フランスの公立学校でのアラビア語カリキュラム
2014年07月24日付 al-Hayat 紙


■フランスの公立学校200校がカリキュラムにアラビア語を取り入れる

【パリ:ウマル・アスアド】

「大好きだから、それに私の母国語を忘れたくないから、アラビア語を選びました。」高校3年生のアニス君はフランス語に加えてアラビア語を勉学上の第二言語として選んだ理由を尋ねられて、このように答えた。

フランスではおよそ200校が、ドイツ語やスペイン語、英語などの言語の他に、フランス語に次いで生徒に教える第二言語としてアラビア語をカリキュラムに導入することを選択した。アラビア語を選んだことついては、学生のアラビア語学習に対する高い要求があることが理由となっている。特にフランスでは、アラブ系フランス国民が多数存在することから、アラビア語が第2番目の口語であるとみなされている。

アラビア語は大部分がアラブ系の教師によって学校で公式に教えられている。同様に、このクラスを受講している生徒の大部分もまたアラブ系移民の、厳密にはアラブ・マグリブ諸国からの移民の子どもたちである。

アラビア語教師のカッドゥール・ズウィーラーイ さんは、生徒たちは家族との同意の上でフランスの学校でアラビア語学習を選択すると指摘する。そして、「それは、言語であれ、文化あるいは教養であれ、宗教的な面であれ、自分たちと母国のつながりが切れないように、家族が子どもたちにアラビア語を学び、話すように働きかけるからです」と述べる。

アニス君はズウィーラーイ先生が身を入れてくれているのは「私の祖国であるアルジェリアで休みを過ごすときに友人や親戚と話すためにもアラビア語を習得する」ことだと強調した。

学校のほとんどの学生がアラブ系であるにもかかわらず、勉強する生徒の中には例外もある。フランス人の両親のもとに生まれたキャロリーヌさん(15歳)はアラビア語を選んだことを述べ、「アラブ系の学生がたくさんいる学校で勉強し、彼らと強い友情を育みました。だから、彼らが私の言葉を話すように彼らの言葉を学んで喋ろうと思ったのです」と述べる。

彼女は、去年の夏に家族と一緒にモロッコを訪れたとき、その国にとても感動し、モロッコの人とアラビア語で少し話したと述べた。

フランス語話者にとってアラビア語はなじみ薄く、ある面では難しいと思われる。このために教師は教える際に困難に直面する事がある。特に、文字の発音や正しい発音の点での難しさだ。大部分の学生はカーフ(ق)やアイン(ع)やハー(ح)などの文字の発音を難しいと感じている。しかし、ズウィーラーイさんはこうした難しさは言語を学び、さらに多くのことを知り、生徒と理解を深める上での真の障害にはならないと考えている。

アニス君は、アラビア語はクラスメートが選んだスペイン語や英語よりも彼にとっては近いもので、他の言語よりも簡単だと思っている。

現在の学校のカリキュラムは言語とその文法を教えるだけでなく、アラブ・イスラーム文明に関しても触れている。アラブ地域の歴史や、文化・思想・文学上の代表人物に関する授業や、アンダルスのアラブ人の歴史についての文書やサラーフッディーン・アイユービー(サラディン)の物語のようなアラブと世界の他文明との交流の説明や、さらには今日のヨーロッパにおけるアラブ系移民に関するトピックなど、アラブ世界の文化の全体像を学生に提供しようとしている。学生の中にアラブ世界とその文化についての全体像を形成することを明確に目指しており、単なる言語と文法のみの学習を越えている。

ズウィーラーイさんは以下のように強調する。「アラビア語教師はただ教えるだけでは不十分で、常にアラブ・イスラーム文明の話題に触れています。また、狂信的なものや布教、他の宗教からイスラーム教を区別するなどの扇動をする事がないように、世俗的観点から、この知識を与えるようにしています。そうすることで、アラビア語学習者は父親も祖父も、さらにはまた学習者自身も比類なく素晴らしい文明や価値や業績の子孫であるという事を学ぶのです。 そして、このことが移民の子どもたちが、二重のアイデンティティを確立しその豊かさに誇りを持てるようにするのです。」

アラブ系ムスリムの学生は、各団体が組織する講座やモスクで行われる講座を通じて学校外でアラビア語を学ぼうとする。それにより、一部の学生は先生や教授するイマームの影響を受けやすくなってしまう。そしてズウィーラーイさんは、「団体やモスクでアラビア語を勉強することは、論理的思考や科学的分析から彼らを遠ざけてしまう過激な思想や教義に向かう危険性をはらんでいます。」と指摘する。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:田村颯 )
( 記事ID:34932 )