イラク・マーリキー首相に独占インタビュー「エルドアンに手をのばしたのだが・・」
2012年12月05日付 Hurriyet 紙
イラクのヌーリ・アル=マーリキー首相は、トルコとの良好な関係を望んではいるものの、その条件が「トルコがイラク内政に干渉しないこと」であると述べた。マーリキー首相はエルドアン首相に和平の手を差し伸べたといい、「我々もトルコの内政に干渉する機会はある。だが干渉していない。そちらも干渉しないでいただきたい。我々は全てをやり直すことができる」と述べた。マーリキー首相がバグダートで本紙とおこなったやりとりは、以下の通り。
■最初は上手く行ったが
トルコ国民に真実を理解してほしい。我々はイラクとトルコの関係が接近するように取り組んだ。最初は良い滑り出しだった。イラクの経済的振興において、トルコは非常に大きな役割を果たした。トルコとの貿易は他国よりももっと盛んな状態となった。しかし、残念ながらこのような結果に至った。現在の状況は、我々をもトルコ国民をも幸せにしない。我々はトルコとの政治的関係を再び最初から始めたい。
■イラクとともにトルコも分裂する
中東で大きな事態が起こっている。このため、この地域の国々が頻繁に集って、話し合う必要がある。地域の各政府がお互いに内政干渉をしないことが必要だ。イラクには異なる民族集団が住み、異なる言語が話されている。トルコでも、イランでも、シリアでも、そうである。全宗派へ、言語(使用者)へ敬意を持たなければならない。だが、国民、共和国意識も作り上げる必要がある。シリアが分裂すれば、イラクも分裂する。イラクが分裂すれば、トルコも分裂する。
■宗派に干渉した
トルコはバグダート(イラク中央政府)ではなく、いくつかの他集団と協定を結び始めた。イラクで宗派衝突が起こった。しかし、神の助けによりこの衝突を治めた。新しい時期が始まった。我々は宗派相違の件を乗り越えたが、トルコは宗派相違を(煽る)支援し続けた。問題もここから発生した。
■ギュル大統領に言った
私はギュル大統領との会談で、『トルコはイラクの宗派に干渉している』と言った。ギュル大統領は『トルコはそんな政治をしない。民族主義、宗派主義を(煽る政策を)とるはずはない』と述べた。トルコにも異なる言語、宗派グループがある。残念ながら、エルドアン首相やダウトオール外相と我々は同じ考えではない。
■政府と協定しなければならない
そもそも、スンナ・シーア・クルド・トゥルクメンなどといって話したくは無い。どの国に使節を送った時も、接触した際にもいつも言っているのだが、『ス ンナ・シーア・クルド・トゥルクメンといって分けないでください。イラク人として見てください』と言う。我々は国家である、共和国である。ここでも選択された政府があり、トルコにも選択された政府がある。選挙でもって職務に就いた。ふつう政府間で話し、協定する必要がある。国の一部分(勢力)との協定などありえない。諸国家は、協定を結ぶというならばバグダートの中央政府と行わなければならない。(イラク国内の勢力である)北イラクとの、バスラとの協定はありえない。トルコは、北イラクを共和国のようにとらえている。そもそも憲法によれば全イラク国土をイラク軍が防衛する必要がある。しかしながら今現在、北イラクにイラク国軍が存在しないためにこの諸問題は発生している。
■ダウトオール外相の訪問
ダウトオール外相のキルクーク訪問は事態を悪化させた。
■エネルギー相に許可が下りず
また別の大臣で、エネルギー相は北イラクと協定を結ぶために飛行機で来たがった。飛行機のための許可は下りたようだ。しかし私は閣議で我が国の外相に尋ねた。トルコのエネルギー相の同行者のために許可が下りなかったようだ。バグダートの扉は、彼らが望むならトルコ政府関係者にもトルコ国民にもずっと開かれている。こちらにいらして我々と協定を結んではどうか。
■裁判は中止
トルコ企業の協定が撤回されることについての決定は我々ではなく、裁判所が下した。裁判所を通じて物事が停止した。北イラクと誰が協定を結ぼうと、どの国がバグダートの中央政府に相談することなしに協定を結ぼうと、すぐにそのことについて裁判が開かれる。もはやかつてのように投資すべき場は残っていない。大石油企業らが北イラクと協定を結ぶために立ちあがった。しかし彼らもこの協定を諦め再び南に向き直った。
■トルコ国有石油会社に1日で許可
我々はトルコとトルコ企業と良い協定を結びたい。トルコ国営石油会社には許可問題があった。エルドアン首相がイラクを訪問する直前、我々はその問題を1日のうちに解消した。イラクでの石油採掘に許可を与えた。
