漁獲量が多い湖のひとつであるテルコス湖に見られる魚として、エヴリヤ・チェレビーがハガツオをあげているのは、不可解だ。今日の我々はこの魚が川の河口に入るとは思わないが、もしかするとその当時は別の生態であったかもしれない。また赤ボラ (ヒメジも同じ名で呼ばれる)も湖で釣れる魚とされている。エヴリヤ・チェレビーは淡水魚のツノガレイが大好物で、「魚臭さは全くない」と述べている。海水魚よりも湖で釣れる魚がイスラム教徒の間で親しまれていたので、これはあり得る話だ。

マリアンナ氏は、またエビリヤ・チェレビーが魚料理を用いた詩的な表現に注目しており、それは当然のことだ。赤ボラには「神聖な光」、サーモンには「天国の食事」、ウナギは「美味な飾りボタンのよう」そして貝やイカ・タコ類に対してチェレビーの態度は一変する。これらを罵ったり、飲んだくれが食べるものなどの表現を用いた。カキを「黄色い唾」、カニとタコとエビは「海の害虫」、ムール貝やザリガニ類は「海の虫」、ウニ、ホタテ貝、マテ貝やその他の物は「罪を犯した人間と飲んだくれのための前菜」と説明している。

チェレビーにとってトラブゾンへの旅はとても楽しいものだったようだ。本文にトラブゾンをタラベフズン(「愉しみの多い」)町と別称しており、今読む私たちに、「ああ、昔のトラブゾンはなんと素晴らしかったことよ」と思わせる。黒海地方ならばハムシ(イワシの一種)抜きでは語れない。この魚のことをさんざん賞賛し、岸についた漁師たちの大声が聞こえると、人々はモスクからお祈りを中断して岸へと殺到したと紹介する。魚を食べる者は「精力がつく」といった、彼がもちだす推論は「要注意」だ。ああ、まったく、エヴリヤ・チェレビーたら!

会合の最後に、マリアンナ・イェラシモス氏はある宿題をだした。エヴリヤ・チェレビーの『旅行記』だけではなく価格台帳やサイード・ハサン・エフェンディの記述にも名前の出てくる正体不明の「水仙(ニリュフェール)魚」とは何かという課題を私たちに課したのだ。

マリアンナ・イェラシモス氏のこの意義のある研究に感謝し、彼女と同様にエヴリヤ・チェレビーの言葉を以て終わりにしたい。「魚を食す者は災難・怨恨から救われる!」

【訳者補記】公開後、何点か誤訳のご指摘いただきました。修正しました。ありがとうございました!

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( 翻訳者:小幡あい )
( 記事ID:28225 )