ロシアと西欧諸国はシリアが将来連邦国家となる可能性について議論している。連邦国家計画が国連のシリア特使に提示される一方、ロシア政府がボスニア・ヘルツェゴヴィナ同様のモデルを想定していると報じられた。
シリア内戦の解決のため国連の支援のもと実現した和平協議に参加した世界有力国は、シリアを「地理的一体性を守りつつ地方政府に幅広い自治を認めた連邦国家」とすることを議論している。シリアで2週間前に宣言された「停戦」が続く一方、今月ジュネーヴで行われる和平協議は継続される予定だ。ジュネーヴで永続的な平和モデルが模索されるなか、初めてロシアのセルゲイ・リャブコフ副外相がシリアが将来連邦国家となる可能性があると口にした。リャブコフ副外相は2月末に行った発表では「シリアの将来の秩序についての協議の結果、連邦国家モデルにより、シリアが統一的、世俗的、独立した、主権国家となることができる、という考えが出た場合、反対できる者はいないだろう」と述べた。
■クルド民主統一党(PYD)は乗り気
ロイター通信に対して語った国連安全保障理事会のある外交官によると、ロシアだけでなく、一部のヨーロッパの大国がシリアでの連邦制の可能性を検討している。外交官はこの考えが国連シリア特使のステファン・ド・ミストゥラ氏に提示されたと述べ、「シリアの地理的一体性を守る点で、つまり1つの国であり続けることにこだわると同時に、強い権限を持たない中央政府と様々な地域に強力な自治を与える様々な連邦国家モデルが議題に挙がっている」と述べた。シリアの国家元首、バッシャール・アサドも9月に答えたインタビューで連邦制を否定せず、国民投票を通せばあり得ると述べた。
PKK(クルディスタン労働者党:非合法)の分派とされるシリアのクルド人のPYDは連邦国家案を最も支持する団体だ。PYDのサリヒ・ムスリム共同党首はロイター通信に対し「呼び方は重要ではない。何度も言ってきたが、私たちは地方分権型のシリアを望んでいる。これを地方自治と呼ぼうが連邦主義と呼ぼうが、何でも可能だ」と述べた。
■デイトンから着想
イタリアのラ・スタンパ紙は「ロシア政府がひそかにシリアに宗派と民族的ルーツに基づく自治地域に分けた連邦国家モデルを当てはめようと画策している」と報じた。ラ・スタンパ紙はロシアがこの計画をバルカン半島の教訓を基に作ったとした。同紙によると、ロシア政府の計画は1995年にボスニア危機の解決のために結ばれたデイトン合意に着想を得ている。この合意によりボスニアは権限の弱い中央政府のもと、統治の点ではボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦とスルプスカ共和国として2つの主体に分割された。
ラ・スタンパ紙によると、シリアのクルド人が次第に力を強め、ロシア政府が独立クルディスタン構想を拒否したことで、一層自治構想の検討が進んだ。同紙は少し前にPYDのリーダーたちがロシアの記者と面会し、地方分権の必要性を説明したと報じた。停戦が施行された翌日、PYDのイルハム・ アフメド氏は、ロシア、アメリカ、反体制派の間で連邦制による解決について合意が形成されていると発言した。
■「アメリカも同意見」
ラ・スタンパ紙はロシアの計画を示した地図を掲載する一方、シリア3分割案が議題に挙がっているとした。これによると、北と北東がクルド人による、中央と東がスンナ派による自治地域が生まれる。アレッポからダマスカスへ延びる海岸地域はシーア派のアラウィー派、ドゥルーズ派、スンナ派及びその他の少数派が住む第三 の自治地域となる。トルコがデッドラインと宣言したアアザーズ-ジャラブルス線はスンナ派地域に含まれるとされた。こうして西のアフリーンはその他のクルド人地帯と一体化しない一方、全ての自治地域がトルコと国境を接することとなる。
■政府はパルミラへの攻撃を開始
シリア政府はロシア軍の航空支援を利用し、イスラム国から古代都市パルミラを奪還しようと攻撃を開始した。政府に近い人物からの情報とされる報道によると、政府は今週中に古代都市の支配を奪い、東のデイリゾルへの進路確保を目指している。シリア人権監視団によるとロシア機が水曜日以降パルミラの周辺に何十発もの空爆を仕掛けた。政府軍は昨日、古代都市の7km郊外でイスラム国との戦闘に入った。イスラム国は昨年ユネスコ世界遺産に名を連ねるパルミラでいくつかの遺跡を破壊していた。
■大統領選は18カ月以内
国連のシリア特使、ステファン・ド・ミストゥラ氏は、シリアの選挙はジュネーヴ協議が再開される3月14日から18カ月以内に行われると述べた。ミストゥラ特使はロシアの報道機関、RIAノボスチの取材に応じ、「3つの議題が挙がっている。一つ目はシリアで新たな政府が形成されること。2つ目は新憲法、3つ目は新しい選挙だ。これらの選挙がジュネーヴでの協議が始まる3月14日から18カ月以内に行われなければならない。大統領選挙も議会選挙も国連の監視下で行われる」と述べた。
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( 翻訳者:南澤沙織 )
( 記事ID:40034 )