イスラム国の見えない出口
2014年09月28日付 Zaman 紙


イスラム国がトルコ国境にあるコバーニーで圧力を強めている中、アンカラ政府がイスラム国との戦いにおいて踏み出す一歩に関心が向けられている。トルコのシリア領内における緩衝地帯の提案にアメリカ、アサド政権、民主統一党(PYD)が反対をしている。エルドアン大統領が話題にした陸上作戦についてもワシントン政府から肯定的な反応はなかった。

シリア国境のクルド人が生活しているコバーニーで過激派のイスラム国とPKKのシリアでの組織である民主統一党の間での衝突が激化する一方、視線はトルコの姿勢に向けられている。イスラム国がコバーニーを支配した場合、地域での支配を強めると同時にトルコの隣国となる。イスラム国は、シャンルウルファの国境をはさんで向かいのテル・アブヤドとガズィアンテプのカルカムシュと接するジャラブルスを以前に支配下にしている。コバーニーの陥落は、トルコへの難民の流入も急増させるだろう。何十万人もの人々が国境から流れ込むだろう。イスラム国に対して戦闘を繰り広げている民主統一党は、アンカラ政府へのに武器の支援を要求する一方、PKKも他方で「コバーニーが陥落すると解決のプロセスが終わる」と言って脅迫をしている。PKKと民主統一党が、イラク軍でさえもできなかったイスラム国に対する勝利をおさめたならば、組織の地域における影響力は増し、イスラム国との闘いで味方を求めているヨーロッパで正当性を得ることができるだろう。「大クルディスタン」という目的にもさらに一歩近づくことになる。人質が解放された後、アメリカがリーダーシップをとる有志連合に軍事的な援助をすると明らかにしたトルコが、この貢献をどのように行うかが議論されている。トルコは、安全保障と長期的な政治という意味で行き詰っている。有志連合への参加について、トルコ政府とアメリカ政府との間で話し合いが続く中、両国とも妥協点にまだ達していない。トルコは、シリアでの緩衝地帯を推進し、アメリカ、アサド政権、クルド人はこれに反対している。タイイプ・エルドアン大統領が話題にした陸上作戦についてもアメリカ政府から肯定的な反応はない。
アメリカのデンプシー統合参謀本部長は、昨日、国防総省で行った記者会見で緩衝地帯がある点では一つの可能性となり得ること、しかし、現在イスラム国に対して行われている作戦の一部ではないと述べた。シリアのワリード・アル・ムアッリム外相も、昨日北部に緩衝地帯を作るという試みは受け入れないと述べた。

■シリア:緩衝地帯は我々の主権への侵害である。

トルコがこういった要求をしたと述べたムアッリム外相は、「これはシリアの領土と主権への侵害である」という表現を用いた。民主統一党も、トルコ軍が問題の地域に入るのを望んでいないことが知られている。エルドアン大統領はというと、先日、陸上作戦も取り上げたと述べた。しかし、陸上作戦のために軍を派遣する国は今のところない。トルコ軍がシリアに入ったならば、イスラム国とアサド政権の両方と戦争に入る危険性がある。トルコ軍が、国境の外側で軍事作戦を実行することを可能とする許可法案は、10月2日にトルコ大国民議会に提出される。
緩衝地帯、あるいは、安全地帯には、国連安全保障理事会からに飛行禁止空域の宣言が必要である。緩衝地帯は空と陸から完全にコントロールされる必要がある。これは、シリア国内への地上作戦を意味する。イペキ大学のギョクハン・バジュク准教授は、緩衝地帯の適用の難しさについて次のように指摘した:「ひとつの場所を定め継続的に空から介入する必要がある。とても大きな軍事的なコストがかかるだろう。政治的な合意も必要である。ヨーロッパのリーダーたちが、非常に予想外の展開が見られない限り軍を派遣することはとても難しい。トルコが軍を派遣するかしないかは、アンカラ政府が決定するが、緩衝地帯の設定をトルコが単独で行うのはとても難しい。その場合、どこに、どのようにして設定するのか。」

■「アラブの春」は「クルドの春」となるだろう。

バジュク准教授は多くの人々が民主統一党を支持し始めていて、国際的な正当性も増加していることを強調し、次のように述べた:「ヨーロッパとドイツのような国々においては、『現地で我々の味方はクルド人だ』と言われている。アメリカでもクルド人への共感が生まれている。この衝突において、PKKと民主統一党に近い勢力は、半ば国家のような振る舞いを始めるだろう。これらが地域を治めているのだ。ここで正当性が増したクルド人運動が私たちの目の前に出現する。アラブの春は、おそらくクルドの春という結果になるだろう。解決のプロセスの最も大きな目的は、PKKの武装解除であった。この後PKKは武装を解除するのか。この問題についてはっきりとは話していない。この他、クルド人はトルコ国境の外では主要なアクターとなるだろう。これに対応する戦略を練る必要がある。」



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:35426 )