シリア:避難国で守る祖国の伝統
2016年03月11日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ウードとブズク作り レバノンのシリア難民が守る伝統工芸
【ベイルート:ハムザ・タキーン】
シリアの青年ハーリド・バッシャール・ハラビー氏は、5年前から続くシリア危機のため、祖国を去りレバノンへ避難することを余儀なくされた。そんな彼は祖父や父から文化遺産を継承している。それは伝統的な手工芸による、ウードとブズク作りである。ダマスカス出身の若さにあふれた30歳は、シリア危機をものともせず、電子楽器の台頭と戦うこの工芸を固持しようとしている。そして、伝統工芸としてのウード作りには、歴史遺産としての価値を認める人々が根強く存在する。
自身の小さな工房に座るハラビー氏の周りにはいくつかの大工道具や様々な種類の木材が置いてあるが、ウードやブズクなどの楽器はこうした木材から作られる。初めに木版をカットした後、それを水と熱を使って形を整える。最後に接着剤や小さな釘、特別な金槌を用いて木版を合わせ、ウードにするのだ。
72の工程を経てウードを作るのに10日間かかるが、装飾を施されたウードの場合は、その期間は二カ月に延びる。レバノンの首都サリーム・サラーム地区にあるハラビー氏の工房は美しい歴史の香りに満ちている。古いウードが壁の一面にたくさんかけてあり、手作りの楽器が其処此処の隅を飾る。国産木材の香りが漂い、そのさまざまな色合いが見る人の目を楽しませる。
様々な道具やウード、木材に囲まれながらハラビー氏は次のように彼が抱く望みを話す。「この伝統工芸は、楽器作りの精神や愛情、自然なメロディーを失った電子楽器との戦いでも生き残るだろう。」そして、シリアでの彼の一家の基本的職業はウードとブズカを作ることだったと言いながら、約1年半前にレバノンにやってきて、「この技能と伝統的職業」を守り自分の工房を持つために働いた日々を回顧した。
ハラビー氏は自分の仕事が好きで、ある教育機関で木工技術を学んだ。その後美術を勉強して自らの技術向上に努めた。同氏は以下のように語る。「シリアでは大抵、このような興味や仕事は祖父から子へ、そのまた子へと、自動的に受け継がれていく。私も父からこの仕事を受け継いだ。」
ハラビー氏は木工業が好きであることについて、こう語る。「私はこの職業、さまざまな木材、杉、松、クルミからバラやイチジクまで多岐に渡る木材を使った仕事がとても好きなのです。」また、木製ウード作りを職業としていた祖父について以下のように語った。「私の祖父は特別なウードを作り、エジプト人アーティストの故ウンム・クルスーム氏に贈りました。そのウードは今もなおカイロのウンム・クルスーム博物館に収められています。
レバノンで直面する困難の中で、ウード制作にかかわることとして、同氏は「レバノンとシリアの間には大きな違いがある。例えば市場や産業の面では、レバノンとは違ってシリアでは町が大きいし、市場もずっと広い。」と述べたうえで、以下のように付け加えた。「私が作ったウードが高品質であることを示すことができた今、レバノンでも多くのお客さんを持つようになりました。」
(後略)
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( 翻訳者:内海菜生 )
( 記事ID:40031 )