テロ組織と密輸業者の往来を阻止するために、イラクがシリア国境で始めた塹壕工事が続いている。
イラクのクルド自治政府は、ドゥホク市アロカ村まで到達した塹壕の工事が、完成まで15kmとなったと発表した。重機で深さ3m、幅2mの塹壕を掘っている。イラク国境警備隊は、塹壕工事が行われている地域を防衛している。
この地域の防衛を任されている警備隊の司令官ムハメット・ハサン少佐が行った会見で、「イラク政府は、シリアとの605kmにおよぶ国境に塹壕を掘ることを決定した。現在までに590kmの塹壕が完成した。残り15kmとなった。」と述べた。
「この塹壕はベルリンの壁、あるいは、万里の長城ではない。必要な安全が確保された際には、塹壕を埋めることは容易である」と述べたハサン少佐は、一部で言われているようなシリアからの難民の通行を妨げるものではなく、また市民の通行のためにペシュハブル国境門は開放されたままであると述べた。
■テロ事件を計画するためにイラクにやってくる
国境のシリア側で必要な安全が確保されていないため、多くのテロ組織のメンバーが大手を振ってイラク領内に入りこんでいると主張したハサン少佐は、ここ1カ月の間に不法な手段でイラクに入国を企てた905人を逮捕したと述べた。
ハサン少佐は、「これらの人々に事情聴取をしたところ、多くがテロ攻撃を計画するためにイラクへ入国しようとしたことを突き止めた。彼らの中には武器の密輸を行おうとした商人もいた。多数のロケットランチャーやマシンガン、突撃ライフル(アサルトライフル)、爆発物、弾薬を押収した。もちろんこれは武器商人にとっては問題とはならない。彼らはお金を稼ごうとするだろう。国境は、片側だけではコントロールできない。私たちが見た限り、シリア側には国境の安全を守る軍隊は配備されていない。私たちはイラク政府が下した決定に従い安全を守っている」と話した。
■安全な避難路をつくってPYD(民主統一党:シリアのクルド系政党)を支援している。
塹壕の工事に対して抗議をしているグループが、数日前に重機をこわそうとしたのを受けて、緊張が高まったと語るハサン少佐は次のように続けた。
「私たちはクルディスタン防衛省が管轄する軍隊である。どの政党の傘下でもない。私たちの目的は国境の両側の安全を保障することである。しかし、どうしたわけかこのように誤解されている。シリア側から塹壕の工事に抗議しているグループに対し、我々が攻撃したと言われた。これは決して正しいことではない。彼らは、重機をこわそうとし、私たちに攻撃をした。抗議は、メッセージを伝えるために行われるものであり、軍隊を攻撃したり、重機を壊すためではない。私たちが設置している安全な避難路によって、われわれはシリア民主統一党を支援しているのだ。攻撃ではなく、私たちに喜びの言葉をかけてくれることを期待している。
■PYDは通行者から関税を取っている
軍の司令官ムハメット・ハサン少佐は、PYDが実効支配する国境地域が交易ルートになってしまっており、越境する人々から関税という名目で300ドルが徴収されていると述べ、「一羽の鶏を通す際にも、PYDは関税を徴収している」と語った。
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:33489 )