Cem Erciyes コラム:「イスラム国」、古代遺跡盗掘を資金源に
2014年09月01日付 Radikal 紙
Google Map 2013
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「イスラム国」はシリアとイラクにおいて歴史的な遺物を略奪し資金源としていた。古代都市において発掘を行うことが奨励され、その売上から利益を得ている。全ての遺物はトルコを介して世界に拡散しているといわれている。

紛争当事者の古代遺跡への管理不届き、権力の不在に乗じている国際的な密輸業者も加わったことで、古代遺跡盗掘は甚大な規模になってしまっている。何千もの歴史的な遺跡が組織的な形で盗掘されている。政府軍と敵対勢力はこの盗掘と破壊に対してそれぞれに罪を着せる一方で、地域の暗黒勢力である「イスラム国」 はこの問題についてもまるで臆することがない。ここのところシリアにおいて歴史的な遺物の盗掘を系統化して資金源にしていた「イスラム国」は、同様の形でイラクにおいても略奪行為をして恐れられている。

「イスラム国」は自身の信仰外のあらゆるものを冒涜し、シーア派の聖廟とジャーミー、キリスト教徒たちの教会を爆破し破壊することをいとわず、これを責務としていることは周知のことである。その土地の文化遺産を破壊し移動するこの組織は、持ち運べる物は西側の密輸業者へ売渡しているということも疑いがない。最近何か月間か、世界中のメディアに掲載されたこの問題にかんする報道は恐ろしいものだ。「イスラム国」の最も重要な資金源は古代遺物盗掘によると報じるものさえある。これらの報道によれば、組織は貢物と強制的に徴収した税金と同程度、歴史的な遺物の盗掘から収入を得ていて、運営資金に充てている。

統治している地域においては盗掘を行うことを奨励している。発見したすべてのものは国際的な密輸業者の助力で西側の市場に輸送されている。当初「イスラム国」の戦闘員も自らこの盗掘に加わっていた。しかしながら支配下の地域で「国」を宣言した組織は、より体系的にふるまい始めた。盗掘現場では戦闘員が監査し、盗掘品から5分の一の「盗掘税」が徴収される。ガーディアン紙の報道によれば、「イスラム国」はアル=ナブクの領内で発掘された、そのいくつかは8000年の歴史を有す古代の遺物から3600万ドルを得た。組織はイラクにおけるいくつかの地域を掌握すると、アメリカの占領による文化破壊を償うことができなかったこの国において新たな不安の波が広がり始めた。イラク観光省が昨月行った発表を見れば、現在までに4500程度の歴史的な遺物が破壊されるか盗み出された。省はまた、部族とユネスコへアッシュール、ハダル、ネムルトの都市を防衛するように呼びかけをおこなった…。

シリアには世界遺産リストに登録された6つの場所があり、国の歴史遺産の90パーセントが紛争地域にあるといわれている。長期間続いている問題がこれほどの規模に拡大してしまったため、少し前にICOM(国際博物館会議)は緊急コードで報告を提出した。ここではシリアにおいて危機にさらされている文化財のリストが掲載されていて、世界の全ての博物館、収集家、オークションハウスがこれらのものやこれに類似する品々を売買しないようにと警告している。 ICOMはその文化的多様性によって世界遺産へ貢献をしているシリアの文化財が失われてしまう危険に対する不安を伝えている、もちろん理解ある人びとに。なぜなら明らかにこの商売は西側の収集家の際限なき収集欲の上に成り立っているのだ。

■グーグル写真が全てを示す

インターネットで簡単に見つけることができるグーグルの写真において、一年以内にきわめて重要な遺跡がどのようにモグラの巣穴のように掘り起こされたのかということを見ることができる。7月にこの写真を出版したナショナル・ジオグラフィックは世界遺産リストに登録されているシリアのアパメア古代都市の状態を提示した(トラファイシング・カルチャーにおいてより詳細な画像がある!)。この重要なローマの都市は2000年間経験したことのないような盗掘に見舞われた。2011年のグーグルの画像では古代遺跡のある場所は完全に平穏である。それから一年と少しの後、2012年4月には都市の盗掘作業間に空けられた穴でモグラの巣穴のようになってしまっているのが見て取れる。古代遺跡を破壊した略奪者たちがこの場所の品々を西側の収集家へと流出させたのは確実だ。 権力の不在に乗じたこの盗掘と似たことは、「イスラム国」によっても行われていると考えられる、「イスラム国」は世界で最も富を得ているテロ組織の一つである。推定によれば、所有した盗品は100万ドルくらいである。ユネスコは「戦争アンティーク」と名付けた、紛争地域から盗み出された遺物が世界規模で年間2200万ドル単位の闇市場を形成していると見積もっている。悪いことに、戦闘グループがこのことを知るや否や金額が増大するのだ。これは武器と麻薬の次に最大の闇市場だ!

■「イスラム国」-トルコ・ライン
 
一時期ダマスカスで修復センターを運営していたアムル・アル=アズムは、この地域をよく知る考古学者である。現在はアメリカで生活していて、この問題に関して見解を求められた人物のうちの一人である。ごく最近、『アフロディーテを追って』という本の著者であるジェイソン・フェルチのインターネット・サイトにおいてアル=アズムの談話が掲載された。同氏によれば、シリア政府も盗掘を見逃しているという。「イスラム国」は、統治している地域の人々に遺物を探索し売ることができる、と述べている。もちろん税金を支払うという条件で。この理由で地域ではトルコ人も含む多くの古物密輸業者がとにかくブルドーザーを使い採掘しているという状況である。

アル=アズムが提供した情報を見ると、トルコとトルコ人のこの恥ずべき事態における役割は大きい。密輸業者の通過道路はトルコである。すべての遺物はトルコを介して世界に広がっている。「内戦が始まるといくつかの国際的な古物商がシリアに来たようだが、すぐに地域はかれらにとって非常に危険な状態になりました。現在この人々は国境の向こう側、トルコで待機しています。シリアはもはやトルコ人のみがやって来ることができます。地域の販売業者と落ち合って、品物をトルコへと持ち運んでいます。古物商のもっとも重要な市場の一つは、シリアのタル=アビアブで、ここはウルファに近いです。キリスも巨大な盗難品の市場です。 ここで持ち主が変わる品々がどこへ行くのかわかりません」と説明している。再びアル=アズムによれば、有名な遺跡はいくらかの収集家たちの注文を受けて盗掘されている。たとえば未だ体制側の支配下に置かれているパルミラにある三兄弟の墓のように…。

地域の紛争がもたらした死、移住、破壊はあまりに大規模であり、文化の次元は悲しむべき問題として、今の所再び見逃されてしまったのだ。盗掘と略奪はその土地に暮らす人々のアイデンティティをも破壊してしまう冷酷な所業だ。長期の影響は償うことができない災厄である。トルコが戦闘員対してと同様に、密輸業者をも見逃しているという主張もまた恐ろしい。

「信じられない」と口にできたなら…。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:堀谷加佳留 )
( 記事ID:35246 )