コラム:危機に瀕するシリア難民…支援はどこへ
2015年01月09日付 al-Quds al-Arabi 紙
■シリア難民と凍死…支援はどこへ?
【社説】
光景が胸を引き裂く。子供たちは寒さと空腹で震え、いくつもの家族は吹雪に閉ざされている。彼らは、何もかもが欠如するテントの中で凍死する危険に直面している。このように、シリアの隣国では何百万というシリア難民の苦しみが深刻化している。以前は十分苦しんでいなかったかのようである。冬が突然やってきたかのようでもある。あるいは、シリア反体制派の諸組織や、シリア難民を受け入れた複数の政府の一部に注がれてきた数億ドルは、彼らをかくまい彼らの生命を保護するための基本的な設備を備えた「キャンピングカー」を購入するのにも不足しているかのようである。
シリア国内の難民キャンプもまた、最低限の基本的な必需品も不足する非常に困難な状況に苦しんでいる。そして、過酷な冬の季節が到来し、状況は悲劇性を増した。それに加え、支援団体もほとんど存在していない。シャームの国々(シリア、レバノン、パレスチナ、ヨルダン)は極度の低温にさらされており、気象専門家によれば、これはすくなくとも明日日曜日まで続くという。シリア反体制派に属する政府の首班と支援調整組織の「スハイル・アタースィー」代表が一昨日木曜、イスタンブールで開催した記者会見では、タアマ氏(訳注:シリア国民連立首相)が「アラブの兄弟と国際社会、良心をもつすべての人々に、試練を受けているシリア人たちの救援を請い願う。この試練は、国内で10[万]人以上の人命を奪い、過酷な状況のために国民の一部が近隣諸国のキャンプにいる」と述べ、「大きな悲劇のために、(支援要請に対するドナー諸国等からの)レスポンスは限られている。暫定政府発足当初、予測では、月に2億ドルが必要とされていた。しかし現在、必要とされているものは膨大である…」と表明した。アタースィー氏については、「700万(ドル)相当の緊急支援金が分配され、これに加えて燃料とテントの支援が行われた。これらを得ることができる世帯は、3万世帯に上るだろう…」と述べた。反体制連立の「政府」は自身が実際に受け取った支援の規模とその使い道については明かしていないが、このことは難民たちをこの苦しみから解放するはずであった莫大な資金の行き先について疑問の声が上がるのを、妥当なもの、いや決定的なものとしている。
反体制派諸組織が、支援金の使途にかかわる会計を明確に示すための機関設置に失敗したというのは、公然の秘密である。そのため、彼らの間での腐敗や、シリア国民の苦難を長引かせることにより得る利益などについてのうわさ話や露骨な嫌疑が飛び交っている。
国連世界食糧計画(WFP)は、昨年12月はじめ、資金欠乏のため、食料品購入に使うクーポンの配布ができなくなった。国際支援組織が以前に誓約した寄付金を供給できなかったためである。そして、WFPは、いまや6500万ユーロ相当の支援要請を発している。
国連難民高等弁務官事務所のレポートは、これら難民たちの悲劇の度合いを示している。2年前のシリアは、世界の中で暴力や貧困ゆえに国民が脱出する国々の上位30カ国には入らなかった。しかし、高等弁務官事務所の記録によれば、2011年の春以降、300万以上が他国で難民となったシリアは、現在このリストの首位を占める。
それにもかかわらず、シリア難民の苦難が終結する展望がない。彼らのテントを打つこの吹雪を機に、立ち止まって彼らの運命をよくよく考えるべきではないだろうか。
子どもたちは、いつまで、砲撃、あるいは寒さや飢えによる死に付きまとわれるのか?いつまで、子ども時代を、あるいは命そのものまで奪われ続けなくてはならないのか?数百万のシリア難民は、血なまぐさい独裁体制と、腐敗し分裂した反体制派、そして無関心で無力な国際社会に、いつまで包囲され続けるのだろうか?
「真実の瞬間」に直面し、四年目に入ろうとするこのシリア危機による地獄的な連鎖を壊すべき時がきた。犠牲者の記録が更新され続ける以上、政治的傲慢に従うのではなく、大半の国際支援組織の信用を失った人々に頼るのではなく、国際社会が、少なく見積もっても人道的責任は負うべきであろう。全関係組織に即時停戦を課し、立場を問わず国内外のあらゆる難民に緊急人道支援を提供し、それから、この危機を政治的に終結させる唯一の手段として協議プロセスを立ち上げるべきだ。さもなければ、近々には訪れるはずもない暖冬を待ち望む中で、更なる死と苦しみが積み重なるのみである。
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( 翻訳者:前田悠作 )
( 記事ID:36510 )