Ezgi Basaranコラム:英国の炭鉱労働者の賃金は16000リラ
2014年05月23日付 Radikal 紙

イギリスの全国炭坑組合長のウィルソン氏に、イギリスの炭鉱労働者と炭鉱事故について取材した。「我が国では、あなた達の国で起きたような大惨事は100年の間起きていません。そしてその理由は我々が幸運だったからではなく、仕事の安全性を高める法律を作ったからです。死者が出る事や事故の発生は炭坑業界で普通の事ではありません」

 National Union of Mineworker(全国炭坑組合)は世界で最も伝統ある炭坑組合の1つである。イギリスで1800年代末に立ち上げられた「連合王国炭坑連盟」を再組織する事で1945年に立ち上げられた。イギリスにおいて最大かつ最も力を持つ組合である。組合長を2010年からつとめるニッキー・ウィルソン氏と私は対談した。政府が国内外の様々な場所で起きた1世紀前の炭鉱事故を引き合いに出した事は、炭鉱で働く労働者達の命と安全性が今日どのような度合いにあるかを知りたいと思わせた。自身もかつて鉱夫であったスコットランド出身のウィルソン氏は組合の重要性から、安全性をいかに確保しているかといった事まで様々な事柄を説明してくれた。私はイギリスで最後に炭鉱事故が起きたのはいつか問うたが、彼は思い出せなかった。しかしながら実際のところ4人が死亡した事故ですらイギリスとこの組合にとっては「惨事」だった。

―イギリスで最後に大規模な炭鉱事故が起きたのはいつですか?

2012年にガレーのごく小さな炭坑で4人が死亡する事故が起きました。悲劇的でした。この時の現場監督は今なお係争中です。ガレーの特徴はとてもちいさな炭坑がいくつも開かれていることです。通常、1つの石炭採掘場では400-600人の労働者が働いています。しかし、あなたが言う大規模事故が何を指すか私には完全にはわからないのですが…。一度にたくさんの人が命を落としたガレーの様な事故を聞いているのですか?

―トルコで起きたような事故と似た事故のことです

そんな規模の炭鉱事故ですか!イギリスでいつそんな事がおきただろうか。どうでしょうね…なかなか難しい質問をしますね。この規模の…数百人規模の犠牲者がでた事故…待たせてしまって申し訳ない。かなり昔だと思いますね。19世紀の末期か20世紀の初めに起きたと思います。あなたさえよければいつ起きたか詳しく調べて戻ってきましょう。 

―いえ、結構です。いずれにしろ答えはいただきましたので。トルコの首相は「死者が出る事と事故が起きる事は炭鉱業では基本的な事である」と言ったのですが本当ですか?

全く同意出来ませんね。確かに、200年前に戻るなら、つまり19世紀始めですね…イギリスで深刻な炭鉱事故はありました。しかしながらその当時ですら、今日あなた方の国で起きた規模、頻度で事故は起きてはいなかった。我がイギリスではあなた方の国で起きたような炭鉱事故は100年来起きていないと明言できます。そしてその理由は我々が幸運だったからではなく、その当時から今日まで仕事の安全性を高める法律をつくってきたからです。沢山の法律は試行錯誤を繰り返すことで整備され、最も正しい形になるまでかなりの時間を要しました。しかしながら今日私たちは、当時とは全く違う状態にあります。死者と事故は、炭鉱業が甘受し、起きて当然と数えられるような事では決してありません。予防出来ることです。そして、このためにも誰にも「事故は当たり前のこと」などと言う権利はありません。見ての通り、私たちは炭坑組合として今日も活動を続けています。なぜならば政府が炭坑法を「現代化」することを決定したからです。我々は様々な変更の項目について異論があります。現行法を捻じ曲げようとするこの変更は、仕事と労働者の安全性を危険な方向に導いてしまうと私たちは考えています。

―民営化は炭坑業において労働者の安全性にどのように影響しましたか?

私たちの炭坑は1994年に保守政府によって一括民営化されました。今のオーナーは民間企業です。民営化してから安全性という観点において変更はありませんでしたね。何故ならば炭坑が国有であった頃に適用されていた法が失効する事無くすべて有効であり続けたからです。しかしながら今現在顧問達は施行されているこの安全性に関する法律に小さな変更が行えるかどうか調査しています。先ほど申し上げた通り、私たちはそれに反対しています。その法律で行われる最も小さな緩和ですら人命に関わりかねない。このリスクを誰も負う事は出来ないのです。

―炭坑業において、組合と組合化する重要性とはなんですか?

イギリスでは非常に重要な事です。法律は、私たち組合に次のような権利を与えてくれています。つまり中立の、特別な教育を受けた検査官を炭坑検査に送る事。これらの検査員は、その地域を最も良く知る組合の組員であり、組合による選考によって炭坑に送られる。彼らがいつ、どういう条件で炭鉱へ行き検査を行うかは我々が決めます。つまり組合は、炭坑労働者達の安全の要なのです。私たちの組合は長い伝統を持つ有力な組合であり、安全性において妥協しない事で知られています。私たちには1つの炭坑に3人の検査官を派遣する権利があり、この検査官達は地下と地上の労働状況を全ての方面から検査します。

―検査した後組合はどのような対応をするのですか?

