夫婦別姓訴訟で原告側勝訴
2014年01月19日付 Milliyet 紙

セヴィム・アカトさんは旧姓の使用を求めて憲法裁判所に裁判を起こし、勝訴した。アカトさん、そして彼女と似た判決を勝ち取った友人のギュリザル・トゥンジェルさんは、「これは、形式の問題ではなく、存在の問題です。おそらく女性が自身の名字を使うことができれば、男の子を生まなかったからと殺されることはなくなるでしょう。なぜなら家系が男性の姓で続くことがなくなるからです」と話す。

先日、憲法裁判所が「結婚した女性に自身の旧姓のみの使用を認める判決」を出したニュースを見て喜んだ人もいるだろう。これらは、トルコの女性がヨーロッパの女性のように、どちらの名字を使うかを自分で決められる時代が来たことを告げる吉報のように見られているが、実際はそうではない。確かに、セヴィム・アカトさんは7年間の戦いの末、旧姓の使用を求めて憲法裁判所に起こした裁判で勝訴したが、女性の名字使用の自由においては、まだそれほど多くの進歩があったとは言えない。なぜならこの問題に関する欧州人権裁判所の決定にも関わらず、トルコは民法の改正を行おうとしていないからだ。つまり旧姓の使用を望む女性にとって唯一の道は訴訟を起こすことなのだ。

セヴィム・アカトさんが自身の名字のために戦っているときに、彼女を一番に支えたのは夫と、彼女自身と同様に弁護士である友人のギュリザル・トゥンジェルさんだった。長い努力の結果、旧姓の使用を始めた女性の一人となったトゥンジェルさんは、同時にアカトさんの訴訟の証人でもあった。本紙は二人と会い、1995年にアイテン・ユナルさんが起こした最初の訴訟から現在まで続くこの名字の問題で、どのようなことがなされてきたのかを話した。

問:女性の旧姓使用の問題は現在どういったものなのでしょうか。

セヴィム・アカトさん:直近では、憲法裁判所が私の訴訟で「旧姓が使用できる」という判決を出しました。これは、2013年に憲法裁判所への本人訴訟権が認められてから出た初めての判決です。しかし欧州人権裁判所が出した判決が個々人にのみ適用される判決であるように、憲法裁判所に対して行われた本人訴訟により出された判決も個人的な判決です。つまり裁判所は、訴え出た人にだけ自身の名字を持つ権利を認めます。この判決の恩恵を他の人も享受するためには、原則的な判決が出されなければなりませんが、今のところそれに向けた取り組みはありません。

問:つまり、もし私が今結婚していて、旧姓を使いたいと思うならば、訴訟を起こさないといけないと言うことですか?

セヴィム・アカトさん:その通りです。

問:では裁判の結果、私があなた方と違う結果に直面した場合どうなるでしょうか。

セヴィム・アカトさん:メインのテーマに違いがないのであれば、裁判所はあなたの訴訟でもこの方向で判決を出さなければなりません。しかしこれらの判決がどう生かされるかという問題でも困難があります。自分に出された判決のために地方裁判所に再び行き、もう一度裁判が行われます。地方裁判所も憲法裁判所の判決にあった判決を出す必要があります。

ギュリザル・トゥンジェルさん:しかし、逮捕された国会議員の訴訟でもそうであったように、地方裁判所は「この本人訴訟(の判決)は自分たちを拘束しない」という態度をとる可能性があります。しかし現行の憲法が定めるところでは、軍政下で制定された憲法なので私たちはこれを認めていませんが、憲法裁判所は高等な裁判所です。その判決はすべての裁判所に対し拘束力のあるものでなければなりません。しかし常にそうはなりません。私の訴訟でも、裁判官は欧州人権裁判所の判例があるにも関わらず、「これらは私の関心するところではありません。私は民法を知っています。それによれば既婚女性の名字は、夫の名字です。しかし望むのであれば、あなたは二つを一緒に使うことができます」と言いました。しかしトルコは欧州人権裁判所の判決を、自国の裁判所の判決より重視しなければなりません。そもそもの問題は、皆が本人訴訟を起こさなければならないことにあります。

セヴィム・アカトさん:直近の訴訟で憲法裁判所が出した判決も不十分な判決です。

■「いつも古い身分証を持っていました」

問:この問題に関心を持ち始めたのはどういった経緯からですか?