■私は和平の手を差し伸べている
現在も、現行の諸問題にもかかわらず、トルコと良い対話を求めている。私はここから和平の手を差し伸べている。安全保障、石油、貿易、文化。どの分野でもそちらと取り組む準備はできているし、そうしたい。しかし、イラクの政治へ、内政へ干渉しないことが条件である。トルコだけでなく、どの国が我が国の内政に干渉しようと、いずれも同様に考える。イラクには多様な民族構造がある。だがトルコもそうだ。イラクには反体制派がいる。トルコにも。この勢力は我々と接触し、協定したがっている。しかし我々は取り合っていない。トルコにも宗派はある。しかしこれはトルコの問題だ。トルコも我々に対してこのように振舞うべきだ。
■エルドアン首相へのメッセージ
タイイプ・エルドアン首相への個人的なメッセージは友愛意識についてとなるだろう。しかし私がいつこれを口にしても、肯定的なメッセージを送っても、常に向こうからは否定的なメッセージが来た。再び友愛意識のメッセージを送る。我々の間の友愛意識をもう一度作りだす準備はできている。我々は、全ての協定へ準備ができている。しかし条件は以下だ。我々はトルコの、トルコも我々の内政に干渉すべきでない。
■オジャランをバグダートでもてなしていたら何を感じただろうか
残念ながらトルコはイラクの反体制派を招待している。ターリク・ハーシミーはトルコに居る。私がPKK(クルド労働者党: 非合法)を、その指導者アブドゥッラー・オジャランをバグダートでもてなしていたら、講演をさせていたら、何が起こっていただろうか?何を感じただろうか?これをトルコとトルコ国民は受け入れただろうか?今トルコは、女・子供関係なく死の命令を与える人物を国でもてなしている。バグダート政府は、PKKとの抗争のために非常に従事した。北イラクのクルド自治政府をPKKと交渉の席に着かせたのは我々である。非常に圧力をかけた。こんな言葉が出た。『PKKをバグダートに迎えた』と。知りもしなかった、嘘だ。私はバグダートでPKKを全く見たこと がない。PKKとの抗争について2つの大きな難点がある。一つ、PKKが山々で、(把握が)難しい地理環境で生活している。2つ目は、PKKが北イラクに基地を置いたらしいことだ。いまもPKK問題を北イラクが解決しなければならない。イラク国軍をPKKに対して送り込めば、 対してペシュメルゲ(クルド人武装組織)が出てくる。ペシュメルゲは彼らを護衛している。軍が北イラクに入れば、衝突が発生し、内戦につながり、イラク人の血が流れるだろう。これを望まない。
■キルクークで協定を求める
クルディスタン国境は2003年4月9日に調印された協定でひかれた。そしてキルクークはこの境界のなかに無い。しかしペシュメルゲらは、その協定でひかれた境界を超えた。我々は衝突を望まない。憲法上の権利を国がもつとの提案をつくり(彼らに)送った。キルクークはイラクの領土として残るだろう。ク ルド地域に含まれることを認めない。衝突ではなく、特別なシステムや法による解決を望んでいる。そもそもイラク国軍が北イラクにも駐留することには憲法上の権利がある。しかしこれにもかかわらずイラク国軍は当地域にいない。この問題も憲法によって解決したい。キルクークでも共同統制を提案した。全チェックポイントで、クルド人も、トゥルクメン人も、アラブ人も一緒に。キルクークの立場の問題が解決されるまでチェックを常に一緒にやればいい。戦争にならないようにと取り組んでいるが、国民の権利を守ることをもやめない。
■シリアについて異なった立場である
シリアについてトルコと同じ考えではない。シリア内政にまったく関係したことがない。シリア政府にも、武装組織側にもついたことがない。シリアでアル・カイーダ政府が設立されることを不安視している。しかしそれでも、シリア政府を一切支援はしていない。
■ホワイトハウスでも述べた
ホワイトハウスでも述べた。『いかなる国も、他の国の大統領に国を棄て、出て行けと言う権利は無い』と言った。このことは国民だけが言える。皆がバッシャール・アサド政権が2カ月で終わると述べる中、私は2年では終わらない、しかも多くの血が流れる、と言った。トルコ、ヨルダン、イラン、当地域の国々が(事態)沈静化の路線を進む必要がある。
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( 翻訳者:吉岡春菜 )
( 記事ID:28458 )