シリアが保有する化学兵器を引き渡すという提案は、「注意をそらす作戦」だと考えるトルコに対し、アメリカから「最良の道は軍事作戦ではない」との返答があった。
アメリカ国務省のマリー・ハーフ副報道官は、シリアが化学兵器禁止条約(CWC)への参加を希望していることに関して、要望を国連事務総長に伝えたとし、「現在ジェノヴァで話し合われている以外の方法はありません」と語った。
ハーフ氏は、定例会見で、ジョン・ケリー米国務長官が、国連とアラブ連盟でシリア特別代表を務めるイブラヒミ氏とジェノヴァで会談したと語った。また、ケリー長官が、シリアの反政府・革命勢力のシリア国民連合のアフメド・エル・ジャルバ議長、自由シリア軍高等軍事評議会代表のセリム・イドリス氏と、それぞれ電話会談を行ったことを発表した。ハーフ氏はこの会談で、ケリー長官がジェノヴァでの会談で具体的な約束を取り付けようと模索していること、バラク・オバマ米大統領による軍事行動の圧力についても議論を続けていることを口にした。
ハーフ氏は、ロシアの提案に関するプロセスが、ジェノヴァ会談や国連安保理、常任理事国5カ国のニューヨーク会議という3本柱で進んでいると説明。シリアの化学兵器禁止条約(CWC)への参加希望に関する要望を、国連事務総長へ伝えることについて、「現在ジェノヴァで話し合われている以外の方法はありません。CWCは重要ですが、今回の件は、(シリアが)化学兵器の所有を認め、完全に廃棄するために、我々とロシアで努力するほかないのです。CWC加盟を、注意をそらす作戦として利用するべきではありません」と語った。
ハーフ氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された、ウラジーミル・プーチン露大統領の「化学兵器を使用したのは反政府勢力だ」という発言について、「我々はプーチン大統領とジェノヴァでの代表団を含むロシア人が、言葉だけでなく、行動を示してくれることを期待しています」と語り、アサド体制とは別の勢力が化学兵器を使ったなどという諸説については「荒唐無稽」と切り捨てた。
ワシントン・ポスト紙掲載の、CIAが反政府勢力への援助を増やすという報道についての質問に対し、ハーフ氏は、反対派への援助については、追加するような新たな状況にはなっていないと答えた。「人の生死に直結しない支援については、政治面、軍事面を増やしているとこれまでに何度か述べてきた。今週は、通信機器を新たに送った」と語った。
このプロセスへの参加によって、アサド政権を合法とするのかという質問に対しては、アサドは将来のシリアの一部とはならないという立場を変えるつもりはないことを強調した。
■トルコ-アメリカ関係
ハーフ氏は、「トルコの(アメリカによる)軍事介入賛成と、これによる新たな外交プロセスは、アメリカ-トルコ関係にどう影響するのか」という質問に対し、アメリカとしては、トルコとは非常に近しい関係であり、ケリー国務長官は、アフメト・ダウトオール外相とよく話をしていると語った。
地域の長期的な治安にとって最良の道は、アサドに化学兵器の使用を断念させるために単なる軍事行動をとることではなく、この兵器の保有を断念させることだとしつつ、同時に軍事行動については今も議論を続けていることを明らかにした。
「この何日かの(ジェノヴァ会談での)提案が、現実に確実に前進できるか、信頼できるものかどうかを見るために会談を行います。トルコのような(化学兵器の点で)高いリスクを抱える地域の同盟国とは努力を続けていくつもりです。化学兵器の廃棄がシリアの紛争をすべて解決するものではないという点で、我々はトルコと同じ考えです。これは政治的に解決できるものです。」
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( 翻訳者:鈴木直子 )
( 記事ID:31440 )