ギュリザル・トゥンジェルさん:私はいつも「他の男性の名字は使わない」と思っていました。いずれの婚姻期間においても実生活では他の男性の名字を使いませんでした。しかし多くの問題に直面しました。私はある場所でギュリザル・トゥンジェルと書いていますが、みなトルコ共和国身分証明書の番号を見ます。そこにはギュリザル・ギュネシュとあります。クライアントは委任状を出しますが、それが認められないのです。または検察官から、「この名前の弁護士はいません」という文が来ます。それでも私はあきらめませんでした。例えば私は、名前が変わらないようにと新しい弁護士身分証を出しませんでした。刑務所の職員は、「この身分証を変更しないなら、刑務所内への立ち入りは許可できません」と言っていました。いつも古い身分証と委任状を持っていました。どこかで何か問題が起きたらそれらを出して、「わかりました、これもあります」と言って見せていました。

問:あなたの夫はあなたのこの主張をどう受け止めていますか?

ギュリザル・トゥンジェルさん:私たちは家族や社会環境の中でどんな問題にも直面しませんでした。しかし問題に直面する人たちは多いでしょう。

セヴィム・アカト:私も二回の結婚で夫の名字を全く使いませんでした。例えば結婚後は非常に長い間身分証を変更しませんでした。外国に行く必要があるときにパスポートで使う必要があっただけでした。

■「夫を被告にした」

問:この訴訟を起こしたいと思う人が最初にすべきことは何ですか?

セヴィム・アカトさん:家庭裁判所に訴訟を起こして自身の名字を使いたいと申立てなければなりません。家庭裁判所が訴えを退ければ、最高裁判所に行かなければなりません。最高裁が逆転判決を出さなければ、憲法裁判所に本人訴訟を起こさなければなりません。

問:あなたの訴訟はどれくらい続きましたか?

セヴィム・アカトさん:7年です。しかし私たちの訴訟ではこんなことがありました。司法裁判所で裁判を起こしたのですが、裁判所はこの問題は家庭裁判所が扱う問題だとしました。それで私たちは家庭裁判所に行ったのです。通常は3-5年かかります。

問:あなたは家庭裁判所に行って夫に訴訟を起こしたのですか?

セヴィム・アカトさん:はい。ここで国は女性の要望と男性の要望、どちらも尊重していません。なぜなら私の夫も「人は自身の名字を使うべきだ」と言っています。つまり彼は私を支持しています。しかし私たちは彼を被告にしなければなりませんでした。

問:判決が出された後、どのような反応がありましたか?

セヴィム・アカトさん:とても素晴らしいメッセージをもらいました。祝いたいと思っている人たちからも、自分も申請したいと思っている女性たちからも…

問:例えば否定的な意見は全くありませんでしたか?

セヴィム・アカトさん:ありませんでしたが、訴訟に関するニュースの下にこのような意見が書いてありました。「夫の名字を使いたくない女は結婚するな」と。私はこれに驚きませんでした。なぜなら社会にはこのような意見の人たちがいることは承知しているからです。

■「男性が女性を自分の資産のように考えるという問題」

問:憲法裁判所が出した「旧姓を使うことができる」という判決にあなたは満足ですか?

セヴィム・アカトさん:満足していません。なぜなら本当に大事なことは、これが一つの問題であると認められ、これに関する様々な決まりごとが廃止されることだからです。

ギュリザル・トゥンジェルさん:トルコがやらなければならない唯一のことは、民法に一文を追加することです。第187条に、「女性は望めば自身の名字を自由に使うことができる」と。さらに、夫婦は家族を作るときに新しい名字を始めることができるべきです。ヨーロッパではそうです。女性に自身の名字を捨てることを強制する法律が改正されない限り、皆が本人訴訟をしなければなりません。

問:その法律はなぜ変わらないのだと思いますか?

