ガズィアンテプ県のヌルサル・チャクルオール副知事は、「ガズィアンテプの難民キャンプとそれ以外で一時的に保護下にはいっているシリア人」に関する調査を行った。調査において、ガズィアンテプにいる約20万人の難民のうち2万人が違法に働いていることと、今日までにトルコが4,700万リラ(約22億4千万円)に及ぶ医療費を負担しているシリア人の、ひと月分の治療費と薬代の支出額が400万リラ(約1億9千万円)であることが明らかになった。
調査によると、難民キャンプにいるシリア人の日常的な支出はというと、シャンルウルファ県のハラン・コンテナ村で6.8リラ(約325円)、ハタイ県にあるアパイドゥン・キャンプでは15.5リラ(約740円)、トルコ全土での平均は10.7リラ(約510円)であった。調査を行い、報告書を準備しているガズィアンテプのヌルサル・チャクルオール副県知事は、「彼らがやってきて、犯罪率が増加した」という難民に対する世論の感情は、シリア人の避難と共に増加した賃貸料が原因となっていると述べた。
ガズィアンテプ県は、国を逃れ、難民キャンプと県中心部で自ら生計を立てるシリア人の状況を把握するための調査を始めた。ヌルサル・チャクルオール副知事がリーダーを務める「ガズィアンテプ難民キャンプならびに一時的に保護下にはいっているシリア人」の調査結果を公表した。
■最も多くのシリア人がガズィアンテプに
この調査で、国内の混乱を逃れてトルコに避難したシリア人が避難先として一番に選んだ都市がガズィアンテプであることが述べられた。33,440人の難民が、ニズィプとイスラヒイェ、カルカムシュにあるキャンプで生活しており、市の中心地にいるシリア人を合わせるとこの人口は20万人を超えており、この数字は最多のシリア人がガズィアンテプで生活していることを示すものとして注意を引いた。
■ハランは経済的で、アパイダンはお金がかかる
ヌルサル・チャクルオール副知事をリーダーとして行われたこの調査では、難民キャンプの財政的な評価もされている。シリア人の衣食住費を賄うためのカードシステムがあり、国連と首相府の災害危機管理組織(AFAD)によって月額85リラ(約4千円)が入るカードで買い物をし、食事を作っていると述べられた。このシステムを導入することで、シリア人が自らの生活必需品を賄うことができ、無駄遣いも防がれていること、また月額の食費のうち80%が節約されていることに注意を引いた。また、難民キャンプの支出額は6.8リラ(約325円)から15.5リラ(約740円)の幅があるという。難民の一日の一人あたりの支出の観点から、最も経済的なキャンプは6.8リラでシャンルウルファのハラン・キャンプ、最もお金のかかる場所はと言うと、15.5リラでハタイのアパイダン・キャンプである。
トルコにおける難民キャンプでの一日の一人あたりの平均支出額は10.7リラ(約510円)であることが強調される一方、ガズィアンテプにある4つのキャンプで暮らす難民の平均支出額はというと、7.8リラ(370円)から10.4リラ(約495円)の間で推移し、トルコ全土の平均を下回っていることも強調された。
■シリア人に関して囁かれる都市伝説
県の調査によると、シリア人が深刻な治安問題の元凶となっており、交通ルールを守らない、ガズィアンテプの県民に向けられた社会支援が、難民に流れているといった「都市伝説」が人々の間で広まっているという。調査は、20万人を超えるシリア人が生活しているガズィアンテプで2012年にシリア人が129件、2013年には685件、2014年の5カ月間で949件の事件に関与し、これらは全体の約4%にあたること、また12万台の車両登録があるガズィアンテプで5千台近くがシリアナンバーであること、2013年に56件、2014年には61件の事故が起きたことが確認されたと述べている。
■住宅不足が増加した都市において、4万2千人のシリア人が援助を必要としている
ガズィアンテプ中心部の住宅不足は、シリア人の避難とともに限界に達したことも注意を引く。トルコ統計局のデータによると、住宅所有世帯数が最下位のガズィアンテプにおいて、シリア人の流入とともに住宅需要が急速に増加しているにも関わらず、賃貸住宅を見つけることは不可能な状態であるという。調査の最終的な状態によると4万2,216人のシリア人が援助を必要としていることが強調された。
■月額の医療費は400万リラ(約1億9千万円)
国内の混乱を逃れてトルコに避難し、ガズィアンテプに落ち着いて身分証明書を所有するシリア人の治療費も、医療適用宣言に則り県によって賄われており、これまでに4,500万リラ(約21億4千万円)の治療費、200万リラ(約9,500万円)の薬代が支払われ、シリア人の月の医療費の支出は約400万リラである。
■2万人のシリア人が違法に働いている。
調査によれば、ガズィアンテプにいる20万を超えるシリア人のうち2万人は無許可で働いていることが推測される。登録されている難民のうち1万9,633人は仕事をしていることが特定されているという。違法に働いている人々は市場よりも低条件で雇用されるため、その収入は基本的な必需品を賄うにも不十分であることを指摘している。また、都市の3万8千人を超えるシリア人が学齢期にあるが、彼らのうち25%にあたる9,458人しか教育を受けていないという。
■「誇張された状況はない」
調査を行ったガズィアンテプ県のヌルサン・チャクルオール副知事は、人々の間で難民が来てから犯罪率が増加したという説が広がることで、シリア人に対する偏見が生まれていると述べた。チャクルオール副知事は、人々の反感を生む問題に関して行った調査と治安当局のデータによると、シリア人は、多くが仲間内で、あるいは巻き込まれる形で犯罪に関与しているが、その比率は低いことが判明したと述べた。シリア人の流入とともに賃貸料が上昇し、家を見つけることもできなくなったことによって、シリア人に対する都市伝説が広まっていることを述べたチャクルオール副知事は、次のように話した。
「トルコに避難したシリア人の大部分はガズィアンテプにやってきた。私たちの都市では、現在難民キャンプとそれ以外の場所に住むシリア人の人口が20万人を超えている。難民の都市への流入とともに、特に賃貸家屋の価格が上昇したことによって一種の反感が生まれ、この反感から、難民が都市の治安を悪化させている、交通ルールを守らないといった都市伝説による偏見が生まれた。
しかし、私たちの行った調査ではこれらが正しくないことが分かった。現在、都市で起こっている住宅問題の解決のために、第一段階として1万戸の住宅を増設する必要があることを関係各所に通達した。ファトマ・シャーヒン広域市市長も、この問題の解決のために、衛星都市計画を行っている。県民は穏やかな暮らしを邪魔されたくないと思っている。しかし、ここに来たのと同時に、シリア人が悪いことの原因となっているといった誇張された状況はない。違法労働の防止のために対策は打っているが、現在2万人のシリア人が無許可で働いていると考えられる。」
チャクルオール副知事は、流入したシリア人は戦争が終結したとしても国に戻らないだろうという意見は間違っており、いい仕事を見つけた人は留まるかもしれないが、特別な技能のない人々はシリアに戻るだろうと考えていることを付け加えた。
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:34413 )