トルコ大国民議会憲法委員会は、基本的人権と自由の発展を目的に、多数の法律にまたがって改正を行う法案を承認した。
法案によると、地方・国政を問わず全ての選挙運動において、トルコ語だけでなく様々な言語・方言の使用が可能になる。
政党は、党紀でさだめられ、かつ二人までという条件で、共同党首制度を導入できるようになる。
政党が地方の郡に組織を置くためにはその郡の町に支部を立てなければならない、という規則が廃止される。
政党が国から補助金を受けるために必要な国政選挙での得票率が、7%から3%に下げられる。
集会・デモ行進の権利が行使される広場や大通りは、その自治体首長と政党、職業団体、組合の意向を聞いたうえで、地域の行政の長によって決定される。
集会・デモ行進が行われる広場や大通りは、地方紙と県・郡知事府のホームページで告知される。
屋外での集会や行進は日没までに解散し、屋内での集会は24時まで可能となる。
■監督機関の設置
集会・デモ行進の間、(集会の)監視官に与えられていた職務と権限は、監督機関に移譲される。
集会・デモ行進の参加者や演説者の音声と写真を、警察は公開記録に残すことができる。この記録は、容疑者の特定や、犯罪証拠の立証を除き、いかなる目的のためにも使用されない。
集会が目的から逸れたり、保安上実現が不可能と思われた場合は監督機関が、監督機関のメンバーが揃わなかった時には機関の長が解散の決定を下し、状況をすぐさま関係する警察機関へ報告する。
監督機関は、集会やデモ行進が違法な状況に陥った場合、集会やデモの終わりを市民に告知し、状況をすぐさま関係する警察機関へ報告する。
監督機関がその職務を行えない場合は、その状況が関係する警察機関の長から地域の行政の長に報告され、行政の長により、集会の中止の決定が下される。行政の長は文章で、緊急の場合口頭で、警察または警察官に命令し、事件現場へ人員を派遣する。
■他言語・方言で教育―私立学校
私立教育機関法の改正により、トルコ国民が日常生活において伝統的に使用してきた他の言語・方言で教育や授業を行うために、私立学校を開校することができるようになる。これらの学校の教育・授業で使用される言語や方言は、閣議の決定で確定される。法案では、憲法に示されている基本的人権や自由のひとつである教育及び教育を受ける権利の行使が処罰の対象とされ、この罪に対する罰則が強化されている。
暴力や脅迫を用いて、或いはその他の違法な振る舞いで、国立の教育機関や公的機関の許可に基づいて行われる全ての教育活動、個人の教育及び教育を受ける権利の行使、生徒が集団で使用する学校・施設への立ち入り・滞在を妨害する人物には、2年以上5年以下の懲役が下される。
公的機関やこれに准ずる職業団体から得られる、また公的な立場の者の認可に基づき提供されるサービスを利用する権利を妨害する人物にも、2年以上5年以下の懲役刑が下される。
■生活様式への干渉も罰則対象に
集団もしくは個人での礼拝を妨害すると犯罪になる。また、個人の宗教信仰の実践を妨害する行為も処罰の対象に加えられる。さらに、憲法やトルコの批准する国際条約において保障されている個人の「信仰」「思想」「信条の表明の自由」を、暴力や脅迫を以て妨害する行為も罪とされる。
宗教信仰の実践や礼拝行為、個人または集団での宗教儀式を、暴力や脅迫、違法な行為を以て妨害した場合、1年以上3年以下の懲役が下される。
暴力や脅迫、違法な行為を以て、他人の信仰や思想、信条に基づく生活様式に干渉したり、変更を強制したりする場合にも同等の罰が下される。
■ヘイトクライム(憎悪犯罪)
法案では「差別」に加えて「ヘイトクライム」が法律に明記される。これにより、ヘイトクライムが、憎悪に基づく差別であることが強調される。
言語、人種、国籍、皮膚の色、性、障碍、政治思想、哲学的信念、宗教、宗派などの違いから生まれる憎悪感情を理由に、他人が「一般に売られている動産や不動産を買うことや譲渡受けたり、賃貸りしたりすること」「一般に行われているサービスを利用すること、受けること」「雇用されること」「通常の経済活動をすること」などを妨害した人物は、1年以上3年以 下の懲役が下される。
■村落の旧称復活へ
法案では、村落の名称が職権を用いて変更された原因となった文言が削除され、村落に古い名称を付け直せる可能性が明記されている。
また、特定の罪で有罪となった人物が、政党に所属するのを規制していた文言も、同じく削除される。
「トルコ語以外の言語や文字を使ってはならない」とする文言も条文から除外され、予備選での選挙活動でトルコ語以外の言語や文字の使用禁止が解かれる。また候補者は、予備選の選挙活動でトルコ語以外の言語や文字で自分自身を表現することができるようになる。
あらゆるフィトレ(ラマザン月の喜捨)、ザカート(喜捨)、犠牲獣の皮や内臓の寄贈などが、(受け入れ先である)相互扶助財団・社会連帯財団の収益と見なされてしまうことに関する現行法が、撤廃される。
また、「西洋帽着用法」及び「トルコの文字の承認と実用に関する法」に基づく禁止・制限に反した場合、これまで罰を科すとしてきたトルコ刑法第222条が削除される。
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:池永大駿 )
( 記事ID:32926 )