EU加盟交渉再開には、最近、政府が講じた策がトルコへの見方を改める点で功を奏したという。ブリュッセルでは、今年、「これまでと大幅に異なる、進展のある報告書」が出るかもしれない、とささやかれている。
EUを相手に続けている交渉プロセスは、約3年の中断を経て、6月に一項目について交渉が再開されることになっている。これに加え、[トルコの加盟交渉で]問題がある各国が好意的シグナルを送り、生じた前向きな雰囲気には、トルコが最近講じた策が功を奏している。
昨年秋、EU委員会の出した進捗報告書は、それまで出されたなかで最も厳しいものだった。しかし、トルコの内政・外政面の展開をふまえ、トルコへの評価は徐々に向上している。
EU関係者は、「トルコは流れをつかんだ」と話す。あとは、発表した案の実施を重要視し、いまだに問題を生む未達成事項に決然と対処すれば、トルコ政府は今年、大幅に変わった進捗報告書を目にするだろう、と続けた。
ブリュッセルでの空気を一新させた進捗ポイントはつぎのとおり。
■武力に頼らない解決プロセス
EUの目には、武力に頼らない方法でのクルド問題収拾は、基本的人権と自由の面での多くの課題を乗り越え、社会・経済分野で発展を保障する可能性を担保するもの[と映っている]。最近、問題解決に向けて講じられた策は、EU側に歓迎されている。ブリュッセルは、この施策を支持しており、今後、はっきりとした実績を残すことを期待している。
■司法改革
トルコ大国民議会が承認した第4次司法改革案は、EU委員会が長らく待ち望んでいたプロセスだ。委員会は、前回の進捗報告書前、アンカラに向けて「報告書に色をつけてほしいなら、司法改革を」とのメッセージを送っていたが、トルコは司法改革法案通過を遅らせていた。今回の法案の国会通過は、トルコに好意的な点数として記された。
EU関係者らは今回の司法改革を「極めてポジティブな進展」と評価する一方、一部の問題が法案に盛り込まれなかった点には留意すべきだと釘を指している。
また、「第4次司法法案に続いて、不足部分を除く新たな修正案提出が必要」という意見も、ブリュッセルで度々聞かれる見解である。
■外国人法案
トルコ大国民議会を通過した、外国人ならびに国際保護に関する法案は、「移民・難民問題に対し、トルコが法的・組織的にしっかりした枠組みづくりの努力を行ったことを明確に示すもの」として重要視された。 この法案は、外国人問題に関するEU規格水準を満たすと同時に、人権の側面からも重要である。
EUは、トルコのこのプロセスが、数万人のシリア国民を「客人として迎え入れる」環境を提供したものであると、別途、評価している。「法案が適切に運用されれば、ビザ免除に関して作成されたロードマップに記された重要な事項を実施したことになる」と、EU関係者らも強調している。
■イスラエルとの関係
トルコとイスラエルの関係がどん底に冷え込み、EUもこれを杞憂している。マーヴィ・マルマラ号事件に対し、イスラエル新政府が謝罪してからの両国関係の微妙な変化は、ブリュッセルにとって喜ばしいものだったようだ。
■キプロス問題
キプロスが欧州議会議長を務めていた時期、トルコは欧州議会[との交渉]をボイコットしていた。キプロスのニコス・アナスタシアディス新大統領の就任以降、トルコがおこなっている「挑発にのらず、穏健な問題解決志向」宣言と「交渉姿勢」は、EU本部で点数を稼いでいる。
トルコの「キプロスでの義務」について、EU側のアプローチに変更がなくとも、最近のトルコ政府の政治姿勢から前向きな結果が生じる可能性も少なくはない、との見解が支配的である。
(本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:29675 )