4月のイラク総選挙、クルド勢力勝利宣言
2014年05月20日付 Radikal 紙


イラクで4月30日に実施された総選挙で62議席獲得したクルド勢力は、選挙結果を「勝利」と評価した。一方、イラク全土で不備・不正の疑惑が判明した。

イラクで2010年に実施された選挙で57議席獲得したクルド勢力は、アルビル県、スライマニヤ県及びドゥホーク県に区分された選挙区44カ所にとどまら ずキルクーク県、モースル県及びディヤーラ県でも大勝利を収めた。クルド勢力は62議席でイラク議会における立場を強めた。 

■ 「クルディスタンが勝利した」

マスード・バルザーニー北イラク自治政府大統領が代表を務めるクルディスタン民主党(KDP)に近いことで知られるHewler紙は、「クルディスタンが勝利した」という大見出しを掲げた。同紙の報道では、「クルド人勢力は、イラク全体で20%得票数を増やした。クルド人地区で最多得票数を獲得したKDPは25議席でイラク全体では第5の政治勢力となった。同結果によりクルド勢力の議席数は62席となった。マイノリティ枠で獲得された4議席を合わせクルド勢力のイラク議会における議席数は66席に上ったと高評された。

報道では、KDPが25議席、クルディスタン愛国同盟(KYB)が21議席、ゴラン行動党が9議席、イスラーム統一党(Yekgirtu)が4議席、イスラーム社会党(Komela)が3議席獲得したと伝えられた。KYBの公的報道機関であるKürdistana Nwe紙は、「将来のKYB」という大見出しを用いた。同紙の報道ではクルド人地区が得た62議席で政府与党に対抗するであろうと伝えられた。同紙は、キルクーク県でクルド勢力が8議席獲得した事を強調した。

一方、Awene紙は選挙結果がクルド人地区における政治争いを先鋭化させるであろうと記した。同紙の報道ではジャラル・タラバーニ大統領のKYBは、クルド人地区にある3都市で首位にはならなかったが、キルクーク県では大勝利を収めたと伝えられた。

■ 知事選結果

クルド人地区ではイラク総選挙に留まらず知事選挙も実施された。アルビル県及びドゥホーク県ではKDPの候補者が、一方スライマニア県ではゴラン行動党の候補者が知事選に勝利した。

■ イラクで投票所300カ所以上の投票結果が無効

他方、イラク全土で不備・不正の疑惑が判明した。イラク独立高等選挙委員会は、イラクで実施された総選挙で、投票所300カ所以上の投票結果が無効とされたことを公表した。独立高等選挙委員会のセルベスト・ムスタファ会長は、寄せられた苦情を検討したと公表した。

■ 「投票所係員3000名超が裁判所に送った」

ムスタファ会長は、「委員会は、投票集計及び結果の改ざんを理由に投票所係員3000名超を裁判所に送った。彼らに対し苦情が寄せられた投票所300カ所の投票結果が無効となった」と述べた。選挙業務時に一部誤った行為があった事を認めた同会長は、「世界中が注目したイラクの挑戦を悪用しようとした者らを見せしめにするためメディアでの実名公表に関して躊躇はなかった。イラク選挙民の意思を弄ぼうと試みた者らがいたが、委員会は彼らを発見するに至った」と語った。

■ イラク野党から「不備があった」との主張

一方、野党は選挙結果に異議を申し立てた。ウサーマ・アル‐ナジャイフィー国会議長が代表を務める「団結者たちブロック」、アンマール・アル‐ハーキム氏 が代表を務める「シーア派連合」、及びイヤード・アッラーウィー元首相が代表である「祖国ブロック」は、議会選挙に「不備があった」と評した。

ナジャイフィー国会議長が行った書面発表では「人口構成が周知であるバグダード県周辺で「法治国家連合」支持者らが極めて少数であるにもかかわらず、当該地域にて80%の得票を獲得したことは意外である。また治安部隊120万名以上に「2種類別々の選挙カード」が渡された。投票集計の際に投票所配置人員がバランスを欠いた事も集計結果に影響を与えた」と言及された。

選挙前にアンバール県で治安を理由に実施された軍事作戦の結果60万名が住居を放棄せざるを得なかったと伝えられた同発表で、以下の文言が記された。「アブー・グライブ地方が水没した事を理由に20万名が住居を放棄した。この悪条件が数千名の投票行動を奪う要因となった。よってバグダード地域では投票率が90%であったのに対し、その他の地域では非常に低い結果となった。」

■ 「選挙で不正が行われた」

シーア派連合の発表では以下の主張が挙がっていた。「選挙結果には不備がある。我々の手元には選挙で行われた不正に関する証拠がある。」「祖国ブロック」 のスポークスマンであるインティサール・アッラウィー氏は、「選挙結果を承認しておらず、選挙の再実施を要求する」と発表した。

イラクで4月30日に実施された総選挙で有権者1219万1000名が投票している。選挙では37の連合及び71の政治グループから成る107のリストから候補者9000名が328議席を巡って争った。アメリカ合衆国が2011年に同国から退いた後に実施された初の選挙という特徴を持つ議会選挙の投票率は60%と公表された。

■ 単独政権にはならず、マーリキー首相は連立を組む予定

イラク高等選挙委員会が公表した最終選挙結果によれば、どの政党も単独政権を築くだけの多数の票を獲得できなかった。単独政権を築くには議会で165議席を有する必要がある。これに関連しヌーリー・マーリキー現首相は連立を組み政権を再発足する予定である事が明らかにされている。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:藤井庸平 )
( 記事ID:33939 )