ギュリザル・トゥンジェルさん:政府は保守的な家族構成を守りたいからです。改正は混乱を招くと言われています。ではヨーロッパではなぜ混乱が起きていないのでしょう?

セヴィム・アカトさん:国は、家系のつながりを男性で続くようにと望んでいるのです。

ギュリザル・トゥンジェルさん:結婚したら変わるのは名字だけではありません。あなたの台帳も男性の台帳のあるところに行きます。これは、女性の身分や過去を完全に否定すると言うことです!結婚したら全部消せ、離婚したらまた全部消せ、再婚したらまた全部消せ。
これは非常に屈辱的なシステムです。離婚した女性は常に離婚文書を持っていなければなりません。正にこのために、これは簡単な問題ではないのです。形式的な問題ではないのです。問題は、男性が女性を自分の資産のように考えているという問題です。もちろん、弁護士や記者のように自身の名字で知られている女性はより困っていますが、この問題はすべての女性に関係しています。

■「正に小説『女性の名前はない』のよう。女性に名字がない」

質問:「結婚前の名字も結局は男性の名字だ、何が違うのか?」と言う人がいると思いますが…

ギュリザル・トゥンジェル:はい、います。しかしそれは父親の苗字なのですから…
それはあなたと一体化した名前です。それでも本来、望めばそれも変更可能にするべきです。結婚すれば名字は自動的に変わります。これは一種の強要として人生に介入します。両方の名字を使う権利は女性にまだ新しく知られたばかりです。多くの女性はこの権利を知りません。多くの人は、この権利を行使するには、結婚手続きの際に自身がこの権利を使いたいと表明しなければならないことを知りません。

問:さらに、「女性の殺害のような重大な問題があるのに、なぜこの問題にこれほどこだわっているのか?」と言う人たちがいます。
ギュリザル・トゥンジェルさん:女性問題は非常に幅広い問題です。女性の殺害は女性に向けられた攻撃の最極限のものです。しかしこれも考えられているように形式的な問題ではなく存在の問題です。まさに『女性の名前がない』という物語のように、「女性の名字がない」のです。

セヴィム・アカトさん:女性が自身の名字を使えれば、男の子を生まなかったと言って殺されることはなくなるでしょう。あるいは、男の子を生むまで子供を産む必要がなくなるでしょう。なぜなら家系が、男性の名字で続くということがなくならからです。

■「何千もの訴訟を起こす必要がある」

質問:この地点まで来るためは何がなされなければなりませんか?

ギュリザル・トゥンジェルさん:女性組織は女性を行動させなければなりません。はっきり言うと、私たちにはそこに沈黙を見ています。男性を含め、多くの友人が私に電話をかけてくれましたが、女性組織、またはフェミニスト関係者でかけてくる人はほとんどいませんでした。憲法裁判所の最後の判決が出たからには、これは何千もの女性が申請をすれば絶対に勝てる訴訟なのです。このようにして法律も変えられるでしょう。

セヴィム・アカトさん:国は一人一人が個人的に訴訟をしなければならない状態にして、私たちを周縁化させようとしています。しかし多くの申請があればあるほど、ことは早く前進します。

ギュリザル・トゥンジェルさん:私たちも「それならどうだ」と、何千もの訴訟を起こす必要があります。訴訟を起こすには費用が掛かりますが、女性の自由のために戦う人は多くのことを覚悟しており、費用についても承知するでしょう。その上、訴訟に勝った後は、慰謝料を得ることもできます。

問:女性に自身の名字を守る権利が認められれば子供たちはどうなりますか?

ギュリザル・トゥンジェルさん:それに関しても欧州人権裁判所の判決があり、夫婦は自由選択の権利を有さなければならないとあります。子供は18歳になった時点で自ら姓を選択する権利を有します。しかし私たちはこの点で子供の状況よりも女性の名字が重要だと考えています。子どもにとって母親と父親、どちらの名字を使ってもそれほど変わりはないのですから。

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( 翻訳者:菱山湧人 )
( 記事ID:32634 )