トルコを取材旅行したアルゼンチン人記者が、アナトリアとイスタンブルには現在も何十万人もの隠れアルメニア人がいるという記事を書いた。

アナトリアにおける「隠れ」アルメニア人の存在を、アルゼンチンの新聞が報道した。アルゼンチン人記者アヴェディス・ハジアンが書いた「トルコにおける隠れアルメニア人の足跡」というタイトルの記事には、アナトリアとイスタンブルに、その数何十万ともいえるほどのアルメニア系の人々が、そのアイデンティティを隠して生活していると書かれている。ハジアン記者はイスタンブル、アマスヤ、ディヤルバクル、バトマン、トゥンジェリとムシュを取材・調査した。最初の調査はイスタンブルのクルトゥルシュから始まった。

■トルコ人やクルド人と名乗る

記事によると、１世紀近く本来の出自を隠している人々の多くは、東部のいくつかの県に住み、イスラムのスンナ派やアレウィーなど様々な宗派を信仰し、トルコ人あるいはクルド人として生活している。しかし中にはバトマン県サソン郡の村々で暮らす小さな集団のように、現在でもキリスト教の信仰を守り続けている人々もいる。

ハジアン記者は、アルメニア人の正確な数はだれもわかっていないと強調し、多くの隠れアルメニア人が自分たちの出自を公表することを恐れているのを見たと説明した後、パル郡の隠れアルメニア人の発言を次のように伝えている、すなわち「トルコはアルメニア人にとって今でも危険な場所なんだ」

様々なアイデンティティのもとで生活している隠れアルメニア人は、アイデンティティを明らかにしているアルメニア系住民と関係を築くことを避けている。外国人との関係もつくらない。ハジアン記者は、隠れアルメニア人の一部の人々は、祖父母や両親がアルメニア人であることを受け入れ、そしてトルコ人やクルド人の隣人によってアルメニア人あるいは異教徒と呼ばれていても、アルメニア人であることを否定し、さらにはその一部は本当のアイデンティティを受け入れているにもかかわらず、それを自分の子供たちに隠していると説明している。

■冬に教会、夏には（イスラムの）礼拝

ハジアン記者は、隠れアルメニア人であることに気づくのは簡単ではないと述べ、様々な例を挙げている：たとえば、アマスヤ県の最後のアルメニア人であり、キリスト教信仰のもとで育ったフラント・ディンクと同じ学校を卒業したラフェル・アルトゥンジュは、ムスリムとなり、トルコ人女性と結婚、娘もトルコ人として育てた。数年後、新たに改めてアルメニア人であることを受け入れた。ムシュ県のある村に住むジャゾ・ウザルは、冬を過ごすイスタンブルでは教会に行き、夏に戻る村では断食も含めてムスリムとしての信仰生活を行っている。一方、ディヤルバクルの弁護士メフメト・アルカンは、７歳まで家族がアルメニア人であることを知らずに育った。彼は「１０年前まで誰に対しても私たちの出自を隠していましたが、もはやディヤルバクルではアルメニア人であることは危険ではありません」と語り、スルプ・ギラゴス教会の修復を例に挙げている。アルカンはスンナ派を信仰し、礼拝を行っているので、自分をアルメニア人だとは感じさせていないと語っている。

いくつかの状況下では、隠れアルメニア人は予想もしない形で暮らしている、たとえば1915年の事件で生き延びたパル郡バギン村のオガスヤン族は、アメリカへ移住しロードアイランドに定住した。畑で働かせるためクルド人部族長が誘拐したその一族の小さな息子キルコルは、のちに部族長によって孤児のゼルマンと幼くして結婚させられた。2人はパル郡の村に落ち着き、イスラムを信仰し、トルコ語の名前を持っている。一緒にメッカ巡礼にすら行っている。

数年後アメリカの親戚たちがキルコルとゼルマンと交流を持つようになった。現在キルコルとゼルマンの孫はハルプトでイマームを、第2世代の甥オシャヤン・クロロヤンはニューヨークアルメニア教会の大主教となっている。

■ラマン山の小さな少女

ハジアン記者は、トゥンジェリとその周辺の隠れアルメニア人について書いた記事で、サソン郡で経験した出来事に言及している。ラマン山を巡礼のために訪れていたアルメニア人一行の中にいた6‐7歳の少女が背中に白い大きな袋を背負っていた。それが風でひっくり返るや、アルメニア巡礼者だと分かった記者は、写真を撮ろうと近づいた。姿を取られないように、顔をスカーフで隠している小さな少女は、記者の「アルメニア人かな？家族にアルメニア人はいる？」との質問に、「私たちはムスリムです」と答えた。

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（ 翻訳者:鈴木直子 ）
（ 記事ID:29278 )