イラクとシャームのイスラーム国(ISIS)のイラクでの進行が続いている。ISISについて知っておかなければいけないことは…
1. ISISはアルカイダから分かれた
アルカイダのイラク支部であったISISとアルカイダのつながりは2014年2月に消滅した。組織の分裂は以下のようにして発生した。ISISが、アル=ヌスラ戦線を支配下に置き、アルカイダのリーダーのアイマン・ザワーヒリーの命令に従わない方針を明らかにしたことにより、アルカイダのリーダーは、組織の分子から初めて明らかに無視されることとなった。ISISは、シリアで民間人の殺害を減らすという組織からの命令にも従わなかった。そして緊張の高まりの結果、アルカイダはISISとの関係を断絶することを発表した。専門家は「2つの組織間の関係は常に共通の利益に基づいていた。イデオロギーではない」と述べている。ここ数ヶ月、アルカイダが弱体化していると言われる中、ISISが段々と力を伸ばしたとみられている。
2. ISISはカリフ制の樹立を望んでいる
2004年の設立以降、目標を頻繁に唱えてきたISISは、スンニ派国家とカリフ制の樹立を望んでいる。アルカイダから離れてもこの目標は諦めておらず、ISISはアブーバクル・バグダーディーをカリフに宣言した。現在シリアとイラク、そしてベルギーの国土ほどの面積を掌握しているISISは、中東全域に加えて北アフリカへも勢力を拡大しようとしている。ISISが早急にシリアとイラクの政府を転覆させることはないと述べる専門家らは、彼らが拡大イスラーム主義政策をとっていることを強調した。
3. イラクでのシーア派とスンニ派の争いが、ISISが組織に新たなメンバーを迎える要因である
ISISのイラクでの急速な進行の原因の一つとして、国内でのシーア派とスンニ派の争いが挙げられる。スンニ派組織であるISISは、これらの争いを利用して組織に新しいメンバーを加えることができる。シーア派が政権を握り続ける限りISISは急進的スンニ派層にアピールすることができると考えられ、組織が北西部で急速に前進していることもこれに関係している。
4.イラクのヌーリー・マーリキー首相の問題がより大きくなった。
ISISがイラクで組織に新たなメンバーを迎えているのは、政府関係者とはあまり関係のないことだが、マーリキー政権のスンニ派に対する排他的政策がISISを「支援している」と言われている。
スンニ派の大量拘束に踏み切ったマーリキー政権が、シーア派戦闘員と協力したことが知られている。ISISは、この状況を最大に利用する組織として際立っている。イラクの首相交代、すなわちハイダル・アバディ氏の首相就任がこの問題を解決するかどうかに関心が持たれている。
5. ISISはシリアにとても重要な基盤を持つ
シリア内戦はISISのイラク政府攻撃に寄与するもっとも重要な要因である。ISISはシリアの長引く混乱に乗じて土地を掌握したが、このシリア情勢が彼らの武器と資金の調達をも容易にしている。シリアのもうひとつの重要性は、組織の安全地帯として機能していることだ。つまり、ISISはシリアで戦いがあればイラクに逃げ、イラクで戦いがあればシリアに撤退できるのだ。
6.ISISの資金源は石油、ハラージュ(土地税)、そして強奪である
シリアの大多数のイスラーム組織と異なりISISは生き残るための外国からの援助を必要としていない。シリアにおいて国家に似た形態をもつこの組織は、税金のようなものを集め、電力を売り、燃料を輸出している。専門家によるとこの状況は、ISISが戦場で他の組織に対してより影響力を持つことに資するものだ。これによってISISの組織内のつながりもより強くなると言われる。組織の直近の目標の一つがイラクの石油を手中に収めることであり、ISISの生き残りを担保するために石油を重要視していると言われている。
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:菱川大喜 )
( 記事ID:35047 )