コラム:シリア危機に対するロシアの立場と米国の立場
2014年11月25日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ロシアはシリア国内の変化に満足しているのか?
【アリー・クィースィー:本紙】
ロシアのラブロフ外相は数日前、サウジアラビア外相のサウード・ファイサル王子と会談を行った。その後声明を発表し、シリアの政治的解決は安保理理事国とアサド政権が合意したジュネーヴ1を通じてのみ実現されると述べた。この声明はアサド政権の側に立った発言ととれるが、同時に、表舞台の裏側で何らかの動きがあること、シリアの政治的解決に向けて同国に変化を与えるような政治的イニシアティブが浮かび上がったことを意味したものと思われる。そして、これとは別に、今回のサウード・ファイサル王子のモスクワ訪問およびラブロフ外相との会談はおそらく、シリア国民が4年間味わい続けた壮絶な苦しみの先には、実現に時間を要するものの、ある解決策が存在することを示唆したものであったのではないか。
シリア危機の関係国から提起されるこうした指摘は、拡大・拡張の末に地域的・国際的な規模にまで至ったこの危機を終わらせ、戦争に終止符を打つ必要があることを示している。しかし、シリアの政治情勢を追う専門家の中には、今回の会談で話し合われた解決策に即効性はないという見解を示す者もいるのだ!!また、シリア領内で起きている戦争や、地域・国際的な干渉、有志連合の存在、利害対立や優先事項をめぐっての争いがある中、この4年で注目を集めているダーイシュ(イスラーム国、ISIS)が、シリア危機の全当事者にとって切迫した危機として目前に現れた。同様に、この危機をめぐる大国の最優先事項はダーイシュとの闘いになり、米国およびそれに連なる有志連合は現在、イラクとシリア領内にいる標的(ダーイシュ)への攻撃に専念しており、現状は対アサド政権の新たな戦線を開くことは考慮していない。アサド政権と反体制派の間で血が流れ続け、狂気に満ちた血まみれの紛争が行われているにもかかわらずである。
このことから、専門家らの間ではシリア危機をめぐる米国の政策に対して疑義が提示されている。すなわち、アサド政権こそ地域にテロがはびこる原因である以上、最優先に取り組むべき課題はアサド政権と対峙(たいじ)し、これを崩壊させることであるはずだ、という主張である。しかし、米国の戦略にはこの視点が抜け落ちている。シリア危機に対する米国の明確な戦略は、真の意味では存在しないのだ。それゆえに事態は複雑化し、平和的解決の存在にもますます疑念が生じている。
一方、この紛争におけるロシアの役割は危機の開始から一貫して明白であり、ロシアは常にアサド政権の側に立ち、政権が頂点に君臨し続けるようあらゆる手段で擁護してきた。ロシアのこうした姿勢は、自由シリア軍や反体制派に対して消極的で愚鈍な役割しか果たさない米国のものとは真逆と言える。米国の役割は一時的に苦痛をマヒさせるだけの効果をもたらすに過ぎず、言を弄(ろう)するのみで現実には機能していない。では、ロシアの場合、今後もアサド政権の側に立ち続けるとして、同国の主張するシリア危機の政治的解決策にはどのような利益があるのだろうか?ロシアの立場が一貫したまま、各地で(シリア危機に関する)会議が行われ、アラブ外交との度重なる会談が行われることは、何を意味しているのだろうか?
(後略)
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:辰巳新 )
( 記事ID:35981 )