シリア:混雑から生じるパンの闇市場、パンを購入するため「特例」を求める市民たち
2012年11月28日付 al-Watan 紙


■混雑から生じるパンの闇市場、パンを購入するため「特例」を求める市民たち

2012年11月28日『アル=ワタン』

【ターミル・カルクート】

市民の間で新たに生じているパン不足は、以前よりも一層ひどい状況となっている。パン会社社長に一部の市民が詰め寄り、パンの量を確保するため「特例」を求めたことにもそれは表れている。パンの量は、1日5袋以下と決められている。パン会社側は「特例」を求める人々は他の市民の模範となっていないとし、またウスマーン・ハーミド社長は(市民の訴えに)特段の驚きを示すことはなく、そのような「特例」を与えることはないと明確に否定した。

ハーミド氏は本紙に向けて次のように発表した。社のパン工場では、ダマスカス及びその郊外県において、毎日500トンのパンを生産している。これは通常の限界を30%も超過した量である。同氏はまた、原料が不足する心配はなく、必要な量のパンを入手できない市民もいないと断言し、その根拠として、原材料の小麦粉と石油は豊富にあり、工場では労働者が働き続けていることを挙げた。

ダマスカス及びその郊外県では、パン1袋あたりの価格が40~100リラ程度に上昇しており、また時にはそれより高値がついている地域も存在する。十分な量の物資が確保可能であること、そして人口過剰であることにより、パン工場周辺や街路ではパンの路上販売が活発化し、政府の補助金で生産されたパンの闇市場が生まれている。

ハーミド氏はダマスカスのパン窯で今次生じている混雑について、いかなる物資であれ、過剰な需要とともに供給の低下が起こるとき、このような混雑が発生し、闇市場につながると述べた。

また同社長は、ダマスカスのパン工場はパンに関する市民の要求を満たすために10ラインが24時間でフル稼働しているとし、その上で、混雑が実際に発生しているのは、第一に午前7~9時、第二に午後2~4時の二つの時間帯に特定できると述べた。

ハーミド氏は、住民移動の結果としてダマスカスに新たに生じた人口過密がパン不足の原因となったと指摘した。特に、ダマスカス郊外県においては、およそ90%の住民が市内に移った。さらにハーミド氏によると、先月、アル=ハジャル・アル=アスワド地区、アル=ヤルムーク・パレスチナ難民キャンプ、及びアッ=タダームン地区では、他所からの住民を迎えた。しかし今月には、彼らはそれらの地区を立ち去らざるを得ない状況となり、その結果、彼らの新たな移動先でパン不足が起こったという。また、ドゥマー地区とアルバイン地区の住民が移ってきたアッ=タッル市では、現在、厳しいパン不足が起こっているとされ、市民たちにパンを提供してきたドゥマー地区、ハラスター市、及びダーライヤー市のパン工場は、操業を停止しているという。
 
こうした(困難な)時期においてパンを確保し、またこのパン不足を解決するために会社が採るべき方策として、ハーミド氏は金曜の工場操業を開始したと述べた。ダーライヤー市、ドゥマー地区、及びハラスター市の工場も再開される予定だ。また、パン工場に対しては、1人3袋以上を販売しないよう要請したとのことである。

いくつかの地区では、今年に入ってから、一度ならずパン不足に見舞われている。原因は様々であるが、いくつものパン工場が操業停止になったこと、労働者が工場に辿り着くことができないこと、イースト原料の供給が遮断されたこと、輸送路問題の結果として小麦粉の運送が困難となっていること、などが挙げられる。しかしながら、シリアは戦略的な小麦の備蓄を有しており、数年分は不足することがない。

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介
されています。)

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( 翻訳者:児島祥子 )
( 記事ID:28392 )