調査報告書のコピーを炭坑の経営陣と国の炭坑検査官へおくります。このようにして経営者が報告書を見ない振りをすることを事前に防ぎます。安全性に欠陥があればそれを塞ぐため、雇用者の言い成りになることはありません。何故ならば、検査官が報告書で指摘した箇所について、定められた期間内に改善したことを証明し、国に報告する義務があるからです。国の検査官がこれらを追跡しているため、このプロセスが遅れたり、間違いを犯した場合は、営業閉鎖に至るほどの重い罰が与えられます。

―炭坑で下請けや無登記労働者の労働従事はありますか?

下請け会社は我々の国にも勿論あります。しかしながら彼らは労働力のごくごく一部でしかありません。業務において炭坑労働者に出来ない特別な項目において下請け業者との合意がなされています。しかしここで築かれる関係についても法律は明確で、厳しい。下請け業者が決められた期間のために供給する労働者の命の安全を守る事も業務監督の責任で、下請け労働者にも同じ安全規則を遵守する事が求められます。全てのことが記録されるようになっています。そして申し上げたように、下請けはほとんど使われません。炭坑で働く労働者のほとんどが正規雇用で保険にも入っています。

―ソマ炭坑の経営者が記者会見を開いた際、記者達の執拗な質問を受けて、炭坑で避難室が無いと言いました。あなた達にとってこのような事はありえますか?

もちろんありえません。これだけははっきりとさせたいが、こうした発言が見事に示すとおり、生命に関わる事項を、経営者の良心やイニシアチブに任せることはできません。なぜなら、最終的に彼らの第一の優先事項は金儲けだからです。篤志家だから炭鉱業主になるという人はいません。そのため我々は炭坑法の重要性を強調するのです。避難場所も含めた全ての詳細な事柄に関する法律をはっきりとさせることが必要です。ここ最近、我々覇はこのために闘争を行っている。検査官派遣の権利を我々の手から奪い取ろうとされているからです。安全性における我々の職権を弱めようという狙いがあり、我々はこれに抵抗しています。大事なのは利益を得ることで、支出の削減からはじめるので、最初に削減されるのは安全性に関する支出です。この事を経営者にゆだねてしまう事はかなりの危険が伴います。

―我々の国の炭坑労働者組合は、事故が起きた日に会社がいかに良い企業で、慎重であるかを生放送で説いていました。あなたはこのような組合を見た事がありますか?

様々な国でいくつかの組合が労働者の権利と安全性を捨てて、資産家、国と労働者の間を取り持つ仕事に転向したのを見ています。私達にとっては労働者が第一です。まず第一に、そして全ての段階において炭鉱労働者が優先されます。一人の労働者がなぜ私達の組合員になるのか?我々が彼の権利を守るから、そして最上の形で我々が彼を代弁すると確信しているからです。そもそも、組合の構成員となるにあたり他の理由はあり得ませんね。我々全国炭鉱組合は、唯一つのものに対して責任があります、企業にでも、国にでもなく…ただ炭鉱労働者に対して。

―イギリスには何人の炭鉱労働者がいて、月収はどれくらいなのでしょうか?

イギリスで働いて生計を立てている労働者の内、炭鉱労働者は比較的多くの収入を得ていますね。年収5万5千ポンドほどです(年に19万8千リラ、月に1万6250リラに換算される)。私たちはこの収入もまだ少ないと考えています。サッチャー元首相の組合に、対する姿勢とその後1年程続いたストライキは、炭鉱業を深刻な形で縮めてしまいました。1980年代の初頭には25万人いた炭鉱労働者も今日では2千人に減ってしまっています。皮肉なことに、イギリスでは未だにかなりの石炭を使っており、電気生産は石炭に依拠しています。しかしながら石炭需要の60%は輸入に頼っています。信じられますか?ロシアやら他の国から。なぜならば、輸入した方が安いからです。私達組合も、良い給料でより多くの労働者が仕事に就き、国産の物使うことができると主張していますが、この国も安い労働力を欲しており、違うことと言えばそれを輸入していることです。

―貴方たちは世界で最も古く、大きな労働組合のひとつですが、今日までトルコの炭鉱組合が連絡を取り、あなた方の経験から何か教訓を得るということはありましたか?

いいえ。私達は世界の様々な炭鉱組合と一緒に働いたり、会議を開いたりしています。最近ではウクライナとブルガリアの組合と会合を開いて意見交換をしました。国内外で一体となることはとても重要です。この事を理解するために炭坑労働者がいかなる人生を送っているか知らなければなりません。手仕事で行われる様々な仕事と炭坑業は違ったものなのです。実際の所労働者は1人では地下へ入って行くわけではなく、妻や子供、母親や父親も連れて行くのです。家族全体が炭坑業に就いているのです。さらに言ってしまえば一地域全体の人々が。そのためにいかなる仕事においても見られないであろう同志の絆が炭坑労働者の間にはあります。残念な事に、このことにも悪い側面はあります。ソマで起きたような大きな事故はただ単にいくつかの家族だけでなく地域全体にトラウマを植え付け、その影響は数世代つづきます。元炭坑労働者としてあなた方に言える事があります。今現在ソマにいる人々が何を感じて生活しているかあなた達には想像もできないでしょう。炭坑がいかなるものかも知らない人たちの推し量る事も出来ない感情があるのです。組合として私たちの心はソマにあります。この事を知ってもらいたい。何れにしても私たちはトルコの組合に対してお悔やみの言葉を送りました。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:岩田和馬 )
( 記事ID:33981 )