ひげ移植は、イスタンブルで!
2013年05月07日付 Milliyet 紙


ヘルスツーリズムの人気旅行先であるトルコで、増毛に続き口ひげやあごひげの移植がさかんになっている。施術のため5000TL(およそ 27万5000円)もの資金を犠牲にして外国人旅行客は、イブラヒム・タトゥルセス(写真右)のような豊かな口ひげや、クヴァンチ・タトゥルトゥーのような無精あごひげを求めてトルコへやってくる。

トルコは、植毛に引き続き今度はひげ移植の中心地になろうとしている。頭部が薄くなり始めた人のために、年来、増毛を行うトルコの整形外科医は、ずっと外国人の患者を受け入れている。整形外科医と旅行会社は現在、顔に行う植毛がじわじわと人気を広げていると話す。

The Wall Street Journal紙の記事によると、中東、ヨーロッパ、そしてアジア各地から、鼻の下の男らしさを増やすために数多くの人がイスタンブルを訪れている。毛包単位採取法という方法で、医師らは口ひげやあごひげを豊かにするため、体のより毛深い部分から取った毛を鼻の下や頬に移植する。部分麻酔を使用した5時間ほどの施術で、費用は5000ドルかかると形成外科医は話す。また旅行会社は、手術にイスタンブルでの買い物ツアーや南のビーチでのバケーションを組み合わせた「植毛ツアー」を提案している。

医師らは、患者の多くが外国人であり、トルコでのひげ移植が人気の一方で、あごひげ、口ひげを伸ばすトルコ人の数は著しく減少していると話す。セラハッティン・トゥルナイ医師は、このひげ移植ブームに喜んでいる。トゥルナイ医師は、イスタンブルのビバリーヒルズとして知られる高級住宅街に持つクリニックで、2年前から口ひげ・あごひげの移植を始めた。今では月に60名ほどの患者を施術していると彼は話す。

■「口ひげの復活」

トゥルナイ医師は、これまでで最も気に入った術後の写真を集めたアルバムをめくりながら、「口ひげが復活しています。男性は口ひげが薄くても、男らしさのシンボルとして口ひげをたくわえられるということを知って欲しい」と話し、一方で「お客様は必要なお金を支払えば満足いく結果を得られることをご存知です」と語った。

34歳のアルビル出身のある企業家は、口ひげが薄かったため何年もの間自分に自信を持つことが出来ず、トゥルナイ医師のクリニックを訪れたと話す。同氏は、「私たちの文化のなかで口ひげはとても重要です。妻もこの手術を支援してくれました。今はとても満足しています。友人にも勧めました」と 話した。

■観光客6割増加

ひげ移植はトルコでブームとなり、昨年の収支が1億ドルを越えたヘルスツーリズム市場の重要な要素のひとつに数えられるようになった。トルコ保健省の 2012年のデータによると、手術を受けるため入国した外国人旅行客数は、2011年が15万6000人であったのに対し2012年は27万人に上った。保健省の報告では2012年に美容外科手術のためだけにトルコに入国した人の数は10万人ほどと見られている。この数字にひげ移植目的の旅行者数は含まれない。

■イブラヒム・タトゥルセスとクヴァンチ・タトゥルトゥー

手術がこれほどポピュラーになった理由のひとつに、トルコのテレビドラマに出演する口ひげを伸ばしたスターたちが、中東、北アフリカ、そしてバルカン地域 で人気を博していることが挙げられるだろう。医師らは、イブラヒム・タトゥルセスのような豊かな口ひげや、人気俳優クヴァンチ・タトゥルトゥーのような無精頬あごひげが、患者らの間で人気があると話す。

■政治的象徴から流行へ

イスタンブルで整形外科医を仲介する医療機構İsomのジャナン・メリケ・キョクスズ医師は、「うちへくる患者の多くはこのようになりたいと芸能人の写真を持ってきますが、必ずしも全員に似合うわけではないのでうちでは行っていません」と話す。しかしキョクスズ医師は、「かつて、あごひげ、口ひげはそれぞれ政治的[信条の]シンボルであると見なされていたため、ひげへの関心は低かったです、でも今ひげは流行です、人々は流行を取り入れたいのです」と語った。

人気が上昇するトルコのスターたちのようになりたいのは男性だけではない。中東のクリニックによると、アラブ人女性がかつてはレバノン人歌手のような厚い唇、小さい鼻、張りのある頬骨を求めていたが、それが今ではトルコのテレビドラマのスターのようなよりナチュラルな顔を目指すようになったという。

トルコでの手術ブームにあやかりドバイからトルコへ帰国したという整形外科医のゼケリヤ・クル医師は、「トルコのドラマでは、登場人物が自然な顔立ちをしています。かつて鼻を整形していた女性達は今では後悔しており、小さくした鼻をより自然な感じに変えたいのです」と語った。

■ブームの中の危険性

しかし中には整形産業の拡大に負の面があることや、免許を持たない外科医がいることに言及する医師もいる。メリケ・キョクスズ医師は、患者が保健省に相談するケース、医師の処罰、ライセンスをもたない病院の閉鎖などの問題を指摘する。

毛の移植に携わる医師や病院は、中東から来る患者の最も数が多いと話す。中東では今もなお、ひげは政治的な意味を持つものなのである。

トルコがひげ移植の中心地となる中、ひげを伸ばすトルコ人の数はかなり少ないのが現状だ。市場調査会社TNSの調べでは、1993年に73%であった口ひげを伸ばすトルコ人男性の割合は、2011年に34%に下がり、この数字は今も減少中だということだ。一方あごひげを伸ばす男性の割合はというと、同年の調査で18%から24%に増加している。これについては、トルコの保守化が進んでいると指摘する人もいる。

近年真新しいオフィス街やショッピング施設で昔のように豊かな口ひげを見かけることは少なくなった。トルコ人の多くは、口ひげを立派にするために施術を受けるという考えに懐疑的だ。イスタンブルで自営業を営むジェンギズ・アルトゥーは、「個人的にはひげを伸ばしていないトルコ人男性は疑いの目で見てしまいます」と話す。56歳のアルトゥーは、35年間口ひげを切っていない。彼は「外国人が施術のためにどこかへ行かなければいけないなら、イスタンブル以外にはありません。世界は未だにトルコの口ひげをうらやんでいるのです」と話した。

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( 翻訳者:池永大駿 )
( 記事ID:29892 )