スルチの丘がコバーニーの戦闘の見物場所になっていると言うBBCトルコの特派員は、「偵察機が現れると『オバマ万歳』の声が聞こえる」と伝えた。
■「ほら、あそこが私の家だ」
コバーニーとその西方にある村々の両方を一望できる岩の上で一人座るシリア人は、「ほら、あそこが私の家だ」と語る。
コバーニーに位置するその家の、前からも後ろからも煙が昇っている。つい先程も、彼が示した家のすぐ付近で空爆が行われた。そして自動車やトラックのある西の方を示した。
シリア側で彼を待つのは家族だそうだ。随分長いこと一人で座り続け、誰とも話さなかった。男女のいとこ、姪はYPG側につき、イスラム国との戦闘中に命を落としたという。イスラム国が「少しばかり離れれば、彼は家に戻る」。
彼の手には水や飲み物の容器がある。それらをシリア側国境の、自動車のある場所にいる家族に持っていくそうだ。「ですが国境通過に許可は与えられていないのでは?どうやって通過するのですが?」と尋ねると、「どうにかして方法を見つけるさ」と言い、丘の裾にあるピスタチオの木へと歩いて行った。
■双眼鏡で家々の爆破を見物
トルコとシリアの国境にある岩場が見物場所となっている丘がここだ。一方ではシリア側国境の丘に連なるように家々が並ぶコバーニー、西の方にはトルコ側とシリア側の双方にある自動車が見える。
丘の中間地点では砲身をシリア側に向けたトルコ国軍の戦車、少し下った所ではミュルシトプナル境界近くに据えられた、射程距離40キロメートルの榴弾砲がある。
丘の岩場には、「国境見回り」に訪れた人々や、爆破された家々を見物するコバーニーの人々、以前は水へのアクセス以外何の問題もなかったのに今は戦争を知ったスルチの人々が座っている。
ほとんどの人の手には双眼鏡がある。
■軍機を見ると「オバマ万歳」の声が聞こえる
シリアから投じられた砲弾がトルコ国境内に命中したすぐ後、シリア人のハンメットさんはコバーニーへ向けられたレンズの前後に操りながら、コバーニーにある伯父たちの家を見つめている。その家も、煙が立ち上る場所だ。
コバーニーには畑も車も家もあったと言う。資産家だそうだ。イスラム国は彼のすべてを焼き払い、使えそうなものまでも奪ったという。偵察機が空中に現れるたびに、「オバマの旦那が来た」「聖オバマが来た」「オバマ万歳」の声が聞こえてくる。さらにはシミット屋までいて、「丘の間」を回っている。
また、この辺りでは独特の日没が見られる。この丘から見ると、日はシリアに「沈む」。
■「愛の丘」から今では戦闘を見物
「ゴールデンタイム」には、手に双眼鏡を持ち、発砲するYPGを見物する人々のシルエットだけが見える。戦闘が激しい日にはそのシルエットに、空に立ち上る煙、空爆で生じた赤や黄色の垣根が加わる。
スルチの丘の一つは、人々の間では「愛の丘」として知られている。
恋人たちは特に夕刻、コバーニーの神秘的な光を見にその丘を訪れたそうだ。今ではこの丘に来るものは「戦争のシルエット」を見ている…。
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:小川まどか )
( 記事ID:35611 )