第36回ヨーテボリ映画祭でイラク系クルド人出身の監督が受賞
2013年02月04日付 al-Sabah al-Jadid 紙

■第36回ヨーテボリ映画祭でイラク系クルド人を出自にした監督が賞を獲得

2013年2月4日『サバーフ・ジャディード』

【ヨーテボリ(*1):リーナー・スィヤーウィシュ】

第36回ヨーテボリ映画祭が閉幕した。今回はイラク・クルド人系のノルウェー人監督ヒシャーム・ザマーンの『雪の降るまえ(Før snøn faller)』が最優秀ノルディック映画賞を、またモロッコ出身のスウェーデン人監督マーリク・ビン・ジャルールの『シュガーマンを探して(Searching for suger man)』(*2) がロレンス賞を受賞した。ヒシャーム・ザマーン監督の作品に授与された賞金は100万スウェーデン・クローナに及ぶ。本賞はそれに加えて精神的・芸術的価値も有する。ザマーン監督の作品は、慣習や伝統、そして社会の重い置き土産としてわれわれが背負う文化的遺産を克服するなかで愛の持つ価値と力について語っている。

今年のヨーテボリ映画祭は、アラブ諸国からの広範な参加が特徴だ。アラブの映画監督たちの作品は、当然、彼らの社会的・文化的状況を表現するものとなる。とりわけこうした状況は多くのアラブ諸国に波及した諸革命に大きく影響されているように見受けられる。そのためか、テロや政治的暴力といったテーマが参加したアラブ人監督の作品の中心となっている。

ヒシャーム・ザマーン監督は、フーネル・サリーム(イラク系クルド人)バフマン・ゴバディー(イラン系クルド人)マノ・ハリール(シリア系クルド人)らクルド人監督を高く評価している。これらの監督は、ここ数年の間に映画界での確固たる地位を築いている。彼らの映画の多くに顕著に見られるのは、クルド人がイラク北部で受ける苦難、名誉殺人、国外移住といったテーマである。

ザマーンの映画作品のなかでも傑出しているのは『パパ(Bawke)』だ。彼はこの作品により中東国際映画祭で最も優れたショートフィルムに贈られる黒真珠賞を獲得している。この作品でザマーンはクルド人父子の話を題材として、自国イラクを去ったあと彼らが転居と逃走を繰り返しどのように生きるのかを描いている。

ザマーンはまた、ロンドンのクルド映画祭に出品した『冬のくに(Winter Land)』でも大きな成功を収めた。この作品では風刺コメディーの手法を用い、あるクルド人男性が生活のためにイラク北部からノルウェーへ移住する話を取り上げている。家の近くにある電話ボックスを使って、男は家族と連絡を取ることができた。家族は彼にある娘と結婚するよう急き立て、その娘の写真を送ってきた。これで彼は恋に落ち、結婚を決めるだろうというわけだ。だが、妻が飛行機でやってきたとき、彼は度肝を抜かれる。家族が送ってきた写真とほとんど関係ない人と思うほどの違いぶりだったからだ。自分より年増に見えるし、体格もずっと大きいようだ。一方、娘も母親にだまされたことを悟る。彼女が結婚する予定の男性は資産家だという話だった。だが、実は質素な家に住まうただの労働者だったと分かって驚愕する。数々の出来事の後、夫婦は互いに愛し合っていることに気づく。慣習と伝統の破壊の象徴として、二人が電話ボックスを壊す場面の後、二人は共に暮らすことを決意するのである。

ヨーテボリ映画祭(DIFF)は北欧最大の映画祭とされている。映画祭は毎年1月の 最終週に始まり5日間続く。

『シュガーマンを探して』…モロッコ出身のスウェーデン人監督マーリク・ビン・ジャルールのドキュメンタリー映画。アメリカのポピュラー歌手、シクスト・ディアス・ロドリゲスの謎につつまれた人物像を描いており、これまでに高い評価と数々の賞を受けている。

(訳注)
*1 ヨーテボリはスウェーデン南西部の都市
*2 邦題『シュガーマン 奇跡に愛された男』(2013年3月16日国内ロードショー開始予定)

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( 翻訳者:児島祥子 )
( 記事ID:29133 )