エジプト裁判所は、クーデターで倒された公選のムルスィー大統領に対する「スパイ行為」の訴訟で下された死刑を終身刑に変更した。しかし裁判所は「刑務所襲撃」に関する訴訟で下された死刑判決を承認した。
判決後にトルコ外務省から発表が行われた。
エジプトで衝撃的な展開…。世界中の反発にも関わらずムルスィー氏の死刑判決が承認された。
■ 第一審で16名に死刑、ムルスィー氏に終身刑
裁判所は世論で「大スパイ行為」として知られ、36名が裁かれた訴訟で自由と公正党(HAP)のムハンマド・アル=ビルタジュ事務局長、ムスリム同胞団のハイラト・シャティール副党首、アフマド・アブドゥラティ大統領秘書も含まれる16名に対して死刑、クーデターで辞職に追い込まれた公選のムルスィー大統領 とムハンマド・バディーウ・ムスリム同胞団党首も含まれる17名に終身刑を下した。
■ 第二審で衝撃的な死刑判決
しかし裁判所から衝撃的な判決が伝えられた。裁判所はムルスィー氏に対し「刑務所襲撃」に関する訴訟で下された死刑判決を承認した。
■ トルコから反発が寄せられた
トルコ外務省は、公選のムルスィー・エジプト大統領に下された死刑判決承認に関して発表を行った。同省からの書面発表ではムルスィー氏に死刑判決が下されたことで、エジプトが必要としている安定は確立され得ないであろうとし、「軍事クーデターで辞職に追い込まれた公選の敬愛なるムハンマド・ムル スィー大統領と共に106名に対し先月下された死刑判決が6月16日に承認された事に対し我々は厳しく非難する。エジプト史上初の民主的選挙で就任した敬愛なるムルスィー氏が国際基準を満たすには程遠く、合法的とは考えられないプロセスの結果、こういった判決と直面させられた事は、間違いなくエジプ トが必要とする社会平和と安定の確立に何ら貢献しないであろう。エジプトが辿っているこの誤った道筋から即刻回帰し、当該判決を速やかに却下する事は、エジプトだけでなく、中東地域の平和と安定の観点からも大いに期待されている」と述べられた。
■ 刑務所襲撃
エジプトで「ワディ・ナトゥルン刑務所事件」としても知られる「刑務所襲撃」に関する訴訟で、うち106名が逃亡、25名が拘留中の計131名の容疑者は、 2011年1月25日にホスニー・ムバーラク大統領が打倒され終結した民衆蜂起で、「刑務所及び警察署11カ所を襲撃し、将校3名を拉致した」罪に問われている。
第一審が2014年1月28日に実施された同訴訟では、ムルスィー氏及びその他容疑者らが2011年クーデター時に、「ガザから侵入した数百名により多くの刑務所が襲撃され、ワディ・ナトゥルン刑務所から逃亡した」と主張されている。
■ スパイ行為に関する訴訟とは何なのか?
「スパイ行為に関する訴訟」ではクーデター後に大統領に選ばれたムルスィー氏及び35名が、「国益を損なう目的で、ハマス、レバノンのヒズブッラー、イランのイスラム革命防衛隊と結託し、 スパイ行為を行った」と主張されている。
更に容疑者らは、2013年12月のエジプト同胞団を「テロ組織」と宣言するエジプト閣議の決定に基づき「テロ組織への所属」の罪に問われている。同訴訟で容疑者36名中22名が拘留され、14名は欠席裁判を受けている。
カイロ刑事裁判所は容疑者計166名の「スパイ行為」及び「刑務所襲撃」に関する訴訟の5月16日付の公判で、ムルスィー氏も含む122名の捜査ファ イルを「死刑判決に関する見解を得るため」ムフティー局へ送付している。エジプトの法によれば捜査ファイルのムフティー局への送付には諮問の意味があり、 裁判所の判決に対する法的拘束力はない。裁判所は、ムフティーが死刑を是認しない場合であれ死刑判決を下す事が可能である。
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( 翻訳者:藤井庸平 )
( 記事ID:37874 )