■ボズクル議員が一旦訪問し、その後ズィバーリー外相が来訪した
トルコ大国民議会(TBMM)外交委員会の委員長であり、公正発展党(AKP)のイスタンブル県選出のヴォルカン・ボズクル議員は、イラクで重要な外交折衝を行った。これらの折衝の後に、イラクのホーシャール・ズィバーリー外相は木曜日に、公式会談へ出席するためアンカラを来訪した。ズィバーリー外相はエセンボア空港で記者たちの質問に「後で我々は会見を行う予定だ」と言って応じなかった。この会談の重要性を理解するために、トルコ・イラク間でここ2年の間に生じた関係の後退とエルドアン、アル・マーリキー両首相間の深刻な論争に目を向けなければならない。
■アル・ハーシミー副大統領の来訪によって、危機は始まった
イラクの政治危機は、選挙ブロック「アル・イラキーヤ」内部で2011年12月17日に行われた会議・討論の後にヌーリ・アル・マーリキー首相の政府の体制に不満を持つアル・イラキーヤのメンバーが国民議会における議員活動を停止する決定を下したことが発端であった。アル・マーリキー首相による、サーリフ・アル・ムトラク副首相への議員免責特権のはく奪要求や、イラク最高司法評議会によるイラクのターリク・アル・ハーシミー副大統領(当時)の逮捕状発行によってこの国における政治危機は頂点に達した。エルドアン首相はこの進展に際して、アル・マーリキー首相に強硬な反対を表明した。アル・マーリキー首相も、エルドアン首相にイラクの内政に干渉していると批判の矛先を向けた。トルコは、国際刑事警察機構が国際捜索手配書によって捜索しているアル・ハー シミー氏を、イスタンブルで迎え入れた。
■バルザニ自治政府大統領との合意が危機をより大きくした
北イラク・クルド自治政府のネチルヴァン・バルザニ首相が5月にアンカラを訪問した際、油田・ガス田についてなされた諸合意が、イラク中央政府のトルコに向けた批判をより一層助長させた。
■キルクーク訪問が関係を緊張させた
ダヴトオール外相が北イラク・クルド自治区を訪問中にアルビルからキルク―クへと訪れたことが、危機を頂点へと至らせた。イラク外務省が発表した声明には、「トルコは、我々に連絡せずに行ったこの訪問の結果を受け入れなければならない」との表現が用いられた。イラク政府はトルコのバグダード駐在代理大使を外務省に召喚し、覚書を渡した。この経過に対して、イラクのアンカラに駐在するアブドゥルアミール・カビール・アビー・タビフ大使も(トルコ共和国)外務省に召喚された。外務省のフェリドゥン・スィニルリオール事務次官は、イラク大使に対して、ダヴトオール外相のキルク―ク訪問後になされた声明を受け入れるのは不可能であると強い口調で話した。
■雪解けが始まった
約2年間続いたこの関係の後退の後、ヴォルカン・ボズクル議員のバグダード訪問により新たなプロセスが始まった。危機の克服のために生み出された打開策の一つにより、折衝のやり取りが行われた。これにより、ボズクル議員はエルドアン首相の正式な招待をマーリキー首相に伝えた。すなわちエルドアン首相はマーリキー首相を正式にアンカラに招待したということである。これに対して、ジェミル・チチェキ大国民議会議長とアフメト・ダヴトオール外相が、この訪問に随行する形で、バグダードを訪れる予定である。
■ズィバーリー外相、まず大統領官邸に向かい、その後エルドアン首相と会談
関係正常化のために開始された交渉の枠組み内でアンカラを来訪したズィバーリー外相は、木曜日にアブドゥッラー・ギュル大統領によってチャンカヤの大統領官邸で迎えられた。ズィバーリー外相は金曜日にダヴトオール外相と会談する予定である。この会談はアンカラ宮殿(迎賓館)で実施される予定である。エルドアン首相も15時にズィバーリー外相を迎えに来る予定である。大統領府のウェブサイト上では、チャンカヤの官邸におけるレセプションについて以下のように報じられた:
「ギュル大統領はレセプションに際して、友好国そして兄弟国であるイラクの外相を迎えることを誇りに思い、感謝の念を言葉で伝えた。トルコがイラクの政治的安定、領土の統一性、安全保障に与える重要性、そしてトルコが無差別に全イラク国民を受け入れることを強調したギュル大統領は、2ヶ国の関係がいかなるレベルでも発展するために共通の意志が存在していることを喚起した。イラクで発生しているテロ攻撃は単にイラク国民にとってだけではなく、トルコ国民にとっても大きな悲しみの源であると述べたギュル大統領は、イラク人が被っている苦しみを和らげ、国の安定が確立されるために、イラクの政治指導者たちが続けている努力を、トルコが継続的に支持していくことを明言した。」
■トルコは私たちの親友
レセプションの席でイラクのズィバーリー外相は、フザーイ―副大統領とマーリキー首相、ヌジェイフィー国会議長のあいさつとイラク国民の祝福のメッセージを託されたと述べた。イラクは親友であるトルコとの関係を重要視していると明言したズィバーリー外相は、以下のように付け加えた:「最近実現した双方の高官による訪問は、二国間関係に必要とされる勢いを得るであろうと信じていることを、そしてトルコへの訪問も、この問題に関して、イラクに存在する力強い政治的意志を表している。」
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Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:齋藤洋輔 )
( 記事ID:31782 )