日本人技師の自殺を招いたトルコ製部品の「ひび割れ」
2015年03月25日付 Hurriyet 紙
建設中のイズミト湾横断橋のロープ破損が自身の責任であるとし、日本人技師のキシ・リョウイチさんは自ら命を絶った。彼は、他の数多くの秘密も明かさないまま、この世を旅立ってしまった。キシさんは、ロープの破損原因となったトルコ国内で製造された接続部品のひび割れを数日前に確認した。そのため起きもしない嵐を理由に土曜日の工事を中断していたといわれている。
先週土曜(21日)日本人技師のキシ・リョウイチさんは、イズミト湾架橋の工事現場の、キャットウォークと呼ばれる架設用吊り足場のロープのうち1本が破損した責任は自分にあるとして自殺し、同時に多くの謎も闇に葬り去られた。
キシさんが自殺する理由となった、ロープ断裂の原因の接続部品のひび割れの写真が公開された。接続部分の下側に向けて走ったこのひび割れは、破損事故の数日前にすでに現場の作業員によって写真で確認されていたことが明らかとなっている。また事故後に撮影された写真からは、接続部分がロープの重さに耐えきれず、紙のように裂けて破損したことが分かる。架橋工事では、破損した接続部分を含め、一部の部品がトルコ企業によって製造されているが、キャットウォーク架設に用いられたロープは国外で製造されたものが使用されているという。
■他の階の足場の状況
有識者らは、イズミト湾架橋工事現場で土曜、東側にある足場の破損により、重みで西側の足場にも負担が生じていると強調した。また有識者らは、他の接続部分が(破損した部分と)同じ材料、同じ企業で作られていることを指摘し、毎日、100隻以上の液化天然ガスを乗せたタンカー船や 大型貨物船、ギョルジュク海軍基地を出入りする軍艦にとって危険な状況が生じているとしてきした。
■日本人技師は追いこまれていたのか
亡くなった日本人技師は、一本の重さが8トン、計14本のロープで架けられるキャットウォークの接続部分で数日前明らかになったひび割れを見て、なすすべがなくなったのではないかと推測されている。金曜、橋の工事現場の従業員に、「明日は大きな嵐になるらしいので、工事は中止します。現場に来るのは控えて下さい」と呼び掛けたとされている。
完成すればイスタンブル・イズミル間の陸路がわずか3時間半で結ばれる、全長377キロメートルの高速道路プロジェクトの目玉であるイズミト湾横断橋は大きな注目を集めている。建設の各段階が報じられてきた建設工事は、2月に両端をつなぐパイロットロープが渡され、その後、「キャットウォーク」と呼ばれる架設用吊り足場の取り付け作業が始められていた。また6月には、歩いて橋を渡るイベントも計画されていた。
しかし先週土曜、橋で二大陸をつなぐ技師・作業員が通る足場「キャットウォーク」は事件現場と化した。総重量8トン、計14本のロープで吊るされた足場が、ヤロヴァ・ヘルセキ岬側の橋塔の留付部分から外れ落ちた。世界第四位の大きさとなるイズミト湾横断橋の工事現場で起きた今回の事件は、交通海事通信省を 始め請負企業に大きな衝撃をもたらした。数日前にはヒビが入っていたという。
■数日前からひびが入っていた
日本人技師キシ・リョウイチさんは、総重量8トン、計14本の鋼鉄製ロープで吊るす「キャットウォーク」足場がかけられることによる負担がより増す、東側のロープへつながる、ヘルセキ岬接続部にひび割れがあるのを数日前に見つけていたといわれている。写真に納められたこのひび割れが、キシさんの所属する部署に知らされていたかどうかはまだ分かっていない。
事故を受けて有識者の行った技術調査では、ひび割れの写真と事故後の現場の写真も提出された。しかし、日本人技師がこのひび割れを知らせていれば、より広い対応が可能であっただろうし、何より本人が恐怖やパニックで落ち着いて作業に当たることはできなかったはずだと見られている。イズミト湾架橋では土曜日以降、主塔上での工事は行われていない。交通海事通信省の評価ののち、おこなわれる会見が待たれる。
■嵐を理由に中止した
日本人技師キシ・リョウイチさんは、ひび割れを発見したあと、海抜およそ150メートルで働く30~50人の作業員の命をリスクから遠ざけるため、天候不順を理由として土曜日より作業を中止している。天気予報によると、土曜日の天気は雨であると報じられただけで、嵐になるとの注意は出されていなかった。しかし金曜、作業員たちに「天気予報で明日は嵐になるそうです、塔上で作業を行う作業員を乗せる船が塔に接近できない可能性があり、また塔上で作業するのは危険かもしれません」と呼び掛け、現場に来ないよう求めていた。
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( 翻訳者:池永大駿 )
( 記事ID:37185 )