死刑囚への恩赦支援のうねり、演劇・サッカー界へ広がる
2014年04月29日付 Iran 紙

【マリヤム・シャフバーズィー】死刑囚に対する恩赦を支援する動きが、映画関係者から演劇の舞台、そしてイラン・サッカー界へと広がっている。

 映画館「アスレ・ジャディーデ・モバッレグ」で映画『タバゲイェ・ハッサース(敏感な階層)』のチャリティー上映会が連夜にわたって開かれ、アーティストらから金額にして7億トマーン〔約2300万円〕の募金が集まり、その結果3人の死刑囚の命が救われた〔※〕。

※訳注:この場合の「死刑囚」とは、殺人を犯したことで、被害者遺族から同害報復刑(キサース)を求められた死刑囚のこと。被害者遺族は加害者に対して賠償金(ディーヤ)を求めることで、キサースを免除する権利を持っている。そのため、加害者がディーヤを支払うことのできるよう募金活動をすることが、死刑囚を死から救う手段となり得る。

 こうした動きは現在、演劇の世界へと広がりつつある。例えば、3人の〔元〕サッカー選手も出演している演劇『ハム・ハヴァーイー(同じ空気を吸う者同士)』では、ある一人の死刑囚の刑執行が3ヵ月延期されるという内容が展開される。この『ハム・ハヴァーイー』のストーリーは、3人の〔実在の〕女性の人生にもとづいており、そのうちの一人はシャフラー・ジャーヘドである。

恩赦支援の運動、もっと早くから起こされるべきだった

 この演劇の出演者の一人であるセターレ・エスキャンダリーはイラン紙のインタビューに対して、次のように答えている。

私たちが自問すべきは、どうしてもっと早くからこうした運動を起こさなかったのか!ということです。私たちイラン人は、昔からホスピタリティー、文化、芸術、文学といった分野で名高い国民です。こうした〔ホスピタリティーに満ちた〕感覚を〔イラン人が〕享受していることを考えると、どうしてもっと早くからこうした運動が起こらなかったのか!と驚かざるを得ません。

 彼女はさらに、次のように続ける。

確かに最近の動きと似たような支援活動は、昔もありました。思い出されるのは、様々な分野、特に文化やスポーツ界でこうした支援活動に従事してきた人たちがいたことです。今と違うのは、当時はこれほど強力な広報活動は行われていなかった、ということです。

 映画やテレビ、演劇の舞台で活躍しているこのアーティストは、今日では誰でもが携帯電話を使って情報を広めることができるようになったと指摘し、さらに「このうねりが強力なものとなったもう一つの要因として、〔インターネットという〕仮想空間とその情報伝達能力が活用されるようになったことを挙げることができるでしょう」と力説した。

 アーティストやスポーツ選手といった人々は、それぞれの職業で役割をしっかりと果たすだけでなく、その他の責任も負っているとエスキャンダリーは言う。

いろいろな理由から世間で人気を博しているような人たちは、こうした状況で先頭に立つ必要があります。もしそうなれば、一般市民も〔死刑囚を〕赦したり、人道主義的な文化を広めたりする方向へと、促されていくことでしょう。再度強調したいのは、アーティストは自身のプロとしての活動の他に、社会的な責任も負っている、ということです。

赦すことのできる家族こそ、真の勇者

 この演劇に出演した一人で、サッカーチーム・ペルセポリスで活躍したベフナーム・アボルガーセムプールもまた、このことについて次のように述べている。

文化人やアーティスト、そしてスポーツ選手といった人たちは、その知名度の高さから、模範として世間の注目を浴びる存在です。天賦の才を与えられた彼らには、そうであるがゆえに、社会に対して責任を果たすことが求められているのです。


 絞首台から救われた人は道義的な救いを得て、もう一度生きるチャンスを得た人だと考える彼は、次のように明言している。

こうした文化を根付かせることは、次のことも意味しうるでしょう。つまり、赦しによって、犯罪が再び起こるのを防ぐことができる、ということです。その一方で、愛する者を失った家族は、自らの赦しによって、勇気の文化を広めることになるのです。

 アボルガーセムプールは、こうした文化を根付かせることが、人道主義的な感覚を広めることに寄与すると考えている。そしてこうした文化こそ、最終的には規範の欠如を社会からなくすことにつながると指摘している。

〔‥‥〕



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:8412108 )
( 記事ID:33777 )