シリア:ロシアに軍事基地建設を呼びかけ
2015年08月20日付 al-Quds al-Arabi 紙
政府軍によるドゥーマー市への爆撃中、必死で逃げるシリア人少年(al-Quds al-Arabi)
政府軍によるドゥーマー市への爆撃中、必死で逃げるシリア人少年(al-Quds al-Arabi)

■アサド大統領、ロシアに対しシリア国内での新たな軍事基地建設を呼びかける
■反体制派が戦闘機を撃墜…ムアッリム外相、エジプトとの「治安面での連携」を語る

【各国首都:カーミル・サクル(本紙)、諸通信社】

シリア外相はエジプトとの関係正常化への希望を表明し「治安面での連携がその導入部となるであろう」と述べた。一方、本紙が観測筋から得た情報によれば、シリアは、ロシアに対しシリア国内で二つ目となる軍事基地の建設を要請した。既存のタルトゥース海軍基地に続き、沿岸都市のジャブラがその候補地となる見通しである。

同観測筋によれば、ダマスカスはモスクワに対し、タルトゥース基地よりさらに先進的で重要性も高い基地の建設にかんする合意を伝えた。その基地がロシア軍とシリア軍双方に提供するサービスはタルトゥース基地のそれよりも高度なものとなる予定である。

今年の3月、バッシャール・アサド大統領はロシアのテレビ局とのインタビューで、ロシアがシリア国内に強力な軍事基地を建設する可能性があり、シリアとしてはそのような要請を期待し、合意する用意があると述べていた。またアサド大統領は、次のように発言していた。「われわれとしては、貴国が中東でこのようなプレゼンスを強化すればするほど、域内の安定にとっては良いと考える。それは、ロシアが世界の安定において重要な役割を演じているからである。」

シリアに二つ目の基地を建設するというモスクワの意向は、ロシアがシリアとの戦略的同盟関係を強固に保っていることを裏書きしている。つまり、ロシアはアサド政権の失墜をいかなる状況下でも受け入れようとしないだろう。ロシアとシリアとの同盟は、現シリア体制の性質と深い結びつきがある。現在のシリアの政治体制は、故ハーフィズ・アサド大統領の治世の延長であり、同大統領は、かつての中東において、ソ連邦の同盟国首脳の中でも際立った存在であった。

専門家らによれば、タルトゥース海軍基地は、モスクワにとって唯一の地中海沿岸拠点である。大きくはないが、地中海を航行するロシア海軍にとって重要な兵站任務をこなし、ロシア軍の中では先進的な軍事部門を形成している。またそれはシリア軍にも兵站ならびに監視サービスを供与している。

一方、ムアッリム外相は、20日木曜付エジプト紙「アフバール」との長時間インタビューの中で次のように述べた。

「エジプト代表団のダマスカス訪問という話はないが、だからといって、治安面での連携が両国の関係正常化の先触れとなるという話を否定するものではない。両国関係は長らく自然な状態ではなかった……今後の事態の進展により、われわれが目指す成果が導かれるものと信じている。エジプトにおいてもシリアにおいても、正常な関係の中でこそ、アラブ共同体に対し仕掛けられるあらゆることに抗してきた共通の歴史を取り戻し、エジプトはアラブ地域の自然な主導的役割を取り戻すことができる。」

ムアッリム外相はエジプト軍を称賛し「エジプト軍の弱体化を望む勢力があるが、そのようなことは起こらないと信じている。エジプト軍は、アラブ共同体へのあらゆる陰謀に対する防護壁である」と述べた。

また、ドゥーマーでの事件にかんするデミストゥーラ国連特使の声明については「中立な国連特使のはずが、デマや誤報に依拠している。武装テロリストたちにより何カ月も水を断たれたアレッポの人道的悲劇については何のコメントもしないというのに」と述べた。

さらに、最近の同外相のオマーン訪問が、シリア危機に対し共通の立場をとる湾岸諸国への突破口となったのかとの質問に答え以下を述べた。

「わたしは、ユースフ・ビン・アラウィ外務担当国務相からの招待を受け、即座に、それを受け取った二日後に応じた。オマーン・スルタン国は叡智をもって外交政策を行っており、アラブ地域の数々の危機解決において実質的役割を担い、静かに賢明に活動している。」

「アラブ諸国はシリアを見捨てた…シリアから去ったのはアラブ人であった。今次危機において、イランやヒズブッラーにその役割を終えよと要請する権利は彼らにはない。われわれはこの苦難の中で、シリアに対するイランとヒズブッラーの支援を高く評価している。」

イランと湾岸諸国との対話が取りざたされていることについては、「もしそのような会合が実現し、引き続きの会合が合意されれば、肯定的な影響がでるだろう」と述べ、「イラン核合意は成功であり、イラン国民の権利を固持したイラン外交と同国の粘り強さの勝利であった…この合意は特にアラブ情勢にも良い結果をもたらすだろう。イランはGCC諸国に手を差し伸べている。湾岸の安全保障について相互理解を得るため全員がテーブルにつくべきである」と評した。

さらに、シリア危機解決に向けてのイラン「イニシアチブ」については以下のとおり発言した。

「わたしがテヘランへ向かった種々の理由のひとつが、メディアで言われるところのイラン・イニシアチブの件であったが、結論としては、そのようなイニシアチブはなく、ただ誠実さといくつかのアイディアがあるだけだ。われわれとしては、イラン・イニシアチブに何ら反対するものではないが。今のところ、イランのザリーフ外相がダマスカスを訪れた際にわれわれに示されたいくつかのアイディアがあるのみである。それらが明確な形を成した時に、その提案も完了するといえる。」

またシリア領土内に緩衝地帯を設けるというトルコ案にかんし次を述べた。

「シリアの主権侵害となるその様な区域の設定を拒否する…トルコの復讐はシリア危機の当初から始まっていた。ダウトオール首相が、エジプトでのようにムスリム同胞団を政権に参加させるよう要請し、それをわれわれが拒んだからだ。その時以来敵対心をぶつけてくる。わたしとしては彼らに、テロリズムはそれを為す者の仇となると言っておきたい。」

他方、ザフラーン・アルーシュ率いるイスラーム軍の広報部は、木曜(20日)東グータ(ダマスカス郊外)上空で爆撃中の政府軍のミグ戦闘機を撃墜したと発表した。同軍の簡略化された声明によれば「対空砲により東グータの各地区を爆撃していた戦闘機を撃墜、航空機監視部隊によればすぐに着陸した」。

東グータに位置するドゥーマーでは先週、戦闘機による殺戮が行われ、100人以上が死亡、数十人の女性や子供を含む200人が負傷した。

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( 翻訳者:メディア翻訳アラビア語班 )
( 記事ID:38